「古河の家」に点検を兼ねて訪問しました。
古河市の旧市街には、間口が狭く奥に細長い外区割りの地域が残っていて、そのなかの一区画に建てた家です。
アトリエとギャラリーを併設した細長い家。
ダイニングは中庭に面しています。ひととおり点検を終えたあと、ケーキとお茶をご馳走になりながらしばし談笑しました。
居心地よく暮らしやすいこと、設計者としては冥利に尽きる言葉も頂戴し嬉しいかぎり。
ゆっくりと過ぎていく午後の時間。季節外れの寒い日で、ペレットストーブの暖かさがぐっと沁みます。
とっぷりと骨太の木の建具、暗色に塗られた壁の色、アンティークの家具。
そういったものに囲まれて、得も言われぬ安堵感があります。
リビングは家の一番奥にあります。庭に面して大きなガラスがあって、そこから庭が見晴らせます。
コロナ禍のなか、野菜作りを始められたとのこと。
収穫された作物があり、これからDIYで造る舗装用の枕木が積まれていたりします。
少しずつ、新しい生活に向けたいろいろなチャレンジが始まっているようです。
庭の向こうは、渡良瀬川の方角です。
西に向いていて、遠くに夕焼け空を望みながら、室内には徐々に陰影が深まってきました。
ペレットストーブの炎が時折パチンと音をたてながら鮮やかに燃えています。
なんだろう、この満たされる感じは。
山や川が見えるわけでもないけれど、やはりこの家はどこかこの風土に繋がっているような気がするのです。
古色然とした街並みのなかにすっと沁みこむように佇み、見えない河の気配を室内に宿しているかのようです。
風土と家。そんなことをじんわりと感じさせてくれる家でした。