魔女の宅急便

2022-04-30 21:39:47 | 旅行記


昨晩 TVで「魔女の宅急便」がやっていて、ついつい見入ってしまいました。
Yahooコメントかなにかで、何十回観ても飽きない、と書かれていましたが、ストーリーも知っているのに何回でも観たくなるというのは、いったいどういうことなんでしょう。
ぼく自身も、何回か観たことがあるような気が(笑)
なんだか幸せな気持ちになるんですよね。お馴染みのストーリーもさることながら、背景の美しい街並みや、魅力的なパン屋さんにも。

モデルとなった街並みは、実在するいくつかの街並みのイメージをミックスしているそうですが、そのなかのひとつにポルトガルの港町ポルトも入っているそうです。
もう15年以上前ですが、旅行で初めてポルトの街に訪れたときには、遠い街に来たなあと感慨にふけった記憶があります。
電車の終着点サン・ベント駅は、石とタイルで覆われた建物で、いい具合に摩耗した雰囲気が、ぼくにはとてもしっくり感じられました。

ポルトの街は、道路の舗装も、建物の壁も、家具も、何もかも、昔から存在する古い素材でできている街。単純に言うとプラスチックとかビニールとかが無いのかな。
どちらかというとそういった素材に囲まれた東京に暮らす身からすると、とても羨ましくなりました。

道すがら出会ったパン屋さん。店構えは石造り。そのガラスショーケースのなかにはパンがゴロゴロ。パンまでもが石やガラスと同じような「素材」に見えてくるから不思議です。
パッと見には石ころのような固そうなパンなのですが、実際に買って食べてみると、ふんわり柔らかくて美味しいこと!

「魔女の宅急便」でキキが店番をするパン屋さんは、また別の街に実在するパン屋さんがモデルになっているそうです。
店の外から眺めて楽しく、ドアを開けてその香りで幸せになる、という様が、映画のなかでも活き活きと描かれています。
斬新な何かを描き出すというよりも、これまでの人生で見たり聞いたりしてきたあらゆる「記憶」が、映画を観ながら去来するような感覚がもたらされます。
メランコリックな気分のテーマ曲や、空をホウキにまたがって浮遊するシーンは、すべて「記憶」という儚いものに繋がっているような気もします。
そんなところにも、この映画の飽きない魅力があるのでしょうか。

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ダイニングテーブル

2022-04-24 22:41:48 | 吉祥寺北町の家


住宅の設計にあわせて、家具のデザインもすることがあります。
その中心となるのはダイニングテーブル。無垢板を素材に選んで造ります。

ぼくの設計の特徴は、窓辺に居心地の良い居場所をつくること。
ダイニングのスペースは、食事のためだけでなく、無為に過ごせる場所にしたいと常々思っています。
長く時間を過ごすのだから、そこに置かれる家具はしっかりしたものを。
使い続けて愛着がわくものを。
そんなことを考えると、やはり無垢の木を用いてテーブルを造りたくなります。

上の写真は「吉祥寺北町の家」のダイニング。
庭に寄り添うような気持ちのよいスペースにしたいと思いました。
家具づくりにあたり大事にしたのは、このスペースにちょうどよいサイズで、長く過ごしていて疲れないこと。
テーブルのフォルムそのものはいたってシンプルですが、そのぶん無垢の木の存在感が際立ちます。
角部は丸く削り出すようなデザインになっていて、体にもよく馴染みます。

ミズナラの木でつくったテーブルは3枚接ぎです。テーブルの幅が90センチぐらいありますから、幅30センチほどの木を接ぎ合わせたもの。
もうこういうものはなかなか造れないのだろうなあと思うと、愛おしく思えます(笑)
テーブルとあわせてベンチも造りました。

キズも凹みも汚れもツヤも。少しずつ変化をしていくのがいいところ。
家は、できた姿が一番良いのではなく、時間が経って良くなっていくことをイメージしたいものです。
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patina

2022-04-15 23:13:24 | 自由が丘の家


暖かくなり、一気に新緑が芽吹いてきました。
毎年くりかえす光景ですが、同じように季節が巡ってくるというあたりまえのことに、この春はことさらありがたく思います。

この「自由が丘のアトリエ」も10回目の春を迎えています。
できあがったときよりも、より美しくなるように。
いつもそんなことを思い描きながら家をつくっています。



この木枠のドアは、ラワンという樹種の木材に、防腐の塗料を施したものです。
真鍮のドアハンドルの色が、金ピカから黒ずんで味わいが出てくるのに呼応するように、ハンドル廻りの塗料も少しずつ剥げ落ちてきました。
知らず知らずのうちにさわっているんですね、きっと。
塗りなおした方がよいともいえるけれど、やはりこのままにしておきたいと思っています。
時間をかけて自然にできあがる風合い、いいですよね。この家で過ごすことへの愛着が湧いてくるように思います。
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江戸からかみ

2022-04-09 21:18:07 | アート・デザイン・建築


あらゆるデザインで、simple is best とする志向は強くあります。
では、美しい装飾をデザインしてほしい、と言われると、なかなか難しいところです。
そんなことを思うとき、古来からのデザインにも目を見張るものが多くあります。

写真は、和室のある住宅の襖。襖紙として江戸からかみと呼ばれる和紙を選びました。
地の色も渋く、そこに黄金色で染められた波のモチーフが描かれています。
照明の具合で、見る角度によってくるくると表情が変わります。
古くに造られた版木が大切に保管され、今でも使うとのこと。
良いものは残り続けるのですね。

以前に、日本画家 上村松篁のエッセイを読んだとき、「川の水面から必要な線を引き出してくるのは苦労した」というエピソードがありました。
画家の手によって選ばれた線は簡潔でありながら、優美で装飾性のある線でした。

シンプルなもののもつ削ぎ落された美しさは好きだけれど、選び抜かれた線による装飾性もやはり惹かれるなあ。
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窓辺のキッチン

2022-04-01 18:49:03 | 古木のある家


桜が一気に満開になったかと思えば、もう桜吹雪に。早いものですね。
でも、そんな束の間の光景だからこそ、かけがえのないものとも思います。

上の写真は「古木のある家」。古くから残る庭木を残して建て替えた家です。
2階にあるキッチンには出窓があり、そこから柿の木が見えます。5年前のちょうど今ぐらいの時期に撮った写真で、まだ新芽が出る前です。
新緑を愉しむのにはあともう少し待たなくてはなりません。

濃い色の床のフローリングや、レトロな色調の壁のタイルなど、この家にはどこか懐かしい気配が漂います。
出窓から見える眺めも、ずっとあり続けた古木を慈しむような雰囲気があります。

このキッチン空間は、キッチンのデザインそのものが主役なのではなく、もしかしたら出窓から見える眺めが主役だったかもしれません。
もっと言えば、懐かしい記憶に寄り添うような空間こそが、この家のテーマでした。
出窓の下には料理本なども収納され、調理をしながらここで過ごす時間がゆっくりと流れるように。
そんなことを思い描きながらつくった空間です。

5月になれば窓いっぱいに新緑が広がることでしょう。少し光沢を入れて塗装した天井面には緑が映り込み、室内は緑の気配でいっぱいになります。
だんだんと暖かくなり、そんな季節を待つのも、また楽しみです。
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