2014年5月25日(日)、岩手県立美術館(盛岡市本宮字松幅12-3) で開催中 [4/12(土)~6/8(日)] の「生誕100年!植田正治のつくりかた」という写真展を観るために、一関市博物館のバスツアーに参加しました。
植田正治は独特な演出写真により国内外で絶大な人気を誇る写真家で、本展では写真集「童暦」に収録されている30点のモノクロ写真をはじめとして代表作約150点が展示されていました。
引率者から入場券を配布された後は、「自由行動」でしたので妻とも別行動でした。充分に時間があったので、2階の「常設展」も見てきました。
(下)ゆったりとして寛げる椅子があるロビーに、アリスティート・マイヨールの「三人の妖精」像(高さ158㎝)が展示されていました。
マイヨールは、ロダン、ブールデルと並び称されるフランス近代彫刻の巨匠である。ロダンより20年余り遅く生まれた彼はその影響を強く受けたが、ロダンの作品が文学性に富み、苦悩に満ちたものであったのに対して、彼の芸術には地中海に面した町に生まれ育った作家ならではの明快さまた晴朗さが一貫して感じられる。
着手(1930年)から完成まで8年の歳月を要したこの群像は、マイヨール晩年の代表作である。三人の裸婦が互いに手を取り合う調和のとれた形は、西洋美術の伝統的主題である「三美神」(Les trois Graces)の流れをくむが、「三人の妖精」(Les trois nymphes)という作品名からも分かるように、ねらいは純粋に造形的な調和美にあった。彼の彫刻の様式的な特徴は人体への幾何学的フォルムの導入にあり、本作においても三人の裸婦の腕や脚部はほとんど円筒形として、その胸は完全な円錐として捉えられている。マイヨールは若い女性像を常にテーマとしたが、変化に富んだ女性の肉体が幾何学的フォルムに還元される際に生じる緊張感は、作品に充満する溢れんばかりの生命力へと昇華している。(佐々木一成)[岩手県立美術館発行「所蔵作品選(2001年10月6日発行)」より]
(上と下)北側出入り口の方に舟越保武(ふなこし・やすたけ)さんの「道東の四季~春~」と題する彫刻(立像、高さ230㎝)が展示されていました。
舟越保武はこの像を制作した頃からしばしば女性の立像を手がけるようになった。公園や学校など公共の場のためのものであり、モニュメンタルな性格を持つためか、そのどれもが実際の人物より少し大きい。
作者は、自分は立像ばかりで坐像を作ってはおらず、モデルも使ってはいない。これは自分の不精のせいだからと、立像を集めた小さな個展のカタログで打ち明けているが、実際のところは不精なのではなくそうしたいからやっているに違いない。
背筋を伸ばしてすっくと立つ長身の女性像は、彼の造形上の要請の結果であることは勿論であるけれど、若く美しく瑞々しい女性の生命、その、人の生命を永くそこに留めたいと願った姿でもあろう。技巧的な作為を凝らさず、余計な表情も与えない、無意識のうちに求める一つの面影。静かにそこにいる人。そんな印象を抱かせる舟越保武の女性像は、彼の理想と祈りにも似た姿を想起させる。
「道東の四季~春~」は釧路市にある幣舞橋の改築に際して「道東の四季」をテーマに佐藤忠良、柳原義達、本郷 新と共に女性像の制作を委嘱されたときのもので、舟越保武は「春」を担当した。(大野正勝)[岩手県立美術館発行「所蔵作品選(2001年10月6日発行)」より]
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