「待つ」空間

2020-04-25 23:38:17 | 富士 家と仕事場


富士市に建つこの住宅は、郊外の風景のなかに、さしたる飾り気もなく即物的な佇まいをもっています。
モランディの風景画のように。あるいはロマネスクの小さな教会のように。
いずれこの土地の前には大きな幹線道路が通るのですが、それと距離を置くようにして中庭のある住宅です。

これから、建物の周りには木々が植えられ、その樹影が外壁の上をゆらめくことでしょう。
そんな風情を待つようにして、この家は建っています。



家の中に入ると、東西に抜ける大きな窓がシンプルにあります。
西側の窓は出窓になっていて、外に木々が植えられると、その緑をとても身近に感じられるようになります。
午後の陽に照らされて、木洩れ日が室内にゆらめくようになるでしょう。
無垢の木の床フローリングと、少しグレーがかった壁と天井に、そんな風情が映り込む。そんなことを思い描いています。



そして、施主の仕事場を兼ねたこの家では、自然光の印象的な窓の部屋があります。
ここには施主が所有する、古い教会から譲り受けた長椅子が置かれる予定。
そんな古い事物を待つ空間。

今はまだできあがったばかりの家に、やがて生活がはじまって、そんな風情が現れるのが楽しみです。
でも、それを待つ束の間の静けさに身を置くのも、建築家としては楽しみな時間です。
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アウトドアリビング

2020-04-19 22:27:49 | 印西爽居


コロナ禍により外出を控え、家にとどまる状況が続きます。
ずっと家にいるなんて、息苦しくてしようがない。それは当然そうなのだけれど、なるべくその時間をよいものにしたい、と思います。

写真の「印西爽居」は、そんなことを考えながらつくった家でした。
施主の仕事の関係で、数日間の自宅待機期間が定期的にある生活でしたから、なるべくその期間を居心地よく過ごせるような工夫、なにかないかな?
そんなところから設計が始まっていきました。
そうしてたどりついたのが、アウトドアリビングという考え方です。文字通り、家の外にもリビングのようなスペースがあること。



室内のリビングはほどほどの広さにとどめつつ、リビングからデッキスペース、そしてそこからタイル敷のテラスへと空間がつながります。
家の中と外を、行ったり来たり。
それは暮らしのなかに独特に変化と気分転換をもたらしてくれます。



一戸建ての家では、建ぺい率や容積率で、土地のなかに建物が建つ範囲は制限されます。
逆に言えば、何も建たない屋外スペースが一定面積だけ必ず残ります。
そのスペースを、たんに通路であったり、余っちゃった・・・という使い方にするのはとてももったいですね。
そんな余白を、ぜひ活きたスペースにしていきたい。
家の計画の際に、屋外のアウトドアリビングを少しでも予算化してプランに組み入れると、家で過ごす時間がまるで変わると思います。
きっとこのコロナ禍のさなかにも、印西爽居のアウトドアリビングは活用されていることでしょう。

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二月堂裏参道の雅。

2020-04-10 22:25:43 | アート・デザイン・建築


最近、いくつかの現場で仕上げ材料の素材や色を決めることが重なり、サンプルを片手に悪戦苦闘しています。
どれもが住宅ですから、もう金輪際 塗り直しはききませんよ、というような匠の素材を選ぶというより、メンテナンスを考慮した素材を選ぶようにしています。
外観でいえば、左官塗りの調子と、隣り合う木部の色合いをどうするか。

枯淡。無名色。そんな境地にたどりつきたいものですが、なかなか。
かつて旅行で訪れた場所の写真などを見返すと、やはり日本の中にも素晴らしいものがあるなあとしみじみ思います。

上の写真は、東大寺二月堂裏参道より。
前近代的な自然の素材を用いて造り、時を味方につけて風化する。
いやあ、うつくしい。
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家をたのしむ。

2020-04-06 21:51:25 | 古木のある家


東京でいよいよ緊急事態宣言が出されることになり、非日常感が増すばかり。
なるべく自宅にいるように。ストレスにもつながっていくようなそんな流れが、少しでも楽しいものであるといいですね。

「古木のある家」は都内の住宅地にある家です。古い木々を残し、それらに面するように居場所を散りばめていきました。
もともと、家での生活を積極的に楽しもう!というお考えの施主でしたので、いろいろなアイデアに溢れた家になりました。
庭に面した大きなデスクコーナー、ハンモックを吊るせるリビング、七輪で焼き鳥をできる土間、こもるようにゴロ寝できる畳スペース、ダークゾーン?なライブラリー などなど。
暮らしを楽しむことが凝縮されたような空間になりました。



写真は家ができあがったばかりの頃。この頃は、なるべく外出を控えるべき、という時が来るとは想像だにしていませんでした。
でもそんな今、この家の真価が発揮され始めたかなあと思います。
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