以前にどこかで聞いたことがあるのですが、イタリアでは、新築の家よりも年数を経た家の方が価値があるのだとか。
実際にそうなのかどうかはわかりませんが、そうだとすればとても意義深いものだと思います。
なにせ、造ったものがきちんとストックとして扱われ、長く使われ続けることを意味していますから。
そう、家をデザインとしてみると姿かたちの良しあしが気になるところですが、同時に、家は使われるものです、道具のように。
道具ですから、メンテナンスしないと使い続けられません。家の場合、メンテナンスが必要なのは目に見えるところだけとは限りません。
水やお湯の配管も、高圧力や温度差にさらされ、いずれ劣化します。それをメンテナンスできるようにしてあるかどうか。
写真はヘッダー方式という配管の方法で、もし配管の不具合があった場合、生活に支障なく部分的な補修で済むように工夫した配管方式です。
床下に潜り込んで作業ができるように、点検口や床下の移動ルートも確保して設計したものです。
この家では、自分たちの次の世代も安心して家を受け継げるように、老後のみならず将来的な備えを大事にしてつくった家でした。
目に見えない部分ですが、これから新築をするときには、そんな配慮はきっととても大事なのだと思います。
そして、目に見える部分は、経年による「劣化」ではなく、「味が出た」と思えるような家でありたいと思います。
ペンキを塗り重ねたりしながら、年月を経てより愛着が増すような佇まいや質感の家でありたい、そんな風に思います。
遠い昔に建てられたイタリアのヴィラが、今もなお愛おしく思えるように。