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ドルを支えた石油ショック・・・修正ブレトンウッズ体制

2011-03-07 15:32:00 | 時事/金融危機



■ ドルは大丈夫かもしれない!? ■

このブログでも「ドルの暴落」を何度も取り上げていますが。ドルは80円をなかなか割りません。このままドルは何とか持ちこたえてしまうのではないか・・・そういう錯覚にも囚われます。

それでは過去の「ドル危機」を振り返ってみましょう。

■ 1929年の世界恐慌 ■

① NY株式市場で株価が暴落
② 株価バブルが崩壊
③ ニューディール政策でドルを増刷
④ 景気の改善は一過性で「第二次世界大戦」の特需で景気が回復

■ 第二次世界大戦直後・・・ブレトンウッズ体制の確立 ■

① 戦争で大量の戦時国債を発行。
② 戦後、低利の国債を発行して借り換えを実施(1972年償還分まで)

アメリカの戦時国債は新たな長期国債に借り替えられる時点で現金化されています。この際発行されたドルは何処へ行ったのでしょうか?

③ アメリカは低金利政策(2%~2.75%)を実施
④ 基軸通貨となったドルは海外の旺盛なドル需要に吸収される(戦後復興)

■ ベトナム戦争からニクソンショック ■

① 日本やドイツの対米輸出によりドルが海外に大量に流出
② ベトナム戦争の戦費調達の為、大量の米国債を発行
③ 金の準備高がドルの発行額を完全に下回り、金兌換性を維持できなくなる
④ 1971年8月15日 ニクソンが金兌換性を停止(ニクソンショック)
⑤ 変動相場制に移行して、ドルを切り下げる

ベトナム戦争時の国債の大量発行時は、第二次世界大戦の戦時国債を借り替えた国債の償還時期と重なります。アメリカはベトナム戦争を理由に、ドルを切下げて、国債の償還コストを軽減したとも言えます。

■ オイルショックの発生から修正ブレトンウッズ体制の確立 ■

① 1973年、第四次中東戦争からオイルショックが発生
② 10年間で原油価格が10倍になる
③ 原油調達通貨としてのドル需要がドルを支える

■ 双子の赤字とプラザ合意 ■

1980年代はアメリカの敵は旧共産圏から、経済成長著しい日本へとシフトします。

① 貿易赤字と財政赤字がアメリカを苦しめる
② プラザ合意で円が240円から120円まで切り下げられる
③ 円高を抑止したい日本がドルとアメリカ国債を買い支える

アメリカは基軸通貨のメリットを最大限に発揮して、ドルを刷り続け世界の消費を引き受けます。一方、輸出国は米国債購入でアメリカにドルを還流します。
日本は満期が来た米国債も、新規に国債を買います事でアメリカにドルを還流し続けます。

■ 金融革命と高金利政策、そしてリーマンショック ■

① 金融工学によって「詐欺金融商品」を世界に売りまくる
② 高金利によってアメリカに資金を集める
③ リーマンショックによってアメリカ経済が危機に陥る

サブプライム危機によってブレトンウッズ体制から修正ブレトンウッズ体制と続いたドルの独占支配に陰りが生じています。

■ オイルショックよ再び?? ■

ニクソンショックによって揺らいだドルの信頼性を支えたのは、石油決済通貨としてのドル需要でした。オイルショックによって原油価格は10年で10倍跳ね上がりました。

現在の原油価格をそれよりも高く、120ドル/バレル程度です。
不景気で原油需要が伸び悩む中での120ドルは異常です。
需給バランスから類推される原油価格の適正値は40~50ドル程度でしょう。
現在の原油価格はドルの乱発によって、不当に吊り上げられて価格です。

しかし、原油価格が下がれば過剰に供給されたドルは行き場を失います。ドル暴落の危険性が高まります。

「オイルショックよ再び」と願う者が居ても不思議ではありません。

リビアの石油輸出がストップしても、世界の石油の需給に大きな影響は出ません。サウジアラビアの余剰生産力がそれをカバーしてしまうからです。

一方、サウジアラビアに危機が及べば、世界は無事ではいられません。原油価格は200ドルを目指して一気に上昇し、ドルも産油国に吸い上げられて行きます。

■ 欧州にボディーブローの様に効く中東危機 ■

欧州各国の金融機関は中東への投資も多く、中東危機による中東の株式市場や金融市場の混乱は欧州経済にボディーブローの様に効いてきます。

中東の危機の拡大と長期化を最も恐れるのは欧州各国でしょう。

さらには原油高はインフレを誘発し、各国は金利を引き上げざるを得ません。欧州中央銀行は来月にも金利を引き上げる予定です。

金利引き上げは、未だダメージの深い欧州経済の復活を阻害します。

■ 世界がドルを見放す日 ■

表面的にはドルに有利に見える中東危機ですが、原油インフレの影響を最も受けるのはアメリカ自身です。

アメリカ経済は石油をがぶ飲みします。原油価格の高騰は、全ての物価上昇につながります。インフレ率の上昇は金利の引き上げに発展し、瀕死のアメリカ経済にトドメを刺します。

ただでさえ失業にあえぐ米国の庶民がどこまでこの状況に耐えられるでしょうか?

後は暴動という形でアメリカが内部から崩壊するか、QE3へと突き進むFRBに市場が引導を渡すのか、いずれでしょう。

尤も、借金帳消しで世界経済を道連れにしたいアメリカの支配者達は、ニクソンショックの様に突然オバマショックを発表するかもしれません。

米景気は6月頃から急速に悪化し、恐怖の8月15日あたりが・・・。
悪夢とは繰り返されるものなのです。