いろいろな建具

2022-10-24 21:28:02 | 鎌倉小町の家


「鎌倉小町の家」の現場もいよいよ大詰めです。この日は建具業者さんが製作した建具を運び込み、建て込みが進んでいました。
八畳広間の茶室があるこの家には、和風の建具も多く使われます。
障子、ふすま、にじり口の扉・・・。
現在では建具もメーカー既製品が使われることが多くなりましたが、オリジナルに造られる建具の存在感と風合いは格別です。
削り合わせをして調整しながら、ひとつひとつ丁寧に建具が取り付けられていきました。


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ギャラリーの家

2022-10-15 21:47:30 | 祖師谷の家


今春に完成した「祖師谷の家」は、2階建ての小さな住宅です。家族4人暮らしで77㎡(23坪)、でも空間のつながり方に変化と広がりがあって狭く感じることはありません。
暮らしに必要な広さは、案外ちいさくてよいのかなと思います。

施主のTさんは音楽とアートをお好きなご夫婦。話の流れのなかで、ギャラリーのような家にしたいというイメージが徐々にできあがってきました。
大きな白い壁と、所々に開けられた開口部。窓の数は少ないのだけれども、周囲環境をよく見ながら選び抜いた窓ばかり。窓で切り取った風景も絵画のように家のインテリアの一部になっています。

リビングの小さな吹抜けからは、明るい光が室内の奥深くまで差し込みます。小さな家だからこそ、このような吹抜けが宝物のように感じられました。
身体の延長にあるような ちょうどよいサイズ感のこの空間を、時折思い起こしては心地よい気持ちになります。
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包まれる空間

2022-10-10 22:51:17 | 陶芸家の家


いつも家の設計をするときは、窓辺の空間を大事に設計しています。
内と外のつながりを慈しみ磨きあげるようにして、徐々にデザインが固まっていきます。

「陶芸家の家」のダイニングでは、中庭を囲んで緑が見えるのだけれども、あえて障子を閉めて過ごす時間のことを考えていました。
障子を通した自然光は、光の諧調がとても柔らかくなるように思います。
ダイニングテーブルの上に置かれた作家の器や料理の、その質感と趣きが十分に感じ取れるように。
それを受け止めるダイニングテーブルも、ナラ材の無垢の木でできていて、シェーカー家具のような佇まいです。
そしてそこで過ごす時間が穏やかで安らぎのあるものであるように、という気持ちから、天井はふわりと柔らかいカーブを描いてダイニングを包むようにしました。

ダイニングテーブルが収まるだけのこじんまりした空間ですが、そのぶん落ち着きと親和性が生まれました。
僕がこれまでつくってきた空間のなかでも、とりわけ好きなもののひとつになりました。
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時計塔モニュメント

2022-10-05 22:46:21 | アート・デザイン・建築


JR川口駅前にある「キュポ・ラ」広場に、ぼくが独立して設計アトリエを立ち上げて、初の実作があります。
それは建物ではなく、時計塔モニュメント。
新しくできた広場にあわせて時計塔モニュメントを募るデザインコンペが開かれ、ぼくの応募案が採用され実現したのでした。
鋳物の街・川口を表象するデザインが求められたものでした。柱部分を覆う素材は鋳物で、川口の文字が象形文字のようにして浮かび上がるようなデザインにしました。



案の採用後、実現に向けて主催者側とのミーティングが重ねられましたが、そのなかで、どの方向からも時計が見えるように、という意向を伝えられ、柱の頂部には3つも時計がつくことに。
電波時計とよばれるこの時計は高価で、柱本体の造作に関わる費用も結果的に削られることに・・・。
なにしろ独立当初は、実作を残すことに渇望していて、そんなデザイン変更の流れを受け入れたのでした。

下の写真はコンペ案の模型です。広場の待ち合わせ場所として、人々が時計塔のまわりに集まっているような光景をイメージしていました。
側面に張り出された時計が、レトロなモニュメント感を引き出してくれているようで気に入っていたのですが、これは実現することがありませんでした。でも見てみたかったなあ。




昨年の東京オリンピックの記念イベントの一環として、東京オリンピック1964の国立競技場 聖火台が、鋳造地の川口に凱旋することになり、しばらくこの広場に展示されていました。
あの有名な聖火台に並んで、時計塔が!!
これはちょっと萌えました(笑)

実現するということは、腑に落ちないこともあるけれど、喜ばしいこともあるものです。



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煙るリスボン

2022-10-02 18:35:53 | 旅行記


建築をやっていると、個人旅行でいろいろなところへ見に行きたくなります。
16年前に行ったポルトガル・リスボンは、独立して事務所を立ち上げたばかりでヒマだったこともあって、10月の気持ちのよい季節での旅行でした。

リスボンは新市街と旧市街がはっきり分かれた街です。それまで、アラン・タネール監督「白い町で」や、ヴィム・ベンダース監督「リスボン ストーリー」などで、ノスタルジックな雰囲気に溢れるリスボンの街並みを期待していましたから、空港からの道すがら最初に見たリスボンの新市街の無味乾燥さには、少々がっかりしたのでした。

その足でメトロに乗り、旧市街へ。深い地下ホームから延々とエスカレーターに乗って地上に向かう、タイムスリップしていくような不思議な感覚。
そして投げ出されるように突如地上へ。
そうして最初に出会う風景がこれ。

夕方、煙る街。エレクトリコと呼ばれる市電がけたたましい車輪の軋む音を立てながら走り去っていきます。
この煙、道端で魚を焼いている煙なのです。え、今の時代に道端で魚焼き!? と少々カルチャーショックを受けつつ、遠いところへ来たなあとしみじみ実感したのを覚えています。
匂いや音といった、目に見えないものが意外にも、物事のイメージを決定づけるように思いました。
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