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アメリカの戦略変更・・世界のアメリカからアジア太平洋のアメリカへ

2011-11-19 03:19:00 | 時事/金融危機
 

■ オバマ演説 ■

このブログではTPPは経済圏では無く、
アメリカの新しい世界戦略であると主張してきました。

オーストラリアに海兵隊を駐留させる事を決定したオバマ大統領は
アジア太平洋地域は、アメリカにとっても最優先地域だ」と現地で演説しました。

「オーストラリア訪問中の米・オバマ大統領、演説で新たなアジア戦略打ち出す」FNNニュース 11.17 
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00211731.html

<引用開始>

「オーストラリアを訪問中のアメリカのオバマ大統領は17日、首都キャンベラの議会で演説し、アジア太平洋地域を「最も重要な地域」と位置づけ、アメリカの関与を強めていくとする新たなアジア戦略を打ち出した。
アメリカのオバマ大統領は「太平洋国家として、この地域の未来を形づくるのに、長期的な視野に立った役割を果たしていく」と述べた。
演説の中で、オバマ大統領は、まず「アジア太平洋地域は、アメリカにとっても最優先地域だ」と強調し、北朝鮮については「核拡散は、アメリカにとっても重大な脅威だ」と指摘した。
また、この地域で軍拡を進める中国に対しては、「国際規範に従い、人権を尊重することの重要性を指摘し続けていく」と述べてけん制するとともに、2011年にアメリカが初めて参加する東アジアサミットを、地域の安全保障問題を協議する枠組みとして活用するよう呼びかけた。

<引用終わり>

■ 「世界のアメリカ」から、「アジア太平洋のアメリカ」へ ■

オバマ大統領のこの演説は、
海兵隊が駐留するオーストラリアへのリップサービスでは無く、
アメリカが本気で戦略を変更したと受け取るべきでしょう。

オーストラリアは石炭や鉄鉱石に輸出を通して、
近年、中国との関係を深めていまいした。
オーストラリアでは近年、中国系の移民が増大し、
一種の社会問題化していました。

その様に中国シフトしていたオーストラリアが
海兵隊の基地を提供する(駐留という表現を使っているが)事は、
オーストラリアが今後中国と距離を取るという意味を持ちます。

アメリカがTPPを推進する事は、
日本国内では、単なる「経済戦争」の様に受け止められています。

しかしオバマ演説にもある様に、
アメリカは本気で環太平洋の安全保障圏を確率する様です。

これは「世界にアメリカ」から「アジア太平洋のアメリカ」への変化です。
軍事力では未だに世界最強を誇るアメリカですが、
財政の悪化が著しく、従来の様に「全世界規模」で米軍を展開する事は
財政面から既に限界に達しています。

アメリカは世界唯一の覇権国家の座から滑り落ちて、
「地域覇権国家」に縮小する戦略を取るようです。
その際、アメリカがパートナーとして選んだのは、
アフリカや中東、ヨーロッパ、中国では無く、
太平洋を取り巻く海洋国家の国々になる様です。


■ アメリカは本気だ ■

海兵隊のオーストラリア駐留は、戦略的にも重要です。

米軍の再編(トランスフォーマー)の一環として
沖縄に駐留する海兵隊は、将来的にはグアムに移転するはずでした。
韓国の在韓米軍も撤退を予定していました。
これは、東アジアの安全保障を中国に任せるという戦略でした。

ところが、オバマ政権になってから、
北朝鮮との緊張の高まりもあり、
在韓米軍の撤退は棚上げにされています。

一方、グアム移転が決まっていた沖縄の海兵隊は
普天間移転を着々と地固めしており、
全隊のグアム移転は、きっと白紙に戻っています。

オーストラリアの海兵隊駐留で、
沖縄の役割が軽くなると考える向きもありますが、
オーストラリアはインド洋やマラッカ海峡、ロンボク海峡など
重要なシーレーンを確保する為の拠点になります。


さらには中国のミサイルの餌食となる沖縄海兵隊基地の
需要なバックアップにもなります。

■ 11月23日に「財政削減案」はまとまらず ■

11月23日に民主・共和両党の代表で提出する予定の
「財政削減案」が纏まらなければ、
アメリカの軍事予算は2013年度から自動的に削減されます。

それに先立つかの様に、今年末を以て、
イラクからアメリカ軍が完全撤退します。

オバマ大統領はアフガンからの撤退を主張して大統領になっていますので、
アフガニスタンの米軍もいずれは撤退します。

アメリカは軍事予算が削減されるので、
アフリカ諸国からも撤退を余儀なくされます。

米軍が撤退した空白を、NATO,ロシア、中国が埋めてゆくのでしょう。
NATO、ロシア、中国の関係は現状良好で、
彼らはある時は強力しあい、ある時は牽制しあいながらも、
ユーラシア大陸とアフリカ大陸を治めてゆくのでしょう。

■ 中国に圧力を強めるアメリカ ■

アメリカの国力た低下する中で、
アメリカは北米大陸の盟主だけでは満足しない様です。

オーストラリアとカナダの鉱物資源、
インドネシアやミャンマーの石油(ミャンマーには海底油田があるらしい)
アジア諸国の経済成長に伴う市場拡大。
日本や韓国の技術。

TPPとNAFTA、米韓FATを包括する経済圏は
世界の50%以上のGDPを占める大経済圏です。

アメリカは中国やロシアとの安全保障上に緊張を煽って、
環太平洋の軍事・経済同盟を構築するでしょう。

■ 中国はTPPには絶対に入れない ■

巨大な市場から切り離される中国は
TPPに対して、色々と横やりを入れて来るでしょうが、
「自由貿易」に文句を言っても始まりません。

中国がTPPに干渉するならば、
アメリカはこう言うだけです。
「門戸は誰にでも開かれている」と。

元の自由化もままならず、民主化も不可能で、
さらには恣意的な法律運用をする人治国家では、
TPPに入れる訳がありませんし、
入ったとしてもISD条項で裁判に負けまくります。

共産党政権が崩壊しない限り、
中国はTPPに参加する事が出来ないのです。

■ インドシナ半島をめぐる駆け引き ■

環太平洋の海洋国家という枠組みで微妙なのがインドシナ半島です。

シンガポール、ベトナム、ブルネイは参加を表明しています。
タイ、インドネネシアは参加表明していませんが、
TPPの勢いが増していますから、何れは参加して来るでしょう。

カンボジア、ラオス、ミャンマーは微妙ですが、
クリントンがミャンマーに訪問するなど
ミャンマーは外せないでしょう。
何故なら、ミャンマーには有望な海底油田があると言われています。

中国もこの動きを手を拱いている訳には行きません。
中国はベトナムやタイなどと「元決済」を開始しており、
中国の裏庭とも言えるこれらの地域が
中国経済圏を離れる事を黙認出来ないはずです。

さらには台湾の問題が控えています。
台湾海峡はシーレーンの要です。
中国を大陸に封じ込める為には、
台湾が環太平洋グループに入る必要があります。

既に経済的には中国と一体化しつつある台湾を
中国から引き離す事は容易ではありません。

■ ドルの崩壊で復活するアメリカと、停滞する中国 ■

アジアの諸国は、中国かアメリカの選択を迫られています。
どちらに付くかで、大いに悩んでいます。

「ドルの崩壊」の結果が分かれ目となるでしょう。
基軸通貨にドルを失って、アメリカが現状に様な大国で居られるのか?

私は「ドルの崩壊」はアメリカにはメリットで、
中国にはデメリットだと考えます。

量が減って来ているとは言え、
中国は未だに世界一の米国債保有国です。
ドルが崩壊すれば、米国債は踏み倒されます。

さらに、ドル崩壊で中国のバブル経済は一気に崩壊します。
市場をアメリカに頼っていた中国の輸出企業は、
アメリカという輸出先を失って、一気に経営が悪化し、
事実上のドルペックで価値を担保していた人民元は紙切れと化します。

その後、アメリカの市場が回復したとしても、
そこには中国の居場所は無くなっているかも知れません。
TPPに参加する国々が、市場を押さえているからです。

■ アジアに下りるカーテン ■

第二次世界大戦後にヨーロッパと同様に、
今、アジアにカーテンが下ろされようとしています。
 
冷戦の様に、厳密なカーテンと言うよりは
レースのカーテンよう様な代物ですが、
カーテンの向こう側で、日本の生産設備がどうなるかは不明です。
アメリカと日本政府が中国を敵視すれば、
それらの設備が接収される事は、十分に予想されます。

■ 世界を変えた日本 ■

日本がアメリカに付くか、中国に付くかは大きな問題でした。
今回、日本がTPPに参加表明した事で、
世界の次の時代の枠組みが大きく動き出したとも言えます。

世界最大の経済ブロックに参加する国は、今後増大するでしょう。

■ 覚悟無いままに変化を許容する日本人 ■

今回も国民は何の覚悟も無いままに、
世界の大変革に巻き込まれます。

それでも何とか順応してしまうのが、
日本人の凄い所です。

欧米型のビジネス習慣は、私達には苦痛ですが、
結構、ダブルスタンダードでどうにかなるのが、
日本であり、アジアなのでしょう。