フランスのテリーヌ缶

2023-07-28 22:48:11 | 日々


フランス在住の友人から、テリーヌの缶詰をいただきました。
鴨と豚のテリーヌ。

それにしてもこの缶詰のデザインが、本当に素敵なのです。
文字は黒だけのクラシカルなフォント。
商品を主張させるようなデザインではなく、むしろシンプルで控えめなデザインです。
といっても、シンプルさを研ぎ澄ませたデザインということでもなく、肩ひじ張らないデザインなのがかっこいい。
フランスでも有名な食材店のブランドなのだそうです。
中身の素材によってパッケージの背景色が様々なのでしょうね。それらの缶が並んでいる光景を想像するとちょっとワクワクします。

できれば、ギラギラと照明で照らされたスーパーマーケットの店内ではなく、街なかのちょっとおしゃれな路面店なんかで、クラシカルな木の棚に陳列されていると嬉しいなあ。
古びたこげ茶色の木の棚に載せられた、鮮やかだったり、渋みのあるパッケージのテリーヌ缶が並ぶ光景。日々のちょっとした買い物が楽しくなっちゃいますね。
そんなことを想像してもうしばらく楽しみたいから(笑)、まだしばらく缶は開けられなさそう。
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断片と未完成

2023-07-23 12:50:58 | 自由が丘の家


盛夏のアトリエのエントランス。
道路から見ると、一番目立つのはシンボルツリーのモミジ。
シンボルツリーといっても、あとから植えたものではなく、もう何十年も前からこの場所に植わっていて、建物はそれに寄り添うようにして建っています。
モミジの影に隠れて、建物の外観は全体像がよくわかりません。

いま、ちょうどガウディの展覧会がやっています。
ガウディの建築は、主要なものは意外にも未完成のものが多いのです。
サグラダファミリア聖堂にしても、最高傑作と言われるコロニアグエル地下聖堂にしても、今のところ未完成です。
そして全体の完成形は、はっきりとしたかたちでは資料が残っていません。

未完成のものがもつ魅力というものがあると思います。
欠けているところをイメージで補おうとする想像の余地があるからです。

全体がなく、未完成。いわば断片の集積だけで、全体を感じさせる。

おおげさにいえば、ぼくのアトリエもそんなふうに感じ取られるといいなと思いながらつくりました。
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岸辺のふたり

2023-07-13 21:33:37 | アート・デザイン・建築


「岸辺のふたり」というアニメーション映画があります。
わずか8分の短いストーリー。
とある娘と父の、別れと奇跡。

2001年にこの作品が発表されたときには、あらゆる映画賞を受賞したそうです。
ぼくはこの作品の印象的なワンカットを見ただけで心を鷲掴みにされました(笑)
余白を活かした極めてシンプルながらも深い味わいのある絵づくり。

この映画の監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット氏は、次のように話しています。

人間のなかにある、「密やかだけれども強い願い」というものが、途方もなく美しい。
それがシンプルな映像とストーリーに凝縮され、得も言われぬ余韻をもたらす映画になっています。

時折「構えて」観たくなる作品です。


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記憶のなかの教会

2023-07-08 23:21:28 | アート・デザイン・建築


ぼくが幼少期に通った幼稚園は、ちいさなカトリック教会に併設されていました。
併設というよりも、教会そのものが園舎になっていて、ちいさいながらも教会然としたその佇まいは、幼少期の心にもしっかり留まり、今現在も記憶のなかに漂っています。

三角の屋根と、その上に掲げられた十字架。
門扉から奥に見え隠れするアーチ型のエントランス。
教会堂の高い天井。
白い壁と、とっぷりと黒光りする床板。
ステンドグラスから差し込む色とりどりの光。

幼少期に過ごした家のことはいろいろと覚えているけれども、それ以上に、3年間過ごしただけの教会の記憶が鮮明なのは、なぜなのでしょう。
自分自身が落ち着くと思える空間の原風景は、そこにあるのかもしれません。

家を設計するときに、お施主さんの記憶のなかを覗き見ることはできないけれども、お施主さんのなかに潜在的に宿る記憶の断片を引き出せたら、と思わずにいられません。
かっこいいかたちを創り出すのではなく、記憶のなかに宿る安心のかたちを見出したい、というところでしょうか。

上の写真は、ローマのとある小さな教会です。
大きすぎず、包まれるような優しい雰囲気の空間でした。
この教会を訪れてしばらく身を置いてみたときに、ぼくが過ごした幼稚園の空間と、どこか似ているなあと思いました。
無名の教会ですが、ぼくにとってはこういう空間に大切なヒントが隠されているように思うのです。
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