設計図にあらわれないもの

2023-11-22 22:58:13 | 住宅の仕事


建物の設計というのは、つまるところ材料と寸法を決めることにあります。
それが設計図面に記載され、物事の輪郭線として描き表されます。

でも、空間に魅力や彩りを与えるのは、むしろカタチのないもの、輪郭線として描き表されないもの、というふうにも思います。
たとえば、色が剥げて古色を帯びた木のドアの風合い。
たとえば、ロールスクリーンに映り込む木漏れ日のゆらめき。

実体としての姿カタチがないもののなかに、空間の魅力の本質が詰まっている。
建築を設計するというのは、そうしたカタチ無きものに目を向けることなのかなと思っています。

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設計のスケッチ

2023-02-16 22:52:37 | 住宅の仕事


住宅の設計を始めたときの光景。
デスクの上にはトレーシングペーパーに描かれたスタディ・スケッチが積まれていきます。
手には、亡師からいただいたカランダッシュ製のペンホルダー。太いエンピツのようなものですが、とても軽くてスラスラ掛けるのが特徴です。

いま取り組んでいるのは、北茨城に計画中の住宅。周りを自然に囲まれ、そこには古い納屋があります。
その古びた納屋がもつ味わいと、その仄暗い空間のなかに置かれた数々のモノが放つ不思議な趣き。
そんなことを思い返しながら、イメージスケッチを重ねていきます。
間取りを描いているようでありながら、脳裏を去来するのは、その空間に現れるであろう光や影、古いモノの痕跡や記憶など。

少しずつ、これは!という輪郭が見えてきました。
そして磨き続けるのみ。
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紗のかかる光

2022-06-29 22:57:17 | 住宅の仕事


早々と梅雨が明け、6月とは思えない燃えるような夏の日差しが続きます。
写真は埼玉県の新井宿に建つ住宅。このあたりも屈指の猛暑の地域です。
大きな窓ガラスですが、大きな庇で日差しが遮られています。
窓辺にはレース状のロールスクリーンが仕込んであって、それをスルスルと降ろして過ごしているところ。
スクリーンのおかげで、窓から入ってくる光には紗がかかり、室内には程よい翳りが宿ります。
その感じが、なんともいえない安堵感があるのです。



窓辺のラウンジチェアに座って、冷たい麦茶(麦酒!?)でも飲みながら過ごす暑い休日の午後は、ちょっと幸せですね。


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手描きのスケッチ

2021-04-01 22:48:15 | 住宅の仕事


一軒の家ができあがるまでに数多くのプロセスがありますが、そのなかでもとりわけ好きなことのひとつが、スケッチパースを描くこと。
つくろうとする空間の概略の設計図をもとに、コンピューターで3次元の簡易的な線画を描き起こし、あとは、エンピツやペンで手描き。
フルCGでリアルに空間イメージを描くのも当たり前になった時代に、我ながらなんとアナログなことか、と思うのですが、手描きで紙に向き合っている時間が僕にとって大事なのだから仕方がない。
まあ、たいして上手いわけではないのですが(笑)

描きながら、いろいろな想いが頭のなかを去来します。

施主の言った何気ない一言。
最近気に入っている音楽。
昔に旅行で訪れた遠い街の記憶。
幼少期の思い出。
祖父の家でみた鈍く光る古いドアノブの手触り。
そしてまた施主の表情。

集中して描いているようでありながら、ふわりふわりといろいろなイメージが浮かんでは消えていきます。
ヴァルター・ベンヤミンの随想のように、脈略のないようなものがすぅっと合わさってきておぼろげながら図像を結び、あ、これでいいんだ、と思えるようになるまで描いては消し、消しては描いて、徐々に1枚のイメージ画ができあがっていきます。
そんな時間が好きなのです。

家の設計は、つくづく正解の無い世界。



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茶室の流儀

2021-02-09 23:23:34 | 住宅の仕事


最近、茶室のある住宅の設計のご依頼をいただき、茶室の事例を見返しながら、設計の準備をしています。

茶道には流派がありますから、流派ごとに茶室の造り方も特徴が表れます。
特に、細かな金物の取り付け方、向きや位置などに流派ごとの決まり事があって、それを間違えると大変です。
茶室は素材をそのまま現しにした仕上げ方が多いので、間違えるとやり直しが効かないのです。
だから資料を見ながら、よくよく確認をしながら進めていきます。

表千家と裏千家とでは、同じ金物でも上下がさかさまになる、というような。罠にはまったような気分ですね(笑)
でも、そんなふうにして細部によく目を凝らして見るようになるので、細かなものの存在に次第に愛着がわいてくるようになります。
襖の引手ひとつを選ぶことに、楽しみもでてきます。
上の写真は「東山の家」のもの。
抑制された光のなかで見る事物は、それだけで独特の存在感をもちます。

決まり事が多いようでいて、実は自由であるのも茶室の特徴。
何軒か茶室を設計してきましたが、裏千家 又隠席を参照した設計もあれば、コンクリート打放しの茶室もありました。
さて、今回はどんな茶室になっていくのか・・・。

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