夏真っ盛りの暑い日、「欅の家具のある家」が引き渡しになりました。この家にかかる大きな屋根は、1メートルを超える大きな庇をゆったりと出し、陽射しから室内を守ってくれます。
僕の設計の信条として常に大事にしていること、それは、美しく居心地の良い窓辺をつくりたい、ということです。「居心地の良い」というのも抽象的な表現ですし、「窓辺」というのも、窓そのものではなく窓付近を指すわけですから、曖昧です。「居心地」とか「窓辺」といった抽象的なことについて、これまでの住宅設計の仕事を通してひとつひとつ、自分の血肉化するように努めてきました。この大きな住宅では、その考え方をさらに展開してカタチにしました。
間取りは凸凹しているのですが、その分、多くの窓辺のコーナーが生まれます。大きな庇と大きな壁は、それらの窓辺のコーナーに落ち着きと安心感をもたらしてくれます。
そのなかのひとつに、ラウンジチェアを置くコーナーをつくりました。大きな窓には黒いレースのロールスクリーンを降ろし、その脇でゆっくりと冷たい麦茶を飲む。ただそれだけで、なんとも癒される気持ちになりました(笑)
チェアに座った目線で見ると、上の写真のような感じ。レースのスクリーン越しに、外壁に映り込む樹影が印象に残ります。窓辺で時間を過ごしていると、いろいろなものが身近に感じられます。たとえばチークの床材、タモの窓枠、壁と天井に塗られた珪藻土。どれもが主張させるような使い方ではありませんが、しっとりと柔らかい雰囲気のインテリアになりました。