鎌倉小町へ

2023-10-28 22:24:08 | 鎌倉小町の家


鎌倉の小町にできあがった家。植栽の植え付けも終わったとのことで、お伺いしました。
鶴岡八幡宮の門前町らしい古風な趣きのある界隈にしっくり馴染むよう、控えめに佇む外観としてデザインしました。
建て主は裏千家の茶人で、家には茶道の稽古にかかわる諸室が設けられています。

京畳でつくられた八畳広間は、明るく柔らかい雰囲気の部屋です。
亭主が座る畳の向こう側には庭が広がり、午後の穏やかな光が入ってきます。
住宅の中にある和室ですから、やはり日常使いとしても気持ちの良い部屋にしたいですね。

撮影をさせていただいた後、薄茶を一服いただきました。
その美味しいこと!

午後の時間、照明もいらず、自然光だけの室内でおしゃべりするのは、穏やかでとても楽しい時間でした。
設計のはじまりからの思い出話にも花が咲き。
できあがった家は、訪れた方々からも「とても居心地がよい」と評判をいただいているそうで、設計者としては冥利に尽きる思いです。



お茶の道具のお話にもなり、所有されている「高台寺蒔絵」柄のナツメを拝見しました。
ナツメというのはお茶の粉を入れておく器のことなのですが、和室のなかで見るその姿は、なんとも美しい趣きがあります。
こういう雰囲気を、言葉でなんと表現したらいいのでしょうか。

楽しく盛り上げていくようなインテリアではなく、むしろ穏やかさのなかに沈んでいくような不思議な空間。
そんな室内をつくれたことが、とても嬉しく思っています。

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ジョットの家

2023-10-15 22:23:00 | アート・デザイン・建築


絵のなかに描かれた建物に惹かれることがあります。
そのひとつがこれ。ジョットの絵のなかの建物です。
ジョット・ディ・ポンドーネは、ルネサンス絵画の礎を築いた画家として有名ですが、絵の背景に描かれる自然や街並みに、不思議な魅力があるのです。

簡素な箱の組み合わせのような外観に、大小の窓が開けられています。
平屋建てなのか2階建てなのかははっきりわかりませんが(まあ、適当なんでしょうね 笑)、正面の大きな窓はきっととっても大きなサイズなのでしょう。
その窓の先にはシンボリックな木が植わり、斜面から風景が一望できそうな雰囲気です。
室内の様子はよくわかりませんが、壁の渋い色といい、気持ちよさそうな窓辺がありそうな雰囲気といい、そして赤い屋根の塔の可愛らしさといったら!

可愛いらしいといえば、ルネサンスよりも前の時代の宗教画は、人物の個性や感情を表現するということはありませんでした。
ジョットが、人間本来の個性や感情を絵に表したという点でも画期的なのです。



母子像の絵画。優しいマリア様のお顔と、ほら、牛たちも微笑んで。
平明で簡素で優しい絵。

絵画に限らず、ですが、そんな気分をもつものが、ぼくは大好きです。
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ONE TEAM

2023-10-09 22:44:53 | 旅行記


フランスで開催されているラグビーのワールドカップ。
日本代表、惜しくも決勝リーグ進出とはなりませんでしたね。

中学や高校にもラグビー部がありましたが、その練習の激しさたるや、凄まじいものがありました。
練習の厳しさという点において、やはりすべての部活動の頂点に立つものだっただろうと思います。
代表チームのレベルになると、世界中からそんな過酷な経験を積んできた選手が集い、そしてぶつかり合うわけですから、まさにオールアウト、すべてを出し尽くすことになるのだろうと思います。
そんな厳しい練習環境のなかから、おのずとONE TEAMという共同体の精神が培われていくのでしょう。
滅私、すべてはチームのため、仲間のため。

パリ市内も、パブリックビューイングやカフェなどでの放映で盛り上がっているでしょうか。
パリの中心にあるノートルダム寺院。有名な正面からの外観ではなく、側面から見ると複雑なカタチをしています。
ノートルダムはある一人の建築家の設計ではなく、何人もの建築家が時代を経ながら関わり、何世紀にもわたって造られていきました。
自分が生きている間には完成した姿を見ることはないだろう。
そんなことをわかりながら、自分に与えられた役割を吟味し、最善を尽くして次の世代に託していく。

こちらも、静かなるONE TEAMだなあなんて思います。
そんなことを思うとき、この側面の外観が愛おしく思えてくるのです。
大火災の惨事から立上り、着実に改修が進んでいくのを祈るばかりです。
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ヒュッゲな家

2023-10-03 22:19:03 | 透かし庭の家


昨年末にできあがった「透かし庭の家」を訪問しました。
「透かし庭」という言葉があるかはわからないのですが、周囲を家々に囲まれた立地のなかで、部屋の両方向に庭が透けてつながるようにつくった家です。
言葉通りのシンプルなコンセプトとデザインでできあがった家は、秋めいた穏やかな自然光のなかで、静かに佇んでいました。

室内に置かれたハンス・ウェグナーのデザインによるデイベッドソファ。こうして室内を見通すアングルのシーンも素適ですが、この家の本領は、その居心地の良さにあります。
このまま窓辺に近づいていって、ウェグナーのソファにゆったりと座り、ぐるりと囲まれたカウンター下の本棚から本を取り出したり、音楽を聴いたり、テレビを観たり。
大きな窓には緑が溢れ、朝は木漏れ日が室内に入ってきます。

居心地がよくて、とても静かな時間。ふと、ずっと大切にしてきた「ヒュッゲ」という北欧のキーワードが思い起こされます。
ほっこりする、というような日本語に近い意味合いになるそうです。
北欧デザインの家具もしっくりとよく似合う空間になりました。
天井にはダウンライトが無く、スタンド照明などを主にした照明の計画で、夜も癒しの雰囲気に満たされることでしょう。

そんなヒュッゲな空間の雰囲気を、このブログや、いずれホームページでもご紹介していきたいと思います。

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