キオストロ・ヴェルデ

2024-05-29 18:40:35 | 緑の回廊の家



以前にイタリアのフィレンツェを旅したときに、心に残った場所があります。
そこはサンタ・マリア・ノヴェッラという教会にある中庭でした。
その中庭は小さくて心地よい広さで、緑が植えられていました。

中庭を囲むように回廊が巡っていて、ベンチに座って時間を過ごしていると、とてものんびりできました。
明るくて、通る風が心地よくて。

キオストロ・ヴェルデ ~緑の回廊~ 

この場所はそんなふうに呼ばれているそうです。
緑あふれる回廊を巡る楽しみをつくりたい。
そんなことをずっと思い描いていました。

それから何年も経って、実現したこの家。
家のまわりにはゆったりと回廊が巡り、さらにその周りには緑があふれます。
回廊には屋根が掛かり、列柱が空間にリズムを刻みます。床のタイルのテラコッタ調の色彩が、緑とあわさって優しい感じです。
そして回廊は屈曲しながら奥へ奥へと続き、誘われるようして歩み進むと、そこには・・・。
ここからは、またあらためてブログでご紹介します(笑)


新緑の季節らしい気持ちのよいお天気のなか、この「緑の回廊の家」を訪問しました。
植わってからまだ2か月ほどしか経っていないけれど、若々しく元気な緑が迎えてくれました。
回廊には木漏れ日がゆらめき、秘めやかな風情に満ちていました。



愛犬家のためにつくられたこの家。
室内と庭との間にゆったりと広がる回廊の空間は、天候に関わらず愛犬とゆっくり過ごすのにうってつけです。
でもそれだけでなく、せっかくだからガーデニング用具を回廊の壁に掛けようとか、干し柿を吊るしたいねえとか、建て主といろいろな話で盛り上がりました。
家ができあがってから、むしろ楽しみが広がっていく家というのは、とても素敵だなと思います。

そして、年々と成熟していく緑はいちだんと回廊を包み込み、さらに風情が増していくことでしょう。




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個室のこと

2024-04-23 22:30:28 | 緑の回廊の家


上の写真は、先月にお引渡ししたばかりの「緑の回廊の家」の、個室です。
広い庭があって、そこに面して正方形の窓がひとつ。
庭が広いのだから、もっと大きな窓にすることもできましたが、やはりこのサイズがいいと思いました。

立ったときには、窓の高さがとても低く感じます。
でも、すわったときには、すぅっと目線が庭に滑り出て行って、とてもよい案配。
この部屋では、建て主の愛犬が一緒に過ごしたり一緒に寝たり。そんな暮らしのことをイメージしながらつくった部屋でした。
愛犬の目線からも、無理なく庭が眺められそう。

窓の傍らには、真新しいライティングビューロー。建て主がずっと憧れていたものだそうです。大事なものが、窓辺の傍らに。
無垢のチェリー材で丁寧に作られたこの家具は、家具工房ウッドユーライクカンパニーのもの。職人さん自ら運び入れてくださったそうです。

自分だけの窓辺と、デスクがひとつ。
ぼくにとって、個室のいちばん魅力的なあり方は、そんなところにあります。




上の写真は、かつてイタリアを一人旅したときに訪れた、フィレンツェ近郊の小さな村にある修道院の個室。
回廊のある開放的な1階の空間のうえに、修道士のための個室が並んでいます。
とても小さな空間で、こちらも無垢の木でできたデスクと、小さな窓がひとつ。
要素がとても少ないぶん、窓からの光も鮮烈で、デスクの経年の味わいも際立っていました。
デザインなどなにも無いような空間だけれども、逆に余計なものが何もなく、純粋で真正なものだけがある、という充実感に心が満たされたのを覚えています。
一人旅だったせいかな、笑

このときの一人旅では多くの修道院を訪れて、人々が語らう開放的な緑あふれる回廊と、ひとりきりでいることが心地よく感じる美しい窓辺の個室を、じっくりと見て回りました。
そのときに感じた気分が、その後ぼくが設計する住宅には、静かに息づいているような気がしています。


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高窓の光

2024-03-31 00:07:12 | 緑の回廊の家


スペインやイタリアにある小さな教会や礼拝堂に訪れたときのことをよく思い出します。
仄暗くて、しんと静かな空間に、高窓から光がすぅっと入ってくる。
小さな空間だからこそ、そのささやかな光がとてもかけがえのないものに思えます。
そんな気分にさせてくれる空間を、つくってみたいと思っていました。

「緑の回廊の家」は、庭に面して大きく窓が開かれ、室内と庭とが一体となった雰囲気の家です。
明るく開放的な室内のなかに、すこしだけ、翳りと光を印象的にもたらしたいと思いました。
そんなことを思いながらデザインしたのが、上の写真のような高窓です。

木の板張り天井の一部が斜めに切れ上がって、高窓から光が入ります。
午前中のある時間帯だけ現われ、刻々とその表情を変える特別な光と陰影。
開口部にはレトロな装飾ガラスがはめ込まれていて、さながらステンドグラスのよう。
不思議なことに、室内に落ち着きと寄る辺をもたらしてくれました。






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