紗のかかる光

2022-06-29 22:57:17 | 住宅の仕事


早々と梅雨が明け、6月とは思えない燃えるような夏の日差しが続きます。
写真は埼玉県の新井宿に建つ住宅。このあたりも屈指の猛暑の地域です。
大きな窓ガラスですが、大きな庇で日差しが遮られています。
窓辺にはレース状のロールスクリーンが仕込んであって、それをスルスルと降ろして過ごしているところ。
スクリーンのおかげで、窓から入ってくる光には紗がかかり、室内には程よい翳りが宿ります。
その感じが、なんともいえない安堵感があるのです。



窓辺のラウンジチェアに座って、冷たい麦茶(麦酒!?)でも飲みながら過ごす暑い休日の午後は、ちょっと幸せですね。


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レトロガラスの魅惑

2022-06-21 21:43:44 | 古河の家


「古河の家」は作家のアトリエ・ギャラリーのある住宅です。いわゆる玄関ホールはギャラリーを兼ねていて、丸いアール天井が細長く奥に続く空間は、さながらロマネスクのよう。
そして、壁に穴を穿つように開けられた窓は細長いスリット状で、仄かな自然光が入ってきます。



このスリット窓には、レトロガラスをはめ込みました。
かつての古い建物にあった歪んだガラス。向こうの景色も歪んで見えて。
そんなレトロな雰囲気のガラスは、キレイさ一辺倒の現代住宅に、古びた趣きをもたらしてくれます。
窓枠もアルミサッシではなく、もちろん木でつくりました。

レトロガラスの傍らには、北欧のアンティークの照明ランプが取り付けられています。
橙色の光が、グレージュに塗られた室内の壁を照らし、不思議な包まれ感があります。
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公園を望む家

2022-06-16 22:10:33 | 城北の家


梅雨になり、雨が降るごとに緑が湧きたちます。
写真の「城北の家」は、公園の隣という緑あふれるロケーションの家です。公園の緑を「満喫」することを楽しみにこの土地を購入され、家づくりが始まりました。
せっかくなら、窓いっぱいに大きく緑が溢れるように。
緑を引き立たせるような額縁のような窓を。
そんなことを思いながら設計しました。

緑と補完しあう色味として、インテリアは赤味がかった色を基調としました。
床のフローリングはブラックチェリー。時間を経るごとに色が深みを増していく特徴があります。
窓枠はラワン材にローズウッド色のオスモカラーで着色したもの。

そうしてできあがった窓辺は、どこかフォーマルで重厚な佇まいになりました。
3メートル近い天井高さと相まって、凛とした雰囲気が宿ります。
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鎌倉小町の家 上棟

2022-06-11 21:47:29 | 鎌倉小町の家


かねてより設計してきた「鎌倉小町の家」が上棟しました。
社会情勢による品薄や物価上昇のさなか、何とか切り抜けてここまでたどり着けたことに安堵しています。

敷地は鶴岡八幡宮にほど近い風流な雰囲気の街区にあります。施主ご夫妻ともに茶人で、新しく建てるこの家は茶の稽古の場にもなります。
ですので、一風変わった家ではなく、界隈の雰囲気に溶け込みつつも荘重な趣をもつ佇まいにしたいと思いながら設計しました。
無事に上棟し、立ち現れた姿を見ながら、うまくいったかなと反芻。

じわじわと良さが滲み出る家になってほしいと願いつつ、鎌倉への現場通いが始まります。

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美しく古びる

2022-06-06 22:11:09 | 古河の家


「古河の家」の点検へ。雨まじりの日でしたが、そのぶん新緑が鮮やかに映えていました。
この敷地は、間口が狭くて奥行きが60メートル!もの長さがあります。このような地型はこの地域特有のもの。
その土地の真ん中に、古い井戸がありました。

古い井戸を残そう。
家の設計はそんなところからスタートし、おのずと井戸を囲むように中庭のある間取りになっていきました。

道路は旧街道で交通量も多いのですが、中庭はそこからうんと離れたような感覚です。
古い井戸を利用した手押しポンプと、モーター式の井戸ポンプが併設されました。
手押しポンプはやはりレトロなデザインのものを。
傍らにはアオダモの株立ちが植わりました。
いつの間にか地面も下草で覆われて、良い雰囲気になってきました。

そんな中庭に面してダイニングがあります。
防火規制のかかる地域ですから、本来であれば防火用のアルミサッシを用いなければなりませんが、一定の長さの防火壁を設けることで、木製の窓がつけられるという緩和規定を利用して、オリジナルに木製窓をつけました。
この木製窓は両開き式で、全開口すると庭と一体的につながります。
決して大きくはない中庭だけれども、このようにダイニングと一体感があると、宝物のように感じます。



室内から見ると上の写真のような感じ。
窓からは中庭の緑と、自分の家の壁と、空が見えるだけ。
静かで穏やかな時間が流れます。

古河の旧市街がもつ、古色ある街並みの雰囲気。
隣の家は錆びたトタンの壁。でもそれも不思議といい感じ。
そんな古びた雰囲気に寄り添うように、新しいこの家も、「美しく古びる」ことに向けて素材やデザインが考えられています。
レトロな手押しポンプもそのひとつ。
室内には暗色の無垢のフローリングが敷かれ、壁はぐっとドーンの抑えられたグレージュ色に塗られ、次第に色が褪せて味がでる木製窓があり、ダイニングテーブルとペンダントライトは北欧のアンティークのもの。

新しい家だけれでも、古びているような。
古びているようだけれども、懐かしいという感覚とも違って、心が落ち着くような感覚。不思議な空間です。

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