光とアトリエとロマネスク

2020-11-10 22:03:23 | 富士 家と仕事場


紅茶のブレンダーとして著名なOさんの仕事場。
ちいさな室内には、仄明るい光が漂います。
その空間のなかで紅茶をブレンドし、新しい風味を生み出していく。
粛々としたそんな時間を想像すると、真摯に紅茶に向き合う姿がイメージされます。

Oさんがインスタグラムにアップする写真は、いつもとても美しい。
涼しげな、あるいは温かそうな湯気をくゆらせながら、紅茶やお菓子が凛とした存在感をもって映し出されます。
華美を演出するのではなく、そぎ落とした果てに浮かび上がる情趣。
多くの人が、その写真の数々にも惹かれている様子。

そう、ジョルジョ・モランディの静物画のような存在感だ!
その雰囲気をつくりだすのに、背景としてのこの空間も一役かっているかなと思うと、じんわりと嬉しい。
ずっと想いを馳せてきたロマネスクの空間の片鱗が、すこしだけ現われてくれたのでしょうか。


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「待つ」空間

2020-04-25 23:38:17 | 富士 家と仕事場


富士市に建つこの住宅は、郊外の風景のなかに、さしたる飾り気もなく即物的な佇まいをもっています。
モランディの風景画のように。あるいはロマネスクの小さな教会のように。
いずれこの土地の前には大きな幹線道路が通るのですが、それと距離を置くようにして中庭のある住宅です。

これから、建物の周りには木々が植えられ、その樹影が外壁の上をゆらめくことでしょう。
そんな風情を待つようにして、この家は建っています。



家の中に入ると、東西に抜ける大きな窓がシンプルにあります。
西側の窓は出窓になっていて、外に木々が植えられると、その緑をとても身近に感じられるようになります。
午後の陽に照らされて、木洩れ日が室内にゆらめくようになるでしょう。
無垢の木の床フローリングと、少しグレーがかった壁と天井に、そんな風情が映り込む。そんなことを思い描いています。



そして、施主の仕事場を兼ねたこの家では、自然光の印象的な窓の部屋があります。
ここには施主が所有する、古い教会から譲り受けた長椅子が置かれる予定。
そんな古い事物を待つ空間。

今はまだできあがったばかりの家に、やがて生活がはじまって、そんな風情が現れるのが楽しみです。
でも、それを待つ束の間の静けさに身を置くのも、建築家としては楽しみな時間です。
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中庭を囲んで。

2020-01-29 23:05:46 | 富士 家と仕事場


前回のブログの続きです。
富士ですすめている現場は、南側に大きな幹線道路が建設中です。
今はまだ静かなこの環境も、大型トラックが行き交う環境に変わっていくとのこと。
南側だからといって、大通りの前に大きな窓を開け放つような間取りにはしたくありませんでした。

敷地の隣には、施主の実家があります。実家と向き合って、中庭を囲むようなイメージにしよう!
そんなふうに思い立ってから、設計は雲が晴れたようにスッキリと解けていきました。

中庭に面して大きなダイニングテーブルを置いて、それが家の中心になっています。
窓からは中庭のシンボルツリーが見えるように。




中庭に面したダイニングの反対側には、フリースペースがあり、出窓がつくりつけてあります。
出窓の前にも植栽をし、出窓がベンチコーナーにもなります。まだ小さな子どもたちが、この出窓ベンチに座って本を読むようなシーンを思い描きながら設計を進めました。
西側に面していますから、植栽の木陰が室内に入り込みゆらめいて。
そんな雰囲気をイメージしました。

そんなことを考えながらつくりあげたイメージが、徐々に形になりつつあります。
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富士山を望んで

2020-01-25 21:30:38 | 富士 家と仕事場


富士で住宅の現場がすすんでいます。この住宅からは、富士山を望むことができ、ご実家と隣り合い、すぐ目の前を大きな計画道路が工事中。
良い環境もあれば、距離を置きたい環境もあります。このようにひとつの敷地であっても、いろいろな特徴があるものです。
それらをよく観察しながら設計をすすめていくことになります。

朝起きて、顔を洗いに洗面所に向かうとき、最初に見える光景が上の写真。
まさにピクチャーウィンドウのようにしてデザインしました。

棟上げの日。富士は快晴に恵まれ、富士山に祝福してもらっているような気分になりました(笑)
これから大工さんの仕事も本格化していきます。


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