ライブ・アルバムを聴きながら。

2010-01-19 22:52:57 | 音楽

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最近、ずっと聴いているCDがあります。
Eva Cassidy「Live At Blues Alley」。33歳という若さで癌で夭逝した女性ミュージシャンです。施主のOさんが「趣味の押しつけ」と笑いながら渡してくれた1枚。僕がリッキー・リー・ジョーンズが好きだと言ってたら、ちょっと退廃的なジャケットなんかも好みなんじゃない?と。いやあ、すっかり見抜かれてます(笑)。

カバー曲を中心としたライブアルバムで、原曲がジャジーにアレンジされているのもカッコイイし、ちょっとハスキーな声と歌いまわしが、直に心に触れてくる。そんなミュージシャンに久々に出会ったという感じ。
ライブアルバム特有の、即興的で自由な雰囲気を楽しみながら、現在設計中の住宅の模型を作ったりしています。ライブとは逆に、設計の仕事は、入念にじっくりと検討して、3歩進んで2歩下がる、といった遅々とした進行具合です。もちろん建築家のなかにも、即興的に描いたスケッチがとても魅力的、だとか、工事現場で、その瞬間のひらめきでデザインを変更したり、といった人もいるのだろうと思います。僕の場合はというと、うんうん唸りながら図面検討をし、現場ではデザイン変更することはあまりありません。即興的につくっていく才は無い・・・と自覚しています。だから、即興で曲をどんどんつくったと言われるモーツァルトというより、20年かけて1曲つくったブラームスのような曲の質を、自身の設計に求めたいと思います。もちろん、住宅設計に20年もかけるなんてあり得ませんが(笑)

夭逝歌手の、即興性のある才能と個性に憧れを感じながら、作り上げたこの模型。さて、じわりと味がでてくるものになっているだろうか。そんなことに思いを馳せたりもしています。

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クリスマス・コンサート

2009-12-24 21:54:53 | 音楽

サンクトペテルブルグ室内合奏団のコンサートに行きました。

弦楽器のみの構成に、随所にソプラノ・ソリストの美声が加わります。ヘンデルやバッハなど、古典的な名曲が中心の曲目。ピアノの減衰音も良いけれど、弦楽器の震えるような旋律も胸に染み入ってきて、いい。
どんな分野でも「古典」というものは存在するのだろうけれど、音楽の古典は、簡素でありながら典雅で、奥行きがあるものなんだな。そんなことをしみじみ思いながら聴き入った、素適な時間でした。モーツァルトのサロン的な華やかな曲も演奏されたけど、僕はヘンデルの荘重な響きが好きかな。

チェロとビオラが弦をゆっくりと左右に引いてゆったりと通奏低音を奏で、バイオリンが弦を上下に引き叙情的な旋律を奏でる。水平と垂直。演奏の動きそのものが簡素で美しいと思いました。

いいコンサートに行くと、自分も音楽をやっておけばよかった、とついつい後悔(?)してしまいますが、もう遅い。簡素で典雅な響き。それを建築に宿らせるしかない、と思い直します。今日の設計案には、バッハが宿ってくれるかな?そんな夜に、設計案に思いをめぐらせるのも愉しいものです。

メリークリスマス。

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ブライチ

2008-08-22 17:00:48 | 音楽

先日、群馬音楽センターにて開かれたクラシックコンサートに行きました。アンコールを含めて4曲演奏されたのですが、そのなかでも楽しみにしていたのが、ブラームス作曲「交響曲第一番ハ短調 作品68」、略してブライチ。

この曲は大ヒットマンガ「のだめカンタービレ」で大きく取りあげられたことで、よりそのファンを広めたとも言えます(かく言う僕もそのひとりで・・・)

ブラームスはベートーヴェンに私淑し、その影を乗り越えようと苦しみながら作品を生み出していった人だったようです。その極めつけがこのブライチ。完成までまでの道程は長く、3歩進んでは2歩戻り、実に21年(!)の月日をかけて完成されたものでした。その曲調はとても重厚で、「ムダな音が一音もない」とも評されます。

音楽の世界にはやはり天才はいるのだろうと思います。溢れ出るイメージを曲にし、それがどれも素晴らしい。そうやって名曲は多く生まれたと思いますが、僕がブラームスを好きな最大な理由は、その慎重居士ぶりです。思いついたイメージに頼ることなく、考えに考えを重ねて作品を作り上げていくその姿勢です。それはどこか建築の設計にもつながるような気がしています。もちろん、頭に浮かんだ「空間のイメージ」をサラサラっとスケッチして、こんな感じの建築はどう?っていう才能の持ち主もいると思いますが、僕にはそもそもそんな能力は備わっていません。だから、考えに考え、何回もやり直しながら、自分がもっとも良いと思うものを発見していく、そんな態度を貫いていきたいと思っています。ブラームスの曲を聴いていると、パッと出のアイデアでは到底たどりつかないような、荘重で、永続的な雰囲気を感じ取ることができます。それが何より、自分にとって励みにもなるように思うのです。

080822

ところでコンサートが開かれた群馬音楽センターは、建築家アントニン・レーモンドの作品です。市民楽団のための、コンサートのためだけの建物。いろいろなことができますよ~というオール・イン・ワン型の箱モノではなく、その存在に、「地域に音楽を根付かせたい、地域の文化意識の象徴である」というような強い意志を感じます。老朽化したって、外のカミナリの音がすこ~し演奏中に聞こえるぐらい壁が薄くたって、設立の強い意志がみなぎった空間は、とても気持ちが良く美しいものでした。

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チェロの小品集

2007-12-30 20:25:57 | 音楽

クラシック音楽についてはあまりよく知らないのですが、マンガ「のだめカンタービレ」を読んで以来、夫婦で何かとはまっています。(単純過ぎ・・・)

最近はテレビなどでクラシック音楽関係のドキュメントなどが放映していると観てしまうこともあるのですが、昨日たまたま観た番組で、あるバイオリニストが面白いことを言っていました。本当に懐の深い美しい音を出そうと思ったら、チェロにはかなわない。バイオリンの音は生々し過ぎる。でも、感情がそのまま出てしまうところが魅力でもある、というような内容だったと思います。

そういえば僕は、バイオリンの曲のCDは一枚も持っていなかったっけ。なのにチェロはバッハをはじめ何枚も持っている。僕にとってはチェロの音色は心地よいものです。もしかしたら、本能的にバイオリンの「感情」は、まだ少し抵抗があるのかも。

手元に駅前のCD屋さんの1000円分の割引券があったので行ってみました。なんとなく今日はクラシックを買おう、それもいつもはあまり聴かないヤツ、と思いながら行ったのですが、ちょっと迷って結局選んだのは、チェロの小品集。1960年の録音とのこと。写真に載っている演奏家モーリス・ジャンドロン(とても有名だそうですが、僕は知らなかった・・・)は、白黒でちょっとピンぼけ。CD屋さんの中のBGMではベートーベンの第九が多いに盛り上がっていました。でも今の僕には、チェロのゆったりとした静かな音色が合ってるかな。もう年末だし、古き日の音に耳を傾けつつ、静かに今年を振り返ろう。

どうぞ、よいお年を。

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リッキー・リー・ジョーンズ

2006-10-04 15:50:38 | 音楽

061004 普段、事務所ではFMラジオを聴くこともあり、最近の曲なども頭のどこかでフレーズが残っていることもありますが、あまり本腰をいれて「開拓」することもないまま過ごしてきました。そんななかにあって、ずっと好きで聴き続けているミュージシャンがいます。名前はリッキー・リー・ジョーンズ。アメリカを拠点に活動する女性シンガーソングライターで、70年代末にデビュー曲「恋するチャック」などがヒットし一世風靡をしたそうです。

僕がリッキーを知ったのはちょうど10年前。CDショップの試聴コーナーで、さして取り立てることもなく置かれていたアルバムを聴いて心を奪われたのでした。さっそく1枚聴いてみようと思い、初めて選んだのは、そこから更に7年前 1989年に発表された「フライング・カウボーイズ」というアルバムでした。理由は単純、ジャケットの絵が気に入ったから。

可愛くもあり、物憂げでもある歌い廻し、難解な歌詞など、その独特な魅力は一言では言い表せません。オリジナルの曲以上に、スタンダードナンバーのカバー曲も多く、どれもが独特なものに生まれ変わります。まるで、美しい曲を時代を越えて歌い継いでいくかのよう。そういえば、近世以前の美術も、多くは定型的な宗教モチーフをくりかえし描くことに大きな意義がありました。まったく新しいことを生み出すことが芸術の目的ではなくて、自分以前の遥か昔から受け継がれてきた題材を、大切に受け継いでいく。

昨年末に来日公演がありました。間近で見た彼女の顔には皺が大きく刻まれ、その独特のオーラにのみこまれました。時を重ねていく、時を受け継いでいく、時を越えていく・・・。どのような言葉がふさわしいのかはわかりませんが、結局おなじことを指すのでしょう。自分が設計する建築あるいはデザインも、そのように懐の深いものでありたいと、リッキーを聴きながら、よく思います。

音楽は目に見えるものではありません。ですから写真に撮れるわけではありませんが、10年前に購入したCDジャケットは、10年分のくたびれかたをして、僕の傍らに置いてあります。昔のLPレコードほどではないでしょうが、CDにもそういった個人的な追憶がついてまわります。最近ではi-PODも愛用していますが、「音」と共に歩んできた時間も、大切にしたいところですね。

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