ヒューマン・スケール

2007-04-22 15:21:30 | アート・デザイン・建築

070422

街を歩いていると、自分を取り巻く風景がとても馴染みよく思ったり、どうもよそよそしく思ったりすることがあります。道幅、両脇の建物の高さ、色彩など、それらのバランスが変わることで、街の表情も愛想がよくなったり悪くなったりするように思います。

写真はリスボンの街中を走るケーブルカー・Bica線。スペインから流れてきた大河テージョを背に、急な上り坂とゆっくりと登っていきます。古いのだけれども手入れの行き届いている(いそうな)車体。実はこの車体、両手を広げた幅よりもずっと狭いのです。高さも2メートル強といったところ。狭い路地と急勾配にあわせて即物的にできあがったカタチと大きさなのでしょうが、この愛くるしい小ささが、この街の雰囲気にとてもよくマッチしています。

大航海時代に築き上げた聖堂や遺産は、できるだけ大きく華美にできています。その前を後ろを、この小さな路面電車が行ったり来たりすることで、街の雰囲気をぐっと身近なものにしているのでしょう。

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桜坂の家 5 ~ぼうず面の机~

2007-04-09 21:35:39 | 桜坂の家

こんな話を聞いたことがありました。

京都の古い町屋のなかには、それぞれの部屋を誰が使用するかによって、柱の太さや造り方を変えているものがあるそうです。たとえば、主人の部屋は柱も太く力強い雰囲気に、そして、女性が使用する部屋では、柱の角を大きく面を落として華奢に見せていた、とのこと。一目みただけでは同じように見えても、その部屋が何なのかを見事に表している。空間づくりの上質な遊びだと思います。そうした繊細な感性が、昔の日本の家にはあったということでしょう。

桜坂の家の主寝室には、窓際に鏡台がしつらえてあります。鏡台といっても、板一枚だけの、とても簡素なもの。厚さ3センチのこの板は、大工さんに頼んで小口をつるりと丸く仕上げてもらいました。さきほどの話を思い起こして、女性が使う場所としての柔らかい雰囲気を、この簡素なしつらえにも宿したいと思ったのでした。

一方で、この家の主人の書斎机は、大きな欅の一枚板。荒々しい男性的な風合いが魅力です。どちらの机にも、障子を通した柔らかい白い光に満たされた空間を用意しました。

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