キッチンの楽しみ

2018-09-25 22:13:49 | 自由が丘の家


建築家の自邸だからといっても、コンロなどの機器は最もローコストな部類で、気の利いた設備も無し、収納もほとんど扉無し。
工夫して使う、とても簡素なキッチン。

そんななかにも自慢できることがあって、それは、大きな窓に面していること。
調理台の背面のカウンターの真正面に窓があって、そこからは中庭の緑が見えるのです。

とても細長い形状の家だから、広い部屋をとることはできませんでした。
このキッチンなんて、家の幅がいちばん狭いところにつくられていて、両手を広げたぐらいに収まっているのです!

でもそんなおかげで、こんなに窓辺の楽しいキッチンができあがりました。キッチンに居ながら、中庭の緑がぐぐっと身近に。
キッチンは日当たりがよくないほうが食材も傷まず、理にかなっているとは思いますが、まあ、過ごしていてじんわりといいなと思えるのがいちばん。
なにごとも、工夫次第で楽しくなる、ということですね。
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古いランプ

2018-09-10 17:29:22 | 白楽の家


「白楽の家」は、大学時代からの友人O君から依頼されて設計した2世帯住宅でした。
O君の御父上が幼少より育った古い平屋の家。当時、大工さんが腕によりをかけてつくった様がわかります。
長い年月を経て、独特の風合いを帯びた備品の数々。
その古い家を建て替えるにあたり、それらのいくつかを、新築の家にも再利用できないか、そんなことを相談しました。
家の解体の前に、何を残すか決めて、大工さんにはいってもらい丁寧に取り外し、保管しておきました。

写真は、風呂場についていたレトロなランプ。遠くに見えるのは、和室の欄間の造作。
新築の家のなかでひっそりと、でも独特の存在感をもって息をふきかえしてくれて、とても嬉しくなりました。

カタログから製品を選んで据え付けるのではなく、昔の家にあったものや古くからあったものを敢えて使うことは、たんに記念という以上の意味があるように思うのです。
かつてここにあった時間を、ほんの少しだけ思い起こさせてくれるような、愛しい存在。
もっとも、そんなことを感じさせてくれるような雰囲気で使わなければ、まったく意味は無いのですが。
そんなところが難しく、そしておもしろいところです。
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小窓の楽しみ

2018-09-05 09:38:21 | 自由が丘の家


私の設計アトリエの応接室に、ちいさな木製の窓があります。
その窓はちいさな中庭に面していて、テーブルについた来客のちょうど傍らにあります。

窓越しには緑が見えて、葉っぱの陰が外壁に映り込んでゆらめいている、そんな感じの眺めです。
気候のよいときは窓を開けると、気持ちよく風が抜けていきます。

窓があれば向こうの風景が見えるし、開ければ風が通る。
ごくあたりまえのことですが、そんなあたりまえのことが、ちょっといいと思えると、日々の暮らしは居心地の良いものになると思います。

この窓は、現場で建具屋さんに制作してもらったもの。タモの木を使い、ガラス戸と網戸が備わっています。
軸がずれながら開く「縦すべりだし窓」という形式。
好きな開き角度で留められ、ガラス窓の両面から拭き掃除ができるので、実用性を大事にした私の師匠が好んだ窓の形式です。

木製の窓もメーカー品があり、歪まないように中に鉄が仕込んであったり、いろいろな工夫がされているのですが、そのぶん、木の窓特有のやさしい風合いがどうも損なわれてしまいがちです。
そんなことからぼくは、現場で制作する窓をよく設計します。

湿気の多い季節には、木が膨れてちょっと開けにくくなったりすることもあるけれど、ハンドルをひねって窓を開けること自体がちょっと特別のことのように思える感覚は、アルミサッシでは得られないものです。

窓を開けた先にはどんな眺めになっているといいかな。そんなことを考えながら、間取りや窓や庭について思いを巡らせるのは楽しい時間です。


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