街を歩いていると、自分を取り巻く風景がとても馴染みよく思ったり、どうもよそよそしく思ったりすることがあります。道幅、両脇の建物の高さ、色彩など、それらのバランスが変わることで、街の表情も愛想がよくなったり悪くなったりするように思います。
写真はリスボンの街中を走るケーブルカー・Bica線。スペインから流れてきた大河テージョを背に、急な上り坂とゆっくりと登っていきます。古いのだけれども手入れの行き届いている(いそうな)車体。実はこの車体、両手を広げた幅よりもずっと狭いのです。高さも2メートル強といったところ。狭い路地と急勾配にあわせて即物的にできあがったカタチと大きさなのでしょうが、この愛くるしい小ささが、この街の雰囲気にとてもよくマッチしています。
大航海時代に築き上げた聖堂や遺産は、できるだけ大きく華美にできています。その前を後ろを、この小さな路面電車が行ったり来たりすることで、街の雰囲気をぐっと身近なものにしているのでしょう。