前回に引き続き「経堂の家」の話です。
この家の階段は東向きの道路に面しています。
東に向いていますから朝日が気持ちよく差し込むはず。
でも、道路に面しているので、道行く人から室内が見通せるのも避けたいところ。
そんなことを考えながらたどりついた答えが、ガラスブロックで窓をつける、ということ。
風景は見えないけれど、自然の光が滲むように室内に入ってきます。
2階にある寝室から朝、階段を下りてリビングに向かいます。
一日のなかで、必ず出会う光景。
柔らかく、崇高な雰囲気の自然光に満たされた空間です。
そんな光に照らされて、ゆったりと幅広の木製の手すりに、しっとりとした趣が感じられます。
階段は通過するだけの動線だけれども、はっとさせられるような印象的な光景になっていると、階段を上り下りするのが楽しみになりますね。
せっかくガラスブロックを入れるのなら、思いきって壁面いっぱいに、というデザインもあっただろうと思います。
きっとモダンな雰囲気になるでしょうしね。
でも、心の内にあったのは、いつだったかイタリアで見た小さな名も無き教会の、静かな堂内のイメージでした。
壁の余白があるから、光が美しくなるということを、大事にしたかったのです。