自転車事情

2012-06-19 20:18:42 | アート・デザイン・建築

車のスタイルや色にお国柄が表れるのと同じように、自転車にもお国柄のようなものが表れるように思います。

最初にそれを実感したのは、1992年の中国・北京。都市風景が大きく変貌する直前の当時の北京には、ものすごい数の自転車が溢れていました。印象としてはたしか、暗色のものが多く、ブレーキやチェーンカバーのあたりが、かなり即物的な印象で、そう、新聞配達に使われるような「仕事」モードの自転車が多かったような気がします。

今の日本では、いわゆる「ママチャリ」からロードレーサーまで、実に多くの種類の自転車が街中を走っていますね。色もさまざま。衣服が汚れない実用重視のものから、スピードを楽しむものまで、スタイルもさまざまです。

海外旅行に行くと、その国の自転車事情のようなものが、ちょっと気になります(笑) ドイツ・ベルリンでは、とにかく足がつかないだろこれ、みたいな大きな自転車ばかりなのに圧倒されました。同時に、泥ヨケはほぼ100%ついており、ライトも大振りなものがつけられ、荷台がついているものも多かったように思います。色も地味目で、「走る道具」としての質実なスタイルに、ついついお国柄を感じてしまったのでした。ついでに、多くの部分で自転車と歩行車のレーンが分けられており、みんなそれをきっちり守る。自転車レーンをうっかり歩いていたら、通りすがりの自転車の人に「ここは自転車専用だ!!」みたいな感じでしっかりお叱りを受けました。そんなところも、お国柄でしょうか?

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街中を車があまり走れないイタリア・フィレンツェでは、街中を自転車が主役のようにして行き交います。素朴で、どこか柔らかく味わいのある色、カタチ。そんな自転車が多かったように思います。

アルノ川にかかる橋の低い欄干。石造りで幅があるので、上に座っても怖い感じはしません。そうか、欄干は座るためにあったんだ。暮れゆく夕日を眺めつつ、地元のお兄さんが自転車を停めて、携帯でおしゃべり。さしてカッコつけたわけでもない自転車。よく見ると南京錠のカギ。そんなものがしっくりとはまる風土と生活というのは、うらやましいなあと思います。

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石元さんの桂

2012-06-10 16:30:23 | 写真

ずっと行きたいと思っていた、神奈川県立近代美術館での企画展「石元泰博写真展 ~桂離宮1953,1954~」に、会期ギリギリの昨日、行くことができました。

雨。しかも横なぐり。まるでシャワーのようだ。そんな日に鎌倉に来たのは初めてですが、桂離宮は、妙に雨が似合う場所だな、と思います。日本の古建築のエッセンスをとりいれて設計されたこの美術館も、雨が似合う場所、なのかもしれない。ですが、だいぶ古ぼけてしまった新建材で覆われた建物は、雨に濡れて少し物悲しそうにも見えました。

あたり一面、なんとなくモノクロームの抑制された雰囲気のなか、展示室内に入りました。そこには、適度に間合いをあけて淡々と展示される、比較的小ぶりな作品の数々がありました。写真はすべてモノクローム。ゼラチンシルバープリントとの記載がありましたが、この何とも言えない湿度のある質感は、デジカメ一辺倒でちょっと忘れかけていたフィルムカメラの魅力を思い起こさせてくれました。

石元氏の写真は、桂離宮という建築写真を撮るというよりも、ファインダーで切り取られた平面構成を楽しむ、といった撮り方で、ちょっと水平・垂直がずれている作品があるのも、キャリアの初期ならではの、感性優先といったところでしょうか。

ずいぶん時間をかけて楽しく鑑賞しました。この写真群のなかに映っている桂は、現実の桂とは印象が異なるものです。写真家の個性が強く表れた構図、そして光。現実には無い、この小さな写真のなかにしかない桂。

桂離宮にはこれまで数度、訪れたことがあります。印象的だったのは、春先の優しい柔らかい光のなかで見た時でした。陰影も柔らかく、沈潜した何かを感じることができたように記憶しています。

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