サンタ・サビーナにて。

2021-01-31 21:40:08 | 旅行記


前回のブログで書いたタイルつながりの話です。
住宅の設計では、お施主さんと素材の打合せを多くしますが、そのなかで最も気合?が入るのが、タイルについてです。
国内外の多くのメーカーでタイルは製造され、それらはインターネットで気軽に探すことができサンプルも取り寄せられます。
各種サンプルのなかでも、タイルは最も華やかな部類でしょう。

といっても、絵柄や模様が入っているものが候補に挙がることは少なく、色調や質感そのものが美しいものを探すことが多いと思います。
「小野さんだったら、どれ選びます?」
とよく聞かれますが、ついつい選んでしまうのが、くすんだ色調の、いわゆる「無名色」のもの。好みが表れてしまいます(笑)
じゃあ、心に残ったタイルは?と自問してみると、あれもよかった、これもよかった、といろいろ思い返して、やはりこれかな、と思うのが写真のタイル。

まあ、住宅用にデザインされたタイルではないので反則ですが(笑)、とっても古いモザイクタイルです。
ローマでも最も古い聖堂のひとつ、サンタ・サビーナ聖堂。
アヴェンティーノの丘を朝早く登って行くと、サンタ・サビーナは現れます。
まだ観光客もほとんど訪れない朝の時間。
中に入って正面の壁にはモザイクタイルでラテン語が刻まれていて、朝の光がモザイクタイルを照らして輝きます。
不思議なもので、陽が登ってくるにつれて、輝きがなくなるどころか、ぐっと沈み込んでいきます。

朝のある時間帯だけ立ち現れるプレゼントは、ぐっと心に残ります。綺麗とかカッコいい、という類のものではなく、ただただ眺めてしまう感じ。
前回のブログで「神々しい」とか書いちゃったけど、サンタ・サビーナを前にすると失礼な話・・・ですね。
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タイルのある大壁

2021-01-29 22:42:17 | 西東京の家


西東京の現場では、内装工事が進行しています。
建具屋さん、塗装屋さん、クロス屋さん、タイル屋さん・・・
あらゆる職種が関わりますので、入れ替わり立ち代わりで徐々に現場が仕上がっていきます。

2階にあるLDKは、屋根のカタチがあらわれた斜めの天井です。
その斜めのラインに沿ってタイルを貼るのだから、これは大変!
端っこの方は細かく切ったタイルを貼ることになります。
図面で描くのは簡単なれど、実際につくるのは手仕事ですからね。
できあがってみると、とても丁寧な仕上がりで嬉しくなりました。

こげ茶色のざっくりした風合いのタイルは存在感たっぷり。
細長い窓から入ってくる光も神々しく感じます(笑)
これまで手掛けてきた住宅とはまた違った趣のインテリアになりそうで、楽しみです。

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触りたくなる手すり

2021-01-22 22:23:19 | 経堂の家


「経堂の家」の家の階段は、玄関ホールと一続きになっています。その雰囲気に沿うように、階段のサイズも少しゆったりさせて、ガラスブロックからの印象的な光が入ります。
そこに、木製の手すりがついています。
大工さんの繊細な手仕事によってつくられた手すり。最初、大工さんは図面を見たときに「太すぎるんじゃないかな」と思ったそう。
いつも設計アトリエの仕事を多く手掛ける大工さんにとって、細くてシャープなデザインの手すりを造ることが多いのだろうと思います。
でも、ここ「経堂の家」では、その逆のディテール。
太くて、手をそっと添えたくなる雰囲気の手すりになりました。手を置いてみると・・・うんうん、しっくりくる(笑)

上方から降り下りてくる光と、くすんだ色味の木製の手すり。
クラシックな雰囲気もあり、礼拝堂のような雰囲気もあり。

完成まで、あともう少し。
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冬の色

2021-01-17 22:06:43 | 日々


写真家の土門拳は、冬ざれの京都が好きだと言っていたそうです。
紅葉の季節は観光客でどんちゃん騒ぎになっているから、静かな冬こそじっくり味わうのに都合がよいのだとか。
華やかさはないけれど、その時にしか生まれない色。

写真は京都市北部にある宝ヶ池の冬のスナップ。
観光地ではないけれど、子ども時代に生活圏内でよく友達と遊びに行ったり、学校のマラソン大会でぐるぐる回ってしんどい思いをしたり。
その静かな雰囲気そのものをいいなと思うようになったのは、やはり大人になってからでしょうか。

川ではなく池だから、水が澄んでいるわけではないし、すぅっと吸い込まれていくような深い感じ。
鴨が音も無く水面をすすむ様は、上村松篁の絵のよう。
こういう色味は自然に自ずと出てくるものだから、狙って出せる色ではないし、ペンキで再現しようとするのも野暮というものです。

枯淡。
無名色。

でも有元利夫は現代の画家でありながら、それを体現していたなあ。
建築でも近づけないものだろうか。




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ラテラノ洗礼堂のような。

2021-01-13 10:54:46 | 経堂の家


工事中の「経堂の家」の足場が外され、外観がお目見えしました。
大きな壁面に、深く穿たれたガラスブロック窓。
この佇まいや色味が、ローマのラテラノ洗礼堂を思い起こさせてくれて、ぼくにとって好きな外観になりました。

この日は冷たい小雨まじりの曇天。
寒さから逃げるように室内にはいると、塗装業者さんが壁のペンキを塗っています。
ペンキを塗るハケを動かす音だけが空間に響き、
白く塗られつつある空間に、ガラスブロックからの光が静かに満たされてゆく。
まだきれいに仕上がっていないから、そのぶん、古めかしいラテラノ洗礼堂の空間にいるような気分になったりして。

工事中の現場の、束の間の静かな時間もよいものです。
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