■ 娘が看護師になりたいと言い出したら? ■
娘が看護師を目指すと言い出したら
私は考え直す様に言います。
病院や介護施設の経費の多くは人件費です。
現在でも看護師の人件費削減の為、
多くの病院で派遣看護師を利用しています。
しかし、医療の現場はハードワークで、
派遣看護師もなかなか定着しないのが実情の様です。
■ 崩壊する医療保健制度 ■
一方で国は保健点数をどんどん削減しています。
世界最高と言われる日本の保健医療制度は、
現場の医療機関の身を削る様な努力で成り立っています。
しかし、今のままでは医療保健の崩壊は確実で、
医療機関はさらなる削減を迫られます。
■ 外国人看護師を受け入れたらどうなるか ■
現在はコメのミニマム・アクセスの様に、
外国人看護婦は受け入れていますが、
実際には日本語による試験の厚い壁に阻まれています。
選挙の集票機関である、看護協会や、医師会が反対しているので、
外国人看護師は事実上受け入れていません。
しかし、地方では病院の経営がどんどん破綻しており、
何れは外国人看護師に門戸が開かれる事は必至です。
当然医療ミスを防ぐ為に、医療現場では英語が公用語化し、
医師達の英語力もさる事ながら、
日本人看護師の英語力が要求される様になります。
英語が出来る看護師は、管理職として重宝されますが、
英語が出来ない看護師は、
同僚の外国人看護師とコミニュケーション出来ないので、
淘汰される様になります。
大都市のブランド病院では、スキルの高い日本人看護師が活躍し、
地方都市の小さな医療機関では外国人看護師と、
それと同等の給与で働く日本人看護師に支えられる事になります。
看護師は介護師よりも専門性の高い職業です。
看護師のミスから医療過誤が発生する事もあります。
さて、外国人並の低賃金で、日本人の看護師が満足するでしょうか?
多分、離職者が続出し、モチベーションも低下します。
一方、外国人介護師には日本の給料は魅力的です。
そこそこ住みやすい寮に住めれば、さらにハッピーです。
彼ら(彼女ら)は、持ち前の言語能力の高さで、
患者とのコミニュケーションは、直ぐにスムーズにこなすでしょう。
医者や同僚との指示やコミニュケーションは、
母国語の英語で行えば間違いが無いので、
彼らは、日本で日本人以上に仕事のスキルを高めて行く事になります。
■ ブランド化する医療 ■
日本人医師、日本人看護師を揃える病院はブランド化するでしょう。
ブランド病院は、保健医療では採算が取れないので、
混合診療や、自費医療の方向性に大きく舵を切ります。
■ TPP導入で拡大するのは、国内の格差 ■
TPP導入の結果国内に生まれる所得格差は、
そのまま医療などの社会保障の格差となって私達にはね帰って来ます。
しかし国家財政破綻や競争力維持の観点からは、致し方無い事とも言えます。
結局、鎖国するか、スイスやシンガポールの様にある産業が突出して、
それが国を支える様な産業構造でなければ、
グローバル化による先進国内の貧困の発生は避け得ない事柄です。
グローバル化の一面は、「国家 VS 国家」という従来の対立が、
「都市 VS 都市」に変化する事象であるとも言えます。
「経済的に競争力を持った都市」と、それに付随する「その他の地域」というのが、
今後の国家の形とも言えます。
香港やシンガポールなどの都市国家は、この戦いでは有利です。
一方、「その他の地域」が大都市にぶら下がる日本などは不利な戦いとなります。
■ 世界はとっくにグローバル化しており、制度が追従していないだけ ■
既に世界は、日本だ、中国だ、アメリカだなどと言う事自体がナンセンスなています。
アジアの国々の人々は、既に、国境を軽々と超えて仕事をしています。
日本に居ては、なかなか分からない事ですが、
飛行機で1~2時間で移動出来るアジアの諸都市を往来する事は、
新幹線の国内出張程度の費用と時間しか掛かりません。
インドの建設作業員なども、出稼ぎ感覚で世界各地に働きに出ます。
フィリピン人の看護師や、マレーシア人のメイドなど、インド人のIT技術者など、
世界の労働市場は日本を尻目に、とっくにグローバル化しています。
貿易も世界が自由化の方向に舵を切れば、
一国が鎖国状態で関税を掛け続ける事は、公平さを欠きます。
余程、政治的に上手く立ち回らなければ、
報復関税によって、輸出産業は、大きな痛手を受ける事になります。
■ TPPに参加せざるを得ない状況 ■
例えば、仮に日本がTPPに参加しなかった場合、
アメリカが日本の自動車輸出に200%などという報復関税を掛ける事は充分に予想されます。
当然、日本はWTOに提訴しますが、
WTOの決定が1年も引き伸ばされてば、
日本国内に輸出用の自動車工場は存在しなくなっているはずです。
世間の大多数は、「TPPに参加すべきで無い」という意見ですが、
日本が鎖国して、輸出入をストップしない限り、
「自由貿易」という世界の潮流には、抵抗出来ないのです。
「参加する」「参加しない」の問題では無く、
「参加した場合」、どの産業を守って、どの産業を見捨てるのかの問題となっています。
■ 世界のフラット化は、国内のフラット化では無い ■
現在の世界的な金融破綻は、グローバル化と地域主義の変換点において
当然発生する問題なのだと私は理解します。
過剰な金融資本主義の暴走を生み出したのは、
世界の格差であり、フラット化された世界では、金融はそのエンジンを失います。
後50年程は、アジアやアフリカなどの開発の遅れた地域が、
世界のエンジンとなりますが、その後は世界は急速にフラット化し、
活力を失ってゆきます。
成長力を失った世界を、「平和」と称します。
太平の江戸時代は「平和」でしたが、徳川幕府は、
成長の限界に到達して、崩壊しました。
現在の日本は「平和」と呼ぶに相応しい社会ですが、
「成長力」は著しく低下しています。
「日本人」という枠に囚われなければ、
近隣のアジアの国民は大変エネルギッシュで、
閉塞的な日本の社会に活力を与える要素となります。
「世界のフラット化」は決して国内や地域のフラット化と同義ではありません。
■ 何をどうやって守るのか? ■
TPPによって開放去れた市場と労働市場は、
日本にとって決して悪影響だけを持つ訳ではありませんが、
一方で、旧来の枠組みの中で「守られてきたもの」は、徹底的に破壊されるでしょう。
ですから、日本の田園風景を守りたければ、「農業特区」の様な形で守らなければいけない。
大田区の町工場を守りたければ、これも「もの造り特区」として守らなければならない。
古い街並みを観光資源としたいならば「景観特区」として守らなければならない。
「特区」と一言で言っても、現在の名前だけの「特区」は、ほとんど実績を上げていません。
例えば「農業特区」一つにしても、大規模農業を支援する「特区」と、
「自給型農業」を支援する特区とでは、その政策は180度異なります。
「特区」に指定されて、税制や法制の優遇を受け、
さらには補助金を貰おうなどという従来の考え方では、
決して成功する訳がありません。
■ 特区という「独立国」 ■
「特区」とは1種の「独立国」であり、防衛や災害援助以外は、
独立独歩で運営するくらいの、意気込みが必要でしょう。
例えば、「自給型農業特区」を設立したならば、
補助金無くしてこの社会を維持出来なければ意味がありません。
「年金」も「医療保健」も現金収入による税収が見込めないので、
諦めるしかありません。
これは1種の「鎖国」状態で、これを貧困と考える様なら、
この特区に住む事は不可能です。
例えば、親が望んで「自給型農業」を営んでも、
子供は当然都会に憧れて流出して行きます。
ですから「自給型農業特区」を作るならば、
家族制度や土地の所有にまで踏み込んだ制度設計が必要になります。
これは日本の国内法と徒然矛盾しますから、
日本の中に「独立国家」を作る覚悟でなければ成立しません。
家族の概念も大きく変えなければ成りません。
従来は子供た年老いた親の面倒を見て来ましたが、
地域で老人の面倒を見る必要が生じます。(限界集落では既にそうなっていますが・・・)。
土地は個人の所有では無く、共同体の所有。耕作されなくなった土地は、
外部から新たに特区入りを希望する「入植者」に公平に分与され、
富の集約が極力発生しない様にする・・・。
当然、入植者は、相応の地域貢献の対価として、
老後を保証される訳で、特区入植者には年齢制限を課すべきで、
45歳とか、50歳が、「若い労働力」としての価値を辛うじて持っているかと思われます。
「原始社会主義共同体」の様な形で無ければ
「自給型農業特区」は成り立たないのかも知れません。
■ なし崩し的に進む変化 ■
池田信夫氏の主張する改革とは、かなりダイナミックの変化で、
池田氏の最近の論調は、「変化を拒絶する日本の末路は、緩慢な衰退」だそうす。
私も全くの同感です。
変化を拒絶する生き物は、進化の過程で淘汰されます。
多分、政府は国内の論議も無いままに、
TPPのテーブルに付くでしょう。
日本にはその選択肢しか無いからです。
もし、TPPを拒否するならば、
東アジア自由貿易協定でも立ち上げて、
主役をアメリカから、中国に変えるぐらいの反抗しか出来ないでしょう。
一度TPPのテーブルに着いてしまったら、
日本の事ですから、ズルズルと不利な条件で条約を批准してしまうでしょう。
そして、今のままでは、なし崩し的に市場が開放され、
多くの農地が耕作放棄され、多くの老若男女が失業します。
■ 崩壊と再生 ■
私は池田氏の言われる事が良く分かります。
論理思考に重きを置く池田氏は、
「そんな事入ったって、父ちゃんが失業したら困るじゃないか」という事に
耳を傾ける事はしません。
「父ちゃんの失業」は、遅かれ早かれ訪れる事態です。
街から「牛乳屋」が消えた用に(最近復活してますね)
社会は絶えず変化しており、この変化こそが「経済成長」なのですから・・・。
A)「変化を拒絶して、なし崩し的な変化に甘んじる」
B)「積極的に変化を望んで、戦略的な改革を望む」
C)「世界経済崩壊による、強制リセット」
どの方法にも、メリット、デメリットは存在しますが、
私達には選択権は与えられていません。
但し、対策と心構えは出来るはずです。