ちょっと映画の話の続きを・・・
映画の楽しみ方は人それぞれですが、ぼくの場合は、ストーリーよりも映像の方に気持ちが向かいます。
ストーリーはなんだかそのうち忘れてしまうのだけれど(笑)、印象的な映像は、いつまでも記憶の奥底で明滅しているのです。
アラン・タネール監督「白い町で」は、ぼくにとってそんな作品でした。
なにかの本でたまたま知って、興味本位で観てみたマイナーな作品です。
ストーリーはもはや覚えていませんが(笑)、たしか、あてもなくリスボンの街にたどり着いた中年のオジサンが、8ミリカメラを片手にリスボンの街をさまよい歩くというもの。
その手ブレしながらの映像が、リスボンという街のもつメランコリックな雰囲気を引き出しているようでした。
リスボンの街を舞台にした映画はいろいろとあるのでしょうし、有名なところではヴィム・ベンダース監督「リスボン物語」など、キャストも豪華で映画としては上出来なのだと思います。
でも「白い町で」という映画のもつ寄る辺なさのような感覚は、不思議な余韻をもたらします。
象徴的であったり、暗示的であったり。
映像を見ながら、そんなことをふと感じさせる独特の映像美があります。
街を映し出した映像美という点では、ヴィム・ベンダース監督「ベルリン 天使の詩」は、統一前夜のベルリンの退廃的なムードを強烈に放っていて、これも記憶に残る映画です。
その主演はブルーノ・ガンツ。
この映画の何年も前に、「白い町で」で8ミリカメラを片手にリスボンをさまよい歩いた張本人です。
冒頭の写真は昔に、ガンツおじさんを見習ってリスボンの街を旅行しさまよい歩いたときのもの。
漠然と撮るだけでは、メランコリックにはならないものです。