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日本は内需国か?・・・内需とは外需によって生まれるのでは無イカ?

2011-11-08 05:33:00 | 時事/金融危機
■ 日本は「内需大国」? ■

TPPや円高の議論の中で「内需」が話題になっています。
「日本は内需大国なのだから円高はメリットだ」
「15%しか無い外需を守る為に、85%の内需をTPPで犠牲にする」 etc・・

数字的には日本はアメリカに次ぐ世界第2位の「内需国」で、
輸出などの「外需」がGDPに占める割合は15%程度です。

<輸出のGDPに占める割合 ・・・ 2006年>

アメリカ   7.9%  (GDP 131,947億ドル)
日本    14.8%        43,664
イギリス  18.7% 23,954
ドイツ   38.7% 28,943
中国    36.6%        26,447
韓国    36.7%        8,874
シンガポール 205.8%        1,319 

2006年の古いデータしか見つからなかったのですが、
日本のGDPはドイツの1.5倍ですが、
外需依存度はドイツの半分以下である事が分かります。

■ 内需とは? ■ 

国内で「もの(財)」や「サービス」の対価として
人から人の手にお金が渡る事で内需は生じます。

農家が生産した原価50円の大根を
農家の庭先の100円野菜で購入すると内需は50円拡大します。
それをスーパーで200円で購入すると内需は150円拡大します。

私達が土地や家を購入する行為も内需としてカウントされます。
日本の地価は高く、内需の拡大に貢献しています。

確かに日本の内需はアメリカに次ぐ規模ですが、
多少水増しされている感がします。

1) 複雑な流通経路による価格上昇
2) 「談合」によるコストの上昇
3) 高い土地コスト

これらの高コスト体質により、日本人は内需の規模に比べて
「生活が豊か」という実感に乏しい様に思えます。

■ 内需を生み出すもの ■

日本は資源の乏しい国なので、
私達の身の回りのモノの原材料は輸入に頼っています。
食料品の多くも、輸入に頼っています。

原材料を輸入する為には「外貨(ドル)」が必要です。
外貨を獲得する方法には、主に次の3つの方法があります。

1) 製品を輸出する(貿易収支)
2) サービスを輸出する(サービス収支)
3) 海外へ投資して利息を得る(所得収支)



日本は貿易立国と言われる割には、
貿易黒字よりは、所得収支の黒字の方が大きい事に驚きます。

ちなみに貿易収支の内訳は2010年は次の様になっています。

輸出   67.8兆円
輸入   62.4兆円
貿易黒字  5.3兆円

一方、所得収支の内訳は次のグラフの様になっています。



■ 円高はメリットか? ■

経常収支の内訳を見ると、日本は既に資産大国で
資産運用による利益の方が、貿易黒字よりも大きい事が分かります。

さて、円高は日本にとってメリットかと問うた時、
所得収支においては、為替差損が大きくなる円高はデメリットです。

貿易においても、輸出額が輸入額を上回っているのですから
円高はデメリットです。

円高による輸入物価下落が私達の生活を楽にするという説もありますが、
物価下落以上に、空洞化によって職が失われるのですから、
やはり円高はデメリットです。



■ 強い通貨を持つ国「アメリカ」 ■

ドル安とは言え、ドルが世界最強の通貨である事は疑いはありません。
アメリカの現在の姿を見れば、
円高をメリットにするヒントがあるはずです。

1) 繊維産業など単純な製造業が衰退する
2) 鉄鋼や造船などの重工業が衰退する
3) 家電などの電気産業が衰退する
4) 自動車産業が衰退する
6) コンピューターの製造産業が衰退する

アメリカの製造業は、創造と衰退の歴史です。
一方で、衰退しない産業もあります

1) 軍事産業の技術力は世界一
2) 航空宇宙産業も世界一
3) コンピューター・ソフト産業も世界一
4) ハリウッド・映画などコンテンツビジネスも世界一
5) 金融産業も世界一

アメリカの産業は強いドルでも十分な輸出競争力のある
軍事や航空宇宙産業や、コンテンツビジネスに特化しています。
あるいは、資本効率の最も高い金融にシフトしています。

日本は自動車産業など当然、新興国に市場を奪われる産業ベースで
円高の影響を考えるので、「円高=デメリット」となりますが、
円高でも輸出競争力のある産業を生み出せば、
円高は外貨獲得に有利に働きます。

金融においては、投資をする時には「円高」で、
回収をする時には「円安」が有利です。
ドルは正にこの典型で、
プラザ合意など投資を回収するタイミングで
「ドル安」を仕掛けてきます。

■ 外需が生み出す内需 ■

資源の少ない日本が外需依存になるのは、
外貨を稼ぐ為に必要な条件です。

所得収支の黒字も元をただせば、
輸出による資本の蓄積が生み出したものです。

現在の日本の産業構造で、外需が減少する事は、
国内の部品産業や素材産業などの需要が減る事になり、
内需も比例して縮小します。

円を増刷して内需を喚起する方法もあります。
これが一番簡単な円安誘導の方法でもありますが、
今度は金利上昇による財政負担の上昇が問題になります。

「イタリアの国債金利は7%で日本は1%だから大丈夫」
と言う人は、小学校から算数をやり直しです。

1%の金利は簡単に2%になりますが、
そうすれば国債の金利負担は2倍になります。
3%になれば3倍、4%になれば4倍です。
5%の金利が7%になるのとは影響が大違いです。

現在でも財務省が各金融機関に割り当てして
何とか消化している日本国債を、
これ以上増発する事にはかなり勇気が要ります。

■ 所得収支は実体を反映していない ■

日本は戦後、せっせと輸出に励み
貯蓄を膨らめて、それを海外に投資しています。

私達が直接海外に投資していなくても、
銀行預金や、生命保険の運用は
国内よりも利息の高い海外で行われます。

ところで、その投資先とは何処でしょう?
アメリカ国債でしょうか?
怪しい債権、証券でしょうか?

世界は必死になって金融の実態を隠しています。
現在利益を上げている様に見える投資の、
どれだけが、本当は破綻しているのか見当も付きません。

もし金融危機が発生したらどうなるか?
所得収支は一気に激減します。
いえ、巨大な損失が発生するのです。

■ 鎖国は可能か? ■

TPP論議の中では極端な例として、「鎖国」が持ち出されます。

しかし、私達の身の回りのモノが輸入原材料で出来ている事から、
「鎖国」して「外貨」が獲得出来なければ、
これらの原材料を輸入する事も出来なくなります。

日本の1次産業の生み出す資源だけでは、
明治時代の生活レベルの戻ってしまいます。

個人としてはそれでも構わないと思いますが、
国家としては成り立ちません。

■ TPPへの参加は不可避か? ■

現在の日本が外需無くして成り立たない事は事実です。

「TPPは日本とアメリカの事実的なFATだからメリットが無い」
という論もあります。
米韓FTAを見ていると、満更嘘では無い気もします。

一方、日本は輸出国で、アメリカが輸入国です。
アメリカはお客様に相当します。

お客様はとかくワガママです。

日本としては、アメリカとの取引を諦めない限りは、
TPPに参加してお客様との繋がりを維持する選択しかありません。

卑屈な様ですが、これは商売の基本では無いでしょうか?