上の写真は、先月にお引渡ししたばかりの「緑の回廊の家」の、個室です。
広い庭があって、そこに面して正方形の窓がひとつ。
庭が広いのだから、もっと大きな窓にすることもできましたが、やはりこのサイズがいいと思いました。
立ったときには、窓の高さがとても低く感じます。
でも、すわったときには、すぅっと目線が庭に滑り出て行って、とてもよい案配。
この部屋では、建て主の愛犬が一緒に過ごしたり一緒に寝たり。そんな暮らしのことをイメージしながらつくった部屋でした。
愛犬の目線からも、無理なく庭が眺められそう。
窓の傍らには、真新しいライティングビューロー。建て主がずっと憧れていたものだそうです。大事なものが、窓辺の傍らに。
無垢のチェリー材で丁寧に作られたこの家具は、家具工房ウッドユーライクカンパニーのもの。職人さん自ら運び入れてくださったそうです。
自分だけの窓辺と、デスクがひとつ。
ぼくにとって、個室のいちばん魅力的なあり方は、そんなところにあります。
上の写真は、かつてイタリアを一人旅したときに訪れた、フィレンツェ近郊の小さな村にある修道院の個室。
回廊のある開放的な1階の空間のうえに、修道士のための個室が並んでいます。
とても小さな空間で、こちらも無垢の木でできたデスクと、小さな窓がひとつ。
要素がとても少ないぶん、窓からの光も鮮烈で、デスクの経年の味わいも際立っていました。
デザインなどなにも無いような空間だけれども、逆に余計なものが何もなく、純粋で真正なものだけがある、という充実感に心が満たされたのを覚えています。
一人旅だったせいかな、笑
このときの一人旅では多くの修道院を訪れて、人々が語らう開放的な緑あふれる回廊と、ひとりきりでいることが心地よく感じる美しい窓辺の個室を、じっくりと見て回りました。
そのときに感じた気分が、その後ぼくが設計する住宅には、静かに息づいているような気がしています。