庭の完成

2023-03-30 22:56:23 | 藤沢大庭の家


今年にはいってできあがった「藤沢大庭の家」の庭ができあがり、見に行きました。
まだ植えた直後で新芽が吹く前ですが、美しい雑木の庭ができあがっていました。
大きな窓の前に奥行きをもって広がる雑木の株立ち。
庭の高低差を活かした石組みや、モッコウバラの絡むパーゴラなど、変化に富む庭となりました。

庭の緑を楽しむ家にしたい。施主のSさんからは、そんなふうにして家の設計のご依頼がありました。
その主役となる庭ができあがって、ようやく家の完成という感じがします。
それでも後々から今の写真を見返すと、まだ無味乾燥としていたねえ、と思うわけですが。
来年ぐらいには、地面に敷き詰められたバークチップが渋い色合いになり、緑のボリュームと木漏れ日が楽しめるようになるでしょう。

施主も喜んでくださり、ぼくも嬉しいのですが、何気にとても嬉しかったのが、担当スタッフのH君が目を輝かせていたことでした。
木造平屋住宅の設計と現場監理にがっぷりと取り組んだH君にとっての2年弱。いろいろな苦労の賜物ですね、おつかれさま。


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3月の色

2023-03-26 21:33:20 | 日々


東京は桜が一気に満開になるも、雨で見頃が短くなりそうですね。
でも、皇居脇を車で走っていても、雨に煙る桜の風景を眺めると、美しいなと思います。
桜の華やかさが抑えられ、むしろ渋いと感じるような。

これまで3月に旅行をすることが多かったのですが、京都の修学院離宮も3月が似合うなあと思います。
いろいろ撮った写真のなかでも、ちょっと気に入っている一枚がこれ。

池のほとりの橋の欄干と松の枝葉。
こういう色合いは今の季節ならではですね。

枯淡。
無名色。

水はライトブルー。
木はブラウン。
葉はグリーン。
子どもの頃から、着色はそういうイメージが常識と教えられてきたし、実際に季節によってはそうなのでしょう。
だからこそ、そのどの色にも当てはまらない今の3月の色が大好きです。
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本に呼ばれる

2023-03-07 22:52:55 | 




本に呼ばれる、という感覚になるときがあります。
本屋さんで、あるいは図書館で、膨大な本を目の前にしながら、探すというよりも、本のほうから「ここにいるよ!」と声を掛けられるような感覚です。
背表紙しか見えていないにも関わらず、実際に手にしてみると、おお、これは!ということが少なくないのです。本の装丁の雰囲気がぼく自身の波長と合う、ということなのでしょうか。

ある日の二子玉川の蔦屋にて、また、本に呼ばれました。
この日に呼ばれたのは、デンマークの建築家ヨーン・ウッツォン(シドニーのオペラハウスの設計者としても有名です)が自身のためにデザインした、スペイン・マヨルカ島にあるCAN LIS という住宅の写真集でした。
このミステリアスな住宅を紹介した本はこれまでにも幾つも出版されていますが、この日に手にした本は、まさにその場に居合わせているような構図の写真集で、とても心惹かれました。

WEBで建築の写真は多く閲覧できるけれども、1ページずつめくっていく本の「体験」は、なかなか代えがたいものがあります。
1ページずつめくっていくシークエンスのなかに、体験のなかに、新たなインスピレーションが詰まっていように思うのです。

新しい本に呼ばれたことに喜びと感動を覚えつつ、きっとこれから何度も繰り返し見るんだろうなあとワクワクしながら帰りました。
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宮下公園にて

2023-03-02 22:48:48 | アート・デザイン・建築


渋谷の近年の変貌ぶりには驚かされます。もともと渋谷の喧噪はどうも苦手で、訪れる頻度は少ないのですが、最近、渋谷駅近傍の宮下公園に行く機会がありました。
古くからある都市公園ですが、その残余空間のようなスペースは、建築学生の卒業設計のテーマとしてもうってつけで、きっとこれまでかなり多くのデザイン提案があったことと思います。
それが近年リニューアルされ、きっと実際の設計に携わった関係者は、卒業設計のような気分をほんの少しは楽しんだ(?)かもしれません。

かつての宮下公園は、なにか工夫された空間とも呼び難く、なんとか明るく振舞おうと虹色の装飾なんかがあったりするところに、落書きや劣化によって殺伐さが際立っていたように思います。
でも、新しくリニューアルされた宮下公園はショッピングモールやフードコートを併設し、かつての用途や雰囲気とは大きく変わりました。

フードコートの外にあるベンチに出てコーヒーを飲みながらの一息。
目の前には切りっぱなしのネットフェンスや手すり、剥き出しになった配管、ダークトーンの即物的で退廃的なイメージ。
かつては本気の退廃があった場所が、退廃的なイメージを楽しむ場所になったということでしょうか。
デザインは退廃的だけれども、屋外のベンチも座りごごちが良いし、広々として清潔。
街の喧噪も程よく感じながら飲むコーヒーは、美味しいと思いました。
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