緑の回廊

2020-10-26 22:49:46 | 経堂の家


「経堂の家」の現場では、空間のかたちが徐々に現れてきました。
上の写真はダイニングスペース。L型の木製コーナーウィンドウに囲まれて気持ちの良い場所になりそうです。
その外側には、天窓のある広いスペースがあって、そこから屋根付きの通路がずっとつながって・・・。
写真からはわかりにくいですが、ちょっと不思議な空間が連なります。

実はこれ、以前に旅先で見た回廊がイメージの元になっています。
イタリア・フィレンツェにあるサン・マルコ修道院。
フラ・アンジェリコの壁画で有名ですが、そのなかにひっそりと、とても小さな中庭と回廊があります。
中庭には檸檬をはじめ、数々の樹木が育てられていて、それをぐるりと囲むように回廊が巡っています。
ちょうど住宅のリビングぐらいの大きさの空間で、じんわりと居心地の良さが感じられてきます。



「緑の回廊」
そんなイメージがぴったりの愛らしい空間でした。
窓の外には回廊が巡っていて、その向こう側に庭が見える。
そんなイメージを受け取って、遠く離れた極東のこの住宅で、ゆったりとした奥行きを感じる空間になるといいなあと思います。
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和室の造作

2020-10-22 22:26:36 | 大磯の家


現場の話が続きます。今回は「大磯の家」。
大工さんの作業も大詰めを迎えています。
本丸ともいうべき、和室の造作がほぼできあがりました。

杉の磨き丸太に、フスマや障子の枠が別方向から絡んでくる納まり。
図面で描くとあっさりしたものですが、実際に造作するとなると、とても手間がかかります。

それもそのはず、というのも、丸太は根元と上の方で太さが違います。
枠材には溝が彫られていて、それが上下で少しでも位置が狂えば、戸の開け閉てがうまくいきません。



素材がそのまま仕上がりになりますので、失敗はできません。
「間違って切っちゃったりとかないんですか??」なんてバカでヤボな質問を大工さんに投げかけてみたところ、「そりゃ、トリプルチェックだよ!」との答え。
3歩すすんで2歩下がるような地道な調整の果てに、ようやくできあがる造作。
でもできあがったら、あっさりすっきり見えてしまう。
本当に質の高い仕事は、そういうものなのだと思います。

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手起こしの棟上げ

2020-10-20 22:23:00 | 西東京の家


西東京の現場が上棟しました。敷地の状況によりクレーンが使えず、冷たい雨の降る中、人力で1本1本 材木を荷揚げしながらの棟上げ作業になりました。
しかも、登り梁という斜めの構造材が多く、骨組みを組み上げていく作業も難航しますが、無事に組みあがりました。
この住宅は変形した形状の土地に建ち、昨年から施行された「建ぺい率」の緩和規定を受けた計画となっており、斜線制限そのほか法規制を工夫しながらクリアして成り立っています。
設計ではとても苦心しましたので、カタチとなって立ち現れると感無量です(笑)



この数年のなかでも最も複雑な架構の設計となりました。うごめくような屋根面が印象的。
家族の人数からするとかなりコンパクトな家ですが、出窓やロッジア(屋根の掛かったテラス)など、楽しく居心地よく、広く感じる工夫が満載です。
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障子のあるキッチン

2020-10-17 22:42:33 | M's ark


川口市に建つM's ark のキッチン。工業系の地域にあり、周囲環境は雑然とした雰囲気の界隈です。
そんな環境から距離を置き、静かな雰囲気の空間になることを求めてインテリアをデザインしました。

キッチンには窓があり、そこには障子がはめられています。
キッチンに障子!?と思われるかもしれませんが、大きな窓だけれども外部からの視線も気になりませんし、カーテンやブラインドなどを吊るす必要もないので、むしろ実用的でもあります。
障子の紙はアクリルでコーティングされているものを選んでいるので、水拭きもできます。



実際にできあがってみると、しんと静かな雰囲気のキッチンは、凛とした雰囲気も漂います。
赤く見える床はブラックチェリーの無垢フローリング。障子を通して入ってくる抑制された自然光のおかげで、無垢板の質感や、扉の取っ手の輝きが際立ちます。

外への眺めは閉じられているけれども、これもひとつの窓辺の空間かなと思います。
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模型のスタディ

2020-10-09 21:57:19 | 住宅の仕事


住宅の設計が始まると、いくつもの模型を作りながら、あれこれとカタチを考えます。
屋根のかけ方や傾きが変わるだけでも、まったく違う雰囲気になるから不思議なものです。

模型用の白い厚紙を使って作るのですが、白いシンプルな表情を思い浮かべているわけではありません。
模型をいじりながら脳裏に明滅するのは、壁の素材感であったり、そこに映り込む樹木の影であったり、足元に咲く草花であったり。室内に入りこんでくる光であったり。
昨晩、「世界はほしいモノにあふれてる」で見たようなチーズをこのダイニングで食べたら美味しいだろうか、とか。

実のところ、家のデザインといいながら、独創的な姿カタチを追い求めているわけではありません。
模型を覗きながら、その場に求めたい風情を徐々にイメージの中でつかんでいきます。

そのようにしてできあがった家を写真に撮るときには、家全体の姿を雄々しく撮るのではなく、ついつい いま目の前にあるシーンを慈しむようにしながらファインダーを覗いてしまいます。

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