最近の東京は雨が続きます。冷たい雨が降る日に時おり思い出す、かつて冷たい雨のなかで見た美しい邸宅のことを書きたいと思います。
桂離宮。17世紀に造営された皇族の別荘。当時の桂は、京都市中から少し離れ、桂川を背景に風光明媚な雰囲気をもっていたのでしょう。人工的に起伏がつけられ、池がつくられた敷地内に、御殿や茶屋などのパビリオンが散りばめられています。四季折々の草花を楽しみながら、それらのパビリオンひとつひとつを巡ることが楽しみ。
それぞれの茶屋・休憩所は、山小屋風の素朴な雰囲気にデザインされながらも、庭園を眺めながらお茶を飲んだり談笑したりするのが楽しくなるよう、「いろり」や「腰掛け」が外に張り出すように造り付けられています。これって、アウトドアリビングですよね。
その2世紀後のドイツ。同じようにアウトドアリビングを積極的に取り入れた邸宅が現れました。カール・フリードリッヒ・シンケル設計による、宮廷庭師の家。ベルリン郊外のポツダムの森のなかにつくられました。
桂離宮が山小屋風の素朴な佇まいを見せるのと同様、宮廷庭師の家では南イタリアの農家の佇まいがデザイン・モチーフになっています。そこには神殿風のティー・パビリオンが付属し、これまた桂離宮と同じように人工的につくられた池から小舟に乗ってアプローチ、なんていう演出までされています。小さな庭。大きな庭。池。それらをめぐるブドウ棚の通路。
森が美しく見える一番いい場所に、地面から高く持ち上げれたテラスがあります。そこにはテーブルとベンチが造り付けられ、上はブドウ棚が大胆に覆っています。テラスの周りの植え込みは、きっと夏には美しい草花を見せてくれるはず。
時代や国を超えて、建築とアウトドアリビングの夢は広がります。雨の日は・・・やっぱり家の中にいたくなっちゃうかな。でも、しとしと雨の中に浮かび上がる姿は、幻想的でした。晴れた日には楽しく、雨の日には美しい。家とはこうあるべきなのかな。