ライブ!

2009-06-29 21:28:32 | アート・デザイン・建築

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僕が講師をしている早稲田大学芸術学校の授業風景からの一コマ。
1年生の授業では、一辺5メートルの立方体のなかに、自然光によって空間・場所を構想するという課題が始まりました。通称「5メートルキューブ」と呼ばれているこの課題は、もう十数年も続いていて、この課題を通して、学生は最初の関門「空間とはなんぞや・・・??」という疑問にぶちあたることになります。

写真の左でガイド・レクチャーをするのは鈴木了二先生。先生の廻りにぎゅっと学生が集まり、ライブ感たっぷりの時間が始まります。P.クレーやE.リシツキーといった画家たちのアートピースや、A.ロース、P.アイゼンマンらの建築作品を、それこそ古今東西を縦横無尽に渡り歩き、そこから喚起される圧倒的なインスピレーションの迫力!一生懸命にメモをとる学生、とにかく食い入るように見入る学生、いろいろな姿がありました。さあ、どのように課題に活かされていくか、楽しみです。もちろん僕も食い入るように見ていた一人ですが(笑)
鈴木了二先生のレクチャーは、建築とはこんなにおもしろいんだということをいつもいつも思わせてくれる、不思議な魅力に満ちています。

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富士の家

2009-06-22 19:50:05 | 住宅の仕事

富士山の懐にある街で、住宅の計画がはじまりました。打合せのため、週末に新幹線に乗り現地へ。
新富士駅で降り外に出ると、そこには大きな富士山が突然ぬうっと!下半分を雲のなかに隠し、街並みとの境界がはっきりとわからない感じが、なにかこう謎めいていて、不思議な佇まいでした。
梅雨から夏場にかけては、雲に隠れてほとんど姿が見える日がないそうなので、ほんとにラッキーな出会いでした。
現地へ向かうタクシーは、富士山に向かってまっすぐ延びる街道をひた走ります。その車中で運転手さんがいろいろな逸話を話してくれました。そのなかで印象に残ったのは、月明かりに浮かぶ、幻想的な夜の富士のこと。そういえば夜の富士の姿は、これまであまり考えたことがなかった・・・。地元の人だけが知る、特別な光景。

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いま計画している住宅は、三家族が中庭を囲むようにして住まう家として計画しました。家の内部はコンパクトで使い勝手がよく、外部にも生活空間がひろがる住宅です。中庭には自然な雑木が植わり、リビングやデッキには穏やかな木漏れ日が美しくひろがるように考えました。葉の揺らぎを感じながら一人で本を読むのにも、集まってバーベキューをするのにも楽しく使える空間になりそうです。
長く住み慣れた家の建て替えですが、ずっとそこに存在してきたようなおおらかさと質感をもった住まいにしてきたいものです。またいずれ、ブログのなかでも紹介していきたいと思います。



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雨の似合う場所

2009-06-15 19:51:04 | アート・デザイン・建築

これから数日、東京は雨続きの予報。雨も、しとしと適度に降る分には風情がありますね。日本の古建築や庭園は、雨が降った方が苔も鮮やかに浮き上がり、美しくなるように思います。建物そのものというより、それを取り巻く外部環境と一体となってはじめて、雨の似合う独特の風情はできあがるのだと思います。
雨の似合う場所。そんなことを考えるとき、ある場所の思い出がゆっくりと頭のなかにめぐりはじめます。所沢聖地霊園。建築家・池原義郎が30年以上も前に手がけた静かな場所。何度となく訪れまたが、昨年のこの季節に訪れたときは、雨でした。

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霧がかった風景のなか、ぼうっと浮かび上がる白い壁。物語を紡いでいくようなシーンの連続と、部分の形。この建築は周囲の環境と一体となってランドスケープとなりながら、そのなかに様々な「暗示」が造形化されて散りばめられています。それを心のなかで掴み取ろうとするならば、そこを訪れる人も、粛々とした心持ちである必要があるでしょう。雨の日には、そのことが感じやすくなるのかもしれません。

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3年目の家

2009-06-08 19:23:07 | 桜坂の家

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「緑と住まい」というような内容でブログが続きましたが、最後にもうひとつ。

先日、オノ・デザインで設計した「桜坂の家」に遊びに行きました。住み始めてから、ちょうど3年ほど経ちました。

こんもりとした緑。

大きな左官塗りの壁。

控えめに開けられた窓。

ようやく、地域の古色ある雰囲気になじんできました。

中にはいると大きなソファのあるコーナーがあって、そこにも素適な窓辺を思い描いていました。

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白い障子がたてこまれ、穏やかな光に満たされた静かな空間。

そして障子を開けると、ジューンベリーの鮮やかな緑に包まれるような空間。

外からの視線も気にすることなく窓を開けて、読書する時間が楽しい明るい窓辺。

3年の間に成長した植栽が、ようやくこの空間を実現してくれました。

都市部の小さな敷地では、うかつに窓を開けるとすぐに外からの視線にさらされ、なかなか落ち着いたスペースがつくれません。家の配置と、窓の配置と、植栽の配置。これらを小さな敷地のなかで、やりくりをしながらあれこれと考え、ようやく居心地のよいスペースができあがるように思います。僕にとっての「居心地の良さ」とは・・・どうやら、静けさとか、秘めやかさとか、そんな風な言葉で表現されるものなのでしょうか。

「桜坂の家」ができたとき、オープンハウスを開きました。多くの方に来ていただいて、それは光栄なことだったのだけれど、今こうしてあるべき姿に落ち着いてきたのを見ると、あの時、あまりこの住宅のことを紹介できていなかったのだろうという悔恨の念もでてきます。なにしろ、できたてほやほやで初夏の太陽のもと、むき出しのまま天日にさらされていたような状態でしたから。

僕の設計する住宅の場合、求める空間の雰囲気が得られるまで数年間、どうやら辛抱強さが必要のようです。それでも、長い時間をかけて味わいを増していく住まいなのであれば、むしろ喜ばしいことなのだろうと思います。

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黒の効果

2009-06-02 16:25:39 | アート・デザイン・建築

「小野さんって、黒い色をよく使いますよね」
何回かこんな言葉をかけてもらったことがあります。幸いにも良い意味で言っていただくことが多いようなのですが、たしかに、僕がデザインする建物には必ず、ガツンと黒い部分が現れることがほとんどです。それは床だったり壁だったり、階段だったりキッチンだったり、表し方はいろいろなのですが、割合と思い切った使い方をします。そういえば、前回のブログの印西爽居の写真でも一部、黒い壁が見えています。今回の写真は、これまでで最も多く黒をつかった住宅「自由が丘の家」の中庭。最近の雨続きのなかで撮った一枚。

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黒い漆喰塗りの壁。同じように黒い漆喰が塗られた列柱。その周囲に広がる緑の鮮やかさ、そして闇。雨の日には特に、独特の静けさに包まれます。きっと全部白く塗られていたら、そんな雰囲気にはならないのかな、と思います。きっと僕が心のなかで大事にしたいと思っている空間の在り方には、どうしても黒い色が必要なのかもしれません。
緑を美しく切り取るフレームとしてだけでなく、どこか暗示的な雰囲気を漂わすものとして。

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