20年ぐらい前だったか、もうずいぶん前のことですが、印象的なテレビCMがありました。
曇天の空から小雪が舞い降りてきて、それを見た男性がいそいそと家路につくところからCMは始まります。
玄関にたどり着き室内に飛びいるや、暗い廊下をどんどん奥へ。
襖をさっと開けると、雪明りに仄明るい一面の障子の姿が現れます。
そっと障子に近寄り、息を呑むようにしてそっと障子を開けると・・・。
当時のパナソニックの高画質テレビのCMだったと思います。
ぼくはその仄明るい障子がつくりだす静けさに、なんだかとても見入りました。
パリでサントシャペル教会の圧巻のステンドグラスを見た時も、脳裏をよぎったのはモノクロームの障子の静謐さでした。
その向こう側にあるものを見えなくし、仄かな音や影だけが室内にそっと入ってくる。
そして同時に、室内にあるものの質感に趣きをもたらしてもくれます。
床板やテーブルの木目が、食器の艶が、料理の湯気が、なにか特別のもののように浮かび上がります。
身近にある、あたりまえのものこそが美しい。
そんなことを気づかせてくれるような気がします。
写真は「片倉の家」より。