「鎌倉山ノ内の家」は、室内の壁や天井をすべて壁紙貼りにしています。これまでは壁や天井の仕上げは左官塗りやペンキ仕上げとすることが多く、人の手で塗られた仕上げ方が「自然」であるように思っていました。
壁や天井は、光や陰影を映し込む背景のようなものとしてイメージすると、壁紙のもつ色や模様が、少し空間の雰囲気のジャマになってしまうのでは、という思いもあったのです。
ところが、「鎌倉山ノ内の家」の建て主は長らく海外で暮らされ、多様な美しい色柄の壁紙をよくご存じで、そうしたものを積極的に使っていこうということになったのでした。
たとえば、個室から廊下を見たシーン。白いペンキ仕上げだけでは得られない、不思議な奥行きとシーンの切り替えが印象的でした。
緑深い窓からの眺めを、壁紙がリフレインしているようです。
たとえば、トイレの小窓からすぅっと入ってくる柔らかな自然光を受けて、木立の白いシルエットが印象的に浮かび上がります。
トイレの壁をまじまじと眺めたことはなかったけれど、意外に身近に感じる壁かもしれません。
こんなところにこそ、壁紙の魅惑が発揮されるように思いました。
いやあ、壁紙の世界も奥深いですね。