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久しぶりに新選組…♪

2019-03-14 09:32:51 | Weblog
私にとっては久しぶりの新選組物です。

               

『総司の夢』 小松エメル箸 講談社文庫
筆者による新選組物は2016年に『夢の燈影』の文庫本が出ています。
こちらは、あまり世に知られていない新選組隊士を採りあげた一話完結の短編集です。
土方さんも近藤も沖田も脇役としてちょこっと登場してます。
今回の『総司の夢』は文字通り沖田総司が主人公の長編。
書店のエンド台に積まれている1冊を手に取って、カバー裏の紹介に目を通す。
俺はね、夢を見たことがないんです。
な、なんか、もの凄く惹かれる一言じゃなぁぁ…。
新選組一番組頭であり、新選組の剣術指南役でもあった沖田総司、じつはよく分からない人物。
大まかな出自と、近藤、土方に従って京に上り新選組の幹部となり、池田屋事件で活躍し、やがて胸を病み、江戸は千駄ヶ谷の植木屋の離れで誰にも看取られることなく絶命する、とそれくらいかな。
土方さんや近藤は写真が残っているから容姿なども分かるし、手紙や遺族の口述なども残っているから人となりやその考え方なども分かる。
でも沖田ってそういうものがないのね。
沖田が美形だったってのは、たまたまテレビや映画で沖田役を美男の俳優が演じたからそういう思い込みが定着しただけでね。
沖田の姉ミツの息子が沖田に似ているとやらなんとやらで描かれた似顔絵をむかし見たことがあるけど、お世辞にも美形とは言い難い。
ま、剣術の天才でありながら道半ばにして病に斃れた薄倖の美剣士、なぁんて確かに美味しい設定だけどな…。
本作では、容姿についての記述はない。
とにかくよく分からない人物。
野心があったわけでもなく、欲があったわけでもなく、虚無的な人物だ。
そんな沖田を丁寧に描いて、最後は沖田が絶命したところで終わる。
小松エメルという作家は、一見明るく分かりやすい表現の下地に重く深い命題を隠すことが上手い作家だ。
読み込んでいくほどに見えてくるものがある。
この『総司の夢』も一回読んで済ませられる作品じゃないなぁ。
そして、単行本の方では『歳三の剣』が近々に発売される。
ってことは来年の今頃には文庫になるはずだから、楽しみ~
コメント
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