フィルム現像のタンク、引き伸ばし機とレンズ、バットと周辺機器をセットを処分しました。
実際に仕事で使っていたものですが、デジタル入稿するようになり、使用頻度が激減しましたので、オークションで出しました。
益子のフィルム現像タンクがよい値段で売れて、ほっとしています。フィルム現像をしっかりやろうと思ったら、ここに行きつきますから。LPLの現像タンクではベテランさんでもきれいな現像はできません。構造的な問題なんですから。
昔々、このセットで現像してプリントして、雑誌や広告の原稿入稿したり、写真展の見本を作った思い出のセットです。
引伸機はラッキー90M。
機種としては中級ですが、ようはハサミとなんとかは使いようで、カメラメーカー、写真雑誌の方々、写真展の選考の方々をうならせるプリントを、この90Mでプリントしていました。
引延レンズ2本(ニッコール50mm2,8、80mm5,6)
イーゼル3種類
ネガキャリア(67、66、35、ハーフサイズ、ガラス)
タイマー
精密ネガルーペ
四切りバット4枚
ピンセット、液温度計、ハイポ計
以上のセットです。
35ネガキャリアは内側を削ってあるので、フルフレームがプリントできます。
35mmで全紙以上の大伸ばしには、平面性が必要なのでガラスキャリアにネガを挟んで、67キャリアに装着します。
その際の35mmマスクは自作します。
アナログの世界は機材を買っただけでは使いこなせません。
ピント合わせは、キャビネぐらいだったら、ピントを合わせて、ランプを消し、イーゼルに印画紙を入れて、ゴミが落ちていないかチェックして、露光となります。
35mmから4切り以上へのプリントは、ネガが熱くなっている時と冷たい時では、ネガのカールが影響してピンとの位置がずれます。
通常のキャリアでは、ピントを合わせてランプを切って印画紙のセットに30秒もかかるとピントがずれるのです。
それでガラスキャリアを使うか、通常の素通しキャリアを使う場合、ピント合わせの時と、露光時のピントを同じにしなきゃなりません。
露光のタイミングをとることと、ガラスキャリアを使ってネガのカールを消し去るかどちらかです。
写真の本を読んでも、写真学校に行っても、こんなことは教えてくれません。
何十年のキャリアがなきゃ言えないことです。
仕事上、30年近く写真学校の学生や、有名大学の写真部の写真を見てきましたが、なかなか良いプリントに出くわしたことが少ない。
プロカメラマンだって、某写真学校の講師をされている方のプリントを見ても、、、がっかりすることがあります。
それくらい、アナログのプリントは難しいし、、、素晴らしいものとそれ以外のものの差が大きい。
レンズは2本、ニッコールで十分に素晴らしい引伸しレンズです。
50mm
80mm
どちらのレンズも引伸し機に付けて点灯すると絞値に照明が当たります。
第一線で使っていたレンズです。
イーゼルは国産のLPLをメインで使っていました。
4切りイーゼルが2種類、キャビネサイズ&手札&名刺兼用(これが優れもの)の3つ付属しています。
ユニーバーサルタイプはサンダースが有名でしたが、国産品のLPLのほうが安くて良かった(個人的な意見ですが)。
LPLの4切りユニバーサル・イーゼル。
4枚の羽が自由に動きます。
プロ御用達のイーゼルです。
キャビネ以下用に便利な小さなイーゼルもあります。
裏表で使えてすごく便利なものでした。
使う時は軽いのでテープで動かないように止めます。
全体を開くことも出来ますが、部分開きも出来ます。
大伸ばしする前に大量にテストプリントするときに威力を発揮しました。
露光タイマーは正確なプリントにはマストです。
私は大きな3ダイヤルと、この2ダイヤルを使っていました。
引伸機のランプを点灯すると暗室ランプが連動して消灯します。
分厚いベタ焼き用の押さえガラスです。
写真量販店で販売しているガラスは薄すぎて軽くて、カールしたネガを押さえるには頼りなかった。結局ガラス板を両手で押さえなきゃ使えなかった。
このくらいの厚みがあって重たくないと、強くカールしたネガは抑えられません。
プロの機材は特注品や加工品が多い。
あとはバットとピンセット、液温計とハイポ計(定着液の状態を調べる)です。
良いプリントを作りたかったら、これくらいは必要です。
プリントのオーソリティーの言葉ですよー。
ピント合わせだってコツがあります。
精密なピント合わせに使います。
フィルムの銀粒子を見てピントを合わせます。
開放で通常は合わせますが、このルーペは絞った状態でピント合わせできます。
どういうことかというと、引き延ばしレンズでも、、、絞りによる焦点移動があるからです。撮影レンズでもズームレンズには焦点移動する奴がありますが、単焦点の引き延ばしレンズにも、、、あるんですねーーー。
知らないということは、ある意味でハッピーですよーーー。
このルーペで見ると、ダメ引伸しレンズの絞り焦点移動が、よくわかります。
フィルム現像用のマスコのタンクもお付けします。
フィルム現像ではナイコールやLPLのタンクでは現像ムラがどうやってもでます。
マスコのタンクは若干大きくて液量の多いので、フィルム間隔が広くムラが出にくい。
ナイコールタイプはコンパクトなのはいいけど、ムラを消すことはできないので致命的だと思います。
ちまたではナイコールタイプで現像して苦労されている方がいるけど、、、ムラのない完全なフィルム現像は極めて難しい。私だってできなかった。
マスコだったら、素人でもできる可能性があります。
それくらいフィルム現像は難しいものなのです。
昔の白黒プロラボは深さ2m近いタンクで現像していました。
リールに巻かないで、いわゆる吊るし現像です。
普通のリールを使ったら、プロラボ(カラー現像所)だってムラを作っていましたから。
シビアな現像にはマスコは絶対です。
これはブローニ2本タイプ。
35mm2本タイプ。
予備リールが2個あります。
マスコのタンクは、上のキャップを外して液を入れると、リール中心の空洞を伝わって下から一気に液が満たされます。
液の注入が10秒とかかりません。
ナイコールのようにシャワーのように上から降り注いで時間がかかると、それだけでムラができるのは必須です。
デジタル時代になって、現像を始めようとされている方たちは、昔、我々がこりて止めたことをもう一度最初から始めています。
編集者やデザイナーが若いと、完璧にキレイなアナログ写真を知らないので、感激して「いいね」と言ったりしている。
デジタルと違うから失敗することがあって、それが面白くていいね、と言っているのだろうと断言します。
やるなら、昔の先人がやった以上のものを見せてほしい!
これだけあれば現像作業はできます。アナログの現像は科学的な作業です。だから、、、だらしない人はチャレンジしないほうがいいでしょ。それができなきゃ、日本のモノ造りが世界に飲み込まれようとしているのと、同じようにレベルダウンで自己満足だけが残ります。
若い人がアナログをやるならば、超然としたレベルで業界に挑戦してほしい。
強くそれを望みますーーー。
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