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パンドラの箱はとっくに開いている・・・燃料貯蔵プールは蓋の無い原子炉

2011-03-25 12:34:00 | 福島原発事故


■ 大量の放射線物質が放出された ■

3号機の水素爆発の映像を見た時に凡その想像は付いていましたが、福島原発からは既に大量の放射性物質が放出されたようです。

ロイターは今朝程、「福島原発からはチェルノブイリの50%の放射性物質が・・・」的な見出しで、下記のニュースを伝えました。しかし、社会的不安を煽ると判断したのあ、タイトルが「チェルノブイリを下回る・・」に変更されています。

<ロイターから引用>

「福島原発の放射性物質、チェルノブイリを下回る=オーストリアの研究所」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20220820110324?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29

オーストリア気象地球力学中央研究所は23日、福島第1原発の事故後3─4日間に放出されたヨウ素131とセシウム137の量が、旧ソ連チェルノブイリ原発の事故後10日間の放出量の約20─50%に相当するとの試算を明らかにした。

 日米の測定結果を基に算出した。

 同研究所によると、事故後3─4日間のヨウ素131の放出量は、チェルノブイリ原発の事故後10日間の放出量の約20%。

 セシウム137の放出量は、同約50%に達する可能性があるという。

 フランスの放射線防御原子力安全研究所(IRSN)は22日、福島原発の事故で漏えいした放射性物質の量はチェルノブイリ事故の約10%との見解を示している。 

 チェルノブイリの事故では原子炉が爆発したが、福島原発の事故では放射性物質が比較的ゆっくりと漏えいしている。

 一方で、放射性物質が陸上に拡散したチェルノブイリとは異なり、福島原発の事故では放射性物質の多くが太平洋上に飛散しており、両事故の比較は難しい。

<引用終わり>

■ パンドラの箱はとっくに開いている ■

ここ何回かで「圧力容器の空焚き」について検討してきました。
運転停止直後の原子炉内が一番再臨界事故の確率が高いので、その危険性について、自分なりに安心したかったからです。
再臨界事故が起れば、6基の原子炉が放置されれば、甚大な被害と経済の破綻は免れ得ません。

しかし「放射能物質の放出」という観点からは、パンドラの箱は既に開いています。

① 1、3号機の水素爆発による建屋の損壊
② 4号機の火災による建屋の損壊
③ 2号機格納容器下部の損傷

これらの事態が発生した時点で、福島第一原子力発電所は「放射性物質を閉じ込める」という機能を喪失しています。

■ まさに開かれた炉心の使用済み燃料プール ■

再臨界の危険性から、原子炉本体に注目が集まります。
しかし、上部構造の吹き飛んだ使用済み燃料プールは、圧力容器の蓋を開けた状態と変わりありません。

違いは、温度が高いか低いかです。

4号機の火災事故のは、多分、地震による燃料プールの亀裂による漏水が原因だったでしょう。1500立方メートルの水を3日やそこらで空にする程、使用済み燃料棒の発熱は大きくないはずです。

しかし、水を喪失して燃料棒が露出すれば事態は違います。露出された燃料棒から発する崩壊熱は燃料棒の表面のジルコニウム合金を高温にし、水による酸化を一気に加速させたでしょう。もし、燃料棒の溶融が起きていれば、再臨界の危険性は原子炉と変わりありません。

火災当時、4号機は蓋の開いた原子炉そのものとなっていたのです。

アメリカが80Km退避を勧告したのは、「開放された原子炉=4号機の燃料プール」での再臨界を恐れたからです。

自衛隊と消防の決死の放水で、4号機の最悪に事態は回避されました。
まさに、日本が救われた瞬間です。

■ 3号機の燃料プールが気になる ■

私が今最も気にしているのは、3号機の燃料プールです。3号機の水素爆発は1号機のそれと比べても威力のあるものでした。

白煙と共に、黒煙も立ち上りました。
2mのコンクリート壁を粉々に粉砕する規模の爆発が直近で発生して、3号機の使用済み燃料プールは無事だったのでしょうか?

あの黒煙は粉々に粉砕された、使用済燃料棒だったのではないでしょうか?

幸いな事に、3号機爆発時の風は陸から海に吹いていました。私は海に向かってたなびく爆煙の映像を見ながら、ひそかに胸を撫で下ろしました。

■ 当分は蓋の開いたままの原子炉 ■

福島第一原子炉区発電所からどれだけの放射性物質が放出されたかは、今後の詳しい調査のい結果を待ちたいところです。

しかし、福島原発では、3号機と4号機の燃料プールに大量の放水が続行され、その水は地中に浸透したり、太平洋に流れ込んでいます。

プールの亀裂を修理し、配管を修理しなければ、3号機、4号機ではこのような放水が数ヶ月から1年程度継続するでしょう。

■ 依然、一番の不安要素は圧力容器 ■

原子力保安委員会は昨日の会見で、「炉心の設計耐圧力は5気圧で、現在は3気圧なので問題は無い」と発表していましたが、5気圧の耐圧設計は格納容器の事です。圧力容器は通常運転でも70気圧の圧力が掛かります。

格納容器内の気圧を発表しながら、耐圧は格納容器の数値を発表する原子力保安委員会と東京電力に、国民に本当の事を知らせる誠意は微塵も感じられません。


当然彼らは、放出された放射性物質の量についても、本当に事を伝えていない可能性があります。

米国政府から提供された無人偵察機、グローバルホークの映像やデータすら、日本政府は公開していません。これは、公開したくても公開できないものが写っているからと勘ぐられても仕方がありません。

圧力容器が空焚きだという指摘が、原子力の専門家からも出てきました。

<読売オンラインから引用>

1号機の炉心、一時400度に…燃料棒露出続く
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110324-OYT1T00217.htm

原子炉内の温度が、一時400度まで上昇した福島第一原発1号機に関して、東電は23日未明から仮設ポンプで、海水の注水量を増加、冷却作業を進め、午後6時現在で温度を306度まで下げた。


 しかし、燃料棒は水面から露出したまま高温になったとみられ、圧力も上昇し、炉内の状態は不安定なままだ。専門家も炉心の一部が溶けた可能性があるなどとし、十分な警戒が必要としている。

 元原子力安全委員の住田健二・大阪大名誉教授(原子力工学)は、「同じように原子炉内に注水し続けている2号機の温度(約100度)と大きな温度差があるのが気になる」と指摘。「炉心の一部が溶け、炉内が高温になったと考えられる。圧力容器を溶かすほどではないが、炉内が落ち着いていない。温度は今後、急上昇する危険性がある。細心の注意が必要だ。最も重要なのは、炉の近くで中性子線の有無を確認し、核分裂反応が連続して起きる臨界がわずかでも起きているのかどうかを知ることだ」と話す。

 「異常な高温状態だ」と話すのは杉山亘・近畿大原子力研究所講師(原子力安全学)。約70気圧になる通常運転中でも水温は280度程度にとどまるとし、「冷たい水を高温の原子炉内に入れると、(原子炉につながる)給水配管が急な冷却で、破損するおそれもある」という。

 宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)は「原子炉の上部と下部で同じ約400度を示したのは、燃料の上部が冠水していないというより、水がほとんど入っていないのではないか。圧力容器を壊すような数値ではないが、深刻な状況が続いていると言える」としている。

(2011年3月24日09時23分 読売新聞)

<引用終わり>

■ 今政府がしなければい事 ■

今政府が一番取らなければならない対策は、30Km圏内からの自主避難勧告と、50Km圏内の子供と妊婦の自主避難勧告です。

「強制退避」は影響が大きくてハードルが高いならば、「自主避難」という形で住民に危険を知らせるばきです。

■ 戦いは始まったばかり ■

「蓋の開いた原子炉との戦い」は始まったばかりです。

既に、配管や循環系や燃料プールの被害が甚大な原子炉を、通常の手法で復旧させる事は不可能です。

現在の様な、放射線被爆と戦いながらの注水作業が今後、数ヶ月から1年は続いていく事でしょう。

東風が吹けば、陸側に放射性物質が運ばれますし、台風が到来した時の安全確保など、まだまだ出口の見えない問題が山積です。

■ 国外のニュースに注意を払うべき ■

アメリカは今回の事故の重大性を、日本人以上に重要視しています。

ニューヨークタイムスは今回、多少煽りが多いようですが、今後の原発問題については私と同様の見方をしています。


http://www.nytimes.com/2011/03/14/world/asia/japan-fukushima-nuclear-reactor.html?_r=1

<要約>

日本とアメリカの専門家によると、福島第一原発の事故による放射線物質を含む蒸気の放出は、今後、数週間から数ヶ月は続く可能性があるという見解を示した。

福島第一原発では、2基の原子炉の炉心が完全に炉心溶融を起こしている。日本の政府関係者は、2基の原子炉の炉心溶融を「部分的なもの」と説明し、施設の外で測定したという放射線量も低い値を報告している。しかし、アメリカ国防総省の職員によると、原発から60マイル(96.6km)も離れた場所の上空を飛行していた軍のヘリコプターから、放射性物質であるセシウム137とヨウ素121を検出した。

第二次世界大戦の最後の数日に、連続して核爆弾を落とされた恐怖が国民と国とに重くのしかかっている日本では、政府は国民に対して「これから数ヶ月も放射性物質を排出し続けることになる」という衝撃的な報告は言いにくいだろう。

しかし、現在、日本の技術者には選択肢はほとんどない。ダメージを受けた炉心は、海水などで冷やし続けなければならず、その間、放射線物質を含む蒸気を大気中へと排出し続けなければならない。これは、1年以上も続くかもしれない。この期間、避難している何万もの人たちは自宅に帰ることはできないし、内陸に向かって風が吹けば放射線物質は都市部へと運ばれる

■ 本当の事を伝えて、正しい助言を ■

事故原発の状況について、もし東電や政府の発表が正しいならば、問題はありません。

しかし、パニックを恐れて事態の深刻さを隠しているようならば、被害が不用意に広がる結果しか招きません。

「被害の大きさ」によって日本が失うであろう経済損失より、「政府の隠蔽」が招く国際的な信用喪失の方が大きいはずです。

放射性物質は風に乗って、全地球レベルで拡散していきます。
日本がチェルノブイリの時の旧ソビエト連邦政府と同じ過ちを犯していない事を祈っています。