古河の夕暮れに。

2021-11-29 21:47:54 | 古河の家


「古河の家」に点検を兼ねて訪問しました。
古河市の旧市街には、間口が狭く奥に細長い外区割りの地域が残っていて、そのなかの一区画に建てた家です。
アトリエとギャラリーを併設した細長い家。

ダイニングは中庭に面しています。ひととおり点検を終えたあと、ケーキとお茶をご馳走になりながらしばし談笑しました。
居心地よく暮らしやすいこと、設計者としては冥利に尽きる言葉も頂戴し嬉しいかぎり。

ゆっくりと過ぎていく午後の時間。季節外れの寒い日で、ペレットストーブの暖かさがぐっと沁みます。
とっぷりと骨太の木の建具、暗色に塗られた壁の色、アンティークの家具。
そういったものに囲まれて、得も言われぬ安堵感があります。



リビングは家の一番奥にあります。庭に面して大きなガラスがあって、そこから庭が見晴らせます。
コロナ禍のなか、野菜作りを始められたとのこと。
収穫された作物があり、これからDIYで造る舗装用の枕木が積まれていたりします。
少しずつ、新しい生活に向けたいろいろなチャレンジが始まっているようです。

庭の向こうは、渡良瀬川の方角です。
西に向いていて、遠くに夕焼け空を望みながら、室内には徐々に陰影が深まってきました。
ペレットストーブの炎が時折パチンと音をたてながら鮮やかに燃えています。

なんだろう、この満たされる感じは。
山や川が見えるわけでもないけれど、やはりこの家はどこかこの風土に繋がっているような気がするのです。
古色然とした街並みのなかにすっと沁みこむように佇み、見えない河の気配を室内に宿しているかのようです。

風土と家。そんなことをじんわりと感じさせてくれる家でした。



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古木のアプローチ

2021-11-19 22:51:06 | 阿佐ヶ谷 古木と暮らす家


ひきつづき「古木と暮らす家」のこと。
道路に面した前庭に、古い庭木が残されています。
玄関へは、その古木の傍らを通ってアプローチします。
午前中は木陰のある小径。
なんだか、そこを通るだけでほっとする感じです。

イタリアやスペインで見かける、路地に面した小さな礼拝堂。
たいていそれらは、玄関前に古い木が植わっていて。
ずっと見守ってくれているような雰囲気があって、ぼくにとってはとても好きな原風景です。

この住宅の設計にも、そんな想いが入り込んでいたんだろうなあと思います。
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引き渡し前の。

2021-11-09 22:58:31 | 阿佐ヶ谷 古木と暮らす家


「阿佐ヶ谷 古木と暮らす家」。
引き渡し前の束の間、写真を撮りながら空間にひとり佇む。
この家には古い庭木があって、庭に大きく開かれた窓から一日中、向きを変えながら木漏れ日が室内にはいってきます。
なにかに見守られているような感覚。

真新しい家だけれど、どこか懐かしくて、安心感があります。
それもヒュッゲということでしょうか。
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木漏れ日のある現場

2021-11-01 22:12:49 | 阿佐ヶ谷 古木と暮らす家


阿佐ヶ谷で建てている現場が佳境に入っています。
御祖父様が大切に育ててこられた庭木を残し、寄り添うように建てた家です。
すべての庭木を残すことはできなかったけれど、それでもいくつかの主要な木々を残すことができました。

足場が外され、家の外観が姿を現しました。
と言ってもこの家での主役は、新しくできた建物の外観よりも、むしろ古くから残る庭木です。
簡素で静かな雰囲気の外観は、古い庭木の背景となり、樹影が壁に映り込みます。

古い家。
人工的な新建材が流通する以前に建てられた家のもつ、素朴で確かな物の質感。
建て替えることになったけれど、経てきた時間にそっと繋がるように、新しい家でも新建材はなるべく使わず、自然素材を多用することになりました。
それはキッチンでさえも。



家の中心に配されるキッチンは、タモの無垢の木で作られることになりました。
手掛けるのは、無垢の木を活かしたキッチン製作を得意とする家具工房 フリーハンドイマイさん。
上の写真は、キッチンのカウンターを裏返してあるところ。
カウンターが大きく張り出すデザインですから、ちょっとかがんで見上げるとカウンターの裏面が見えます。
そこに突然ベニヤ板などが見えると残念ですよね。だから、ここにも無垢の木がしっかりと使われています。
確かな物作りの片鱗が見えて、設計者としても嬉しくなってしまいます。

工事中の室内にも木漏れ日が入る、穏やかな雰囲気の現場が、もうすぐ終わろうとしています。




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