かもめ食堂のようなキッチン

2020-02-22 18:34:21 | 練馬 梅園の家


映画「かもめ食堂」のシーンが、ずっと心に残っています。
主人公がフィンランドのヘルシンキで営むちいさな食堂。
素材を活かして丁寧に手作りされた食事が、徐々に評判をよんで・・・。
丁寧に食事をつくることが、こんなに楽しく素敵なんだ!と思わせてくれる雰囲気。
それは、キッチンの上にある高窓から自然光が穏やかに降り注いできて、食材を、調理を、とても美しく浮かび上がらせてくれているのでした。



場所は変わって東京・練馬。周りを建物に囲まれたちいさな土地ですが、こんなキッチンができあがりました。
高窓からの光で、とても明るいキッチン。
キッチンの向こうはベンチコーナーになっていて、そこからは梅園が望めます。もちろんキッチンからの眺めも最高です。

ちいさな男の子ふたりがいる家族の家。これからたくさんごはんを食べて、大きくなっていくことでしょう。
おかあさんにとっても、ごはんを作る時間が楽しくなるように。
そんなことを思い描きながら設計していたら、いつしか見た「かもめ食堂」の趣きがでました。偶然でしょうか、必然でしょうか。

「かもめ食堂」の食事と同じように、この家も自然な素材を多く採り入れました。
オークの無垢板フローリング、キッチンカウンター、スプルスの窓枠やベンチ、などなど。
だんだん陽にやけて飴色になって、味わいのある趣きが出てくるのが楽しみです。
そして、男の子が元気よく暮らす家、きっとたくさんキズや汚れもできるでしょう(笑)それも、自然なことだと思います。

梅の盛りのある日、無事に家をお引渡しできました。
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18年目の家

2020-02-14 22:04:58 | 日々


ぼくが村田靖夫さんの設計アトリエに勤めて、初めて担当した住宅に、メンテナンスで訪問しました。
もうできあがって18年目になります。
この住宅に来ると、住宅設計のイロハを叩き込まれた当時のことがいろいろと思い出され、ちょっと緊張感もはしります。



ゆったりとした敷地に広がるコートハウス。中庭のある住宅です。
村田さんが得意とした設計手法でした。
中庭は緑が茂り、それに向きあって大きなガラス窓があります。軒が深く出て、室内と中庭が一体的につながる空間です。
大きな窓があるから明るいのだけれど、緑陰を通した自然光は、紗がかかった光となって室内にじんわりと満ちていきます。
穏やかさと落ち着き。そして、すべての寸法体系がきちんとコントロールされた緊張感のある佇まい。
こんな風情が、村田さんの手腕だったのだと、今あらためて思います。



キッチンからの勝手口から外に出ると、キッチンガーデンがあります。
通風をとるための穴あきブロックの壁が立ち、それが目隠しにもなっているプライベートな庭です。当初はバラ園になっていました。
緑とともにある暮らしをこよなく愛した村田さんが、これはうまくいったと気に入っていた場所でした。

当時は、村田さんの先導に必死になって喰らいついていくだけだったけれど、こうして長い時間を経て見てみると、そのひとつひとつの厳しさが、暮らしを楽しむという目的に向けられていたんだな、とあらためて感じます。
村田さんはもう亡くなってしまったけれど、ここに来ると、やはり住宅設計の大切な原点を思いかえすことができます。
だからこれからも、メンテナンスなどを通してこの住宅を守っていきたいと思うのです。

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古びること

2020-02-08 22:52:43 | 旅行記


ポルトガルのリスボンを旅行したときのこと。古びたカフェに入り、案内されたテーブルで撮った写真。
きれいに整えられたテーブルクロスの脇にあった、古びた柱。いつの時代のものかわかりませんが、長年の間に凹み、欠け、傷のついた柱が傍にあるだけで、何か不思議な心地よさがあります。

自分以前のものがあり続けるというのは、それだけで安堵感のようなものがあります。それは、古い様式の柱であっても、庭に植わっている木々であっても、使い古された道具であっても。
そんな感覚を楽しめるようなモノのつくり方には、あこがれるなあ。形のデザインもさることながら、正しく古びていく素材の選び方が大事なんだろうと思います。

ちなみに、このカフェで出てきたケーキは絶品! 旅行先で出会う「大当たり」には幸せな気分になりますね。
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襞のような場所

2020-02-02 21:45:36 | 上池台の家


「上池台の家」に久々に訪問しました。
家ができあがってから1年以上経ち、小さな子どもたちが暮らす室内は自ずと汚れやキズもでき、でもそれが自然となじむ雰囲気になっていました。
カッコつけたカタチをデザインした家というよりも、家族の暮らしに合った、実用的で丈夫な「うつわ」をつくるつもりで設計した家でした。

家具や道具が置かれ、活きた空間を見るのは気持ち良いものです。
写真は「ライブラリー」と名付けられたスペース。丸い天井に覆われて、タイムトンネルのような不思議なゾーンです。
中庭に面した特等席で、デスクの造りつけられていて多目的に使えます。
子どもたちの声が響くにぎやかな家のなかにある、ちょっと静けさに誘う空間。
きっと子供たちが寝静まった後に、間接照明に包まれた空間に身を置くのは、親としてはちょっといい時間ですよね。


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