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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

<再録シリーズ>中東革命の行く末・・・超人ロック・[ロンウォールの嵐」「冬の惑星」

2011-11-27 12:51:00 | マンガ

 
昨日、「中東の春」が内戦に発展しつつある事を書きました。

かつては「エリア88」の様に、
「死の商人が戦争の裏で暗躍する」などという
社会派のマンガがありました。

今度実写化される「ワイルドセブン」など、
きちんと社会の裏側の悪を描きながらも、
なんとも言えない、暴力の魅力に溢れた作品でした。

それがオーム事件の頃からか、
マンガの悪は精神を病んだ狂信者や、カルト教団に変化しました。

私はこれなどは巧妙な「陰謀論潰し」ではないかと思っています。
「死の商人」や「陰謀」は普通に存在しているのに、
そしてかつては、その存在を誰もが知っていたのに、
現在ではサブカルチャーから、すっぽりと欠落しています。

ブームと言えばそれまでなのかも知れませんが、
かつては普通に存在していたものが消えている事実に
ある種の恐怖を覚えるのは、私だけでしょうか?

さて、中東の現在の情勢を見るにつけ、
「超人ロック」の初期の作品を思い出さずにはいられません。
「正義」とはいつか変質し、そして「権力」は腐敗します。

今年の2月に書いた記事ですが、
「中東の春」のその後の展開と合わせてみると、面白いかと思います。


<2011・02・22より 再録>





■ 独裁者の戦い ■

カダフィー、アサド、カストロ、フセイン、アフマディネジャド(ついでにチャベス)と聞いて、眉根を寄せるのは常識人の反応です。欧米のマスコミに洗脳された私達には、彼らこそが「独裁者」だと思い込まされています。

カダフィー大佐はかつて国連総会で国連憲章を投げ捨てるパフォーマンスで、現状の世界秩序を批判しました。彼は15分の予定時間を大幅に上回る長い演説を行いヒンシュクを買いました。

ベネゼエラのチャベス大統領はブッシュの後に演壇に上り、「昨日悪魔がここに来た。(十字を切って天を仰ぐ) まだ硫黄の匂いが残っている。昨日、私が悪魔と呼ぶところの合州国大統領は、この演壇からまるで自分が全世界の所有者であるかのような演説をした。我々は精神科医を呼んで、昨日の合州国大統領の声明を診断してもらうべきだ・・・」と演説しました。

世界の鼻つまみ者の様な彼らの演説は、欧米のメディアでは冷笑され、カダフィーの演説の中継は中断されました。しかし、国連総会の会場では途上国の代表達が、カダフィーやチャベスの演説に拍手喝采を送っていたと言います。

私達はアメリカを中心とした偏った世界から、別の世界を見ているに過ぎません。

「中東の民主化」の流れの中で排斥されつつある「独裁者」達は、かつては大国から自国の利権を守る為に戦った英雄達なのです。

しかし残念ながら権力は腐敗します。崇高な志を抱いていたかつての指導者達も、日々先進国に政権を脅かされるうちに、政権維持が目的化して、国民を弾圧していきます。軍の力を背景にした権力の硬直化が、彼らを「独裁者」に変貌させていきました。

■ 「超人ロック」に学ぶ「民主革命」の行方 ■

「民主革命」の本質に迫る最高のテキストがあります。
聖悠紀の「超人ロック」の初期作品、「ロンウォールの嵐」と「冬の惑星」です。
(又マンガで申し訳ありません)

「超人ロック」については以前、このブログでも取り上げました。
http://green.ap.teacup.com/pekepon/77.html
「超人ロック・・・帝国の盛衰」
「成長の限界と破壊による再生」という、歴史の大原則について書いたものです。
(ずいぶん前のブログに、先日コメントを頂き、大変嬉しく思っております。)


超人ロックは超能力による再生能力を持ち、ほぼ永遠に生き続けます。
そんな彼が再生のトラブルで以前の記憶を失います。
普通の青年リヴィングストンとして成長したロックは、ロンウォールの独立運動に巻き込まれていきます。

人口爆発から宇宙移民を推進する地球政府は、殖民惑星のロンウォールに多くの移民を移住させます。しかし、開発が進んでいないロンウォールの食料生産は移民を受け入れる余裕はありません。

反対勢力は次第に勢力を増し、とうとう政権を揺るがす状況になります。地球政府は特殊部隊を派遣して反乱を鎮圧しようと試みますが、記憶を取り戻したロックの活躍によって、特殊部隊は壊滅、さらには地球軍の艦隊もロックによって撹乱され、ロンウォールは独立を果たします。

■ 権力抗争で自壊する革命 ■

しかし、指導者ジュリアスを欠いた革命軍は直ぐに内部分裂します。互いに疑心暗鬼に陥る中、地球政府と取引をしたクラウスが政権を握ります。彼は仲間たちを次々に暗殺、投獄して政権基盤を盤石化していきます。

クラウスはその見返りに、移民を受け入れますが、冷凍冬眠で運ばれて来た移民達は冷凍倉庫の故障で蘇生する事なく死んでいきます。

地球政府は移民を送り出せればそれで良く、ロンウォール政府は移民を受け入れれば良いのです。彼らの冷酷な妥協によって多くの命が失われていきます。

革命成立後、身を潜めていたロックは、事ここに至って再び立ち上がります。かつての仲間を脱獄させ、そしてクラウスに正義を問い詰めます・・・。

■ 独裁と傀儡 ■

マンガの話とは言え、「革命とその行く末」を見事に看破しています。

一時の勢いで革命が成立しても、烏合の衆からなる革命政府には政権担当能力が無く、旧勢力やそれを操る大きな存在に付け入られ、次第にコントロールされてしまいます。

それを防ぐ為に、「独裁制」に移行するケースが多く見られます。
しかし「独裁者」と言えども、政権に固執すればムバラクの様に大国の傀儡と化していきます。

一方、大国と対決姿勢を取るカダフィーやチャベスの様な独裁者も多くいますが、それとて地域の力の均衡の駒(緊張の創造)として利用されてしまいます。

今般の中東情勢を見ても、大国(あるいは影の勢)が、地域のパワーバランスを大きく変えようとする時に、「独裁者」達はいとも簡単に使い捨てられます。

中東の「民主化革命」は便利に利用された独裁者達の大掃除に他なりません。

■ 「超人ロック」は実在しない ■

実際の世界には「超人ロック」はいません。
いえ、「超人」と言われるロックですら、歴史や世界を支配する力に翻弄され続けます。

身近な人とて守れないのです・・・。



長々と書いてきましたが、実は上のコマを載せたかっただけです。
ロックが思いを寄せたエレーヌを失ったシーンです。

このシーンから、「超人ロック」は私には生涯忘れられない作品になりました。