■ どうも良く分からない ■
関東者からすると今回お大阪ダブル選挙はどうも良く分からない。
何が争点なのかも、イマイチはっきりしない。
「大阪都構想」と言われても・・???
良く分からないながらも、大阪人の持つ危機感は何となく伝わってきます。
■ 古い関西をぶっ壊すのか? ■
東京者には理解しずらいのですが、関西は古い社会が生きています。
「同和問題」など、江戸時代の問題を未だに引きずっています。
伝統や古い価値観が生きている事は、傍から見れば魅力ですが、
そこで生活する人達にとってもれば、結構煩わしい事も多いのでしょう。
京都でラディカルな建築家が生まれたりするのも、
伝統を重んじる文化へのカウンター的な動きだったりします。
橋本新市長は「大阪をぶっ壊すのでは無く、大阪市役所をぶっ壊す」と言っています。
小泉元首相を彷彿とさせる発言ですが、
大阪市役所が抵抗抵抗勢力という事なのでしょうか?
■ 政治と行政 ■
日本の公務員は特殊な職業です。
三権分立という意味では本来行政に専念すべき公務員が、
政治的決断をする事は、中央省庁の官僚にも横行しています。
かつて、田中真紀子と激闘を演じた外務省や防衛省を例に出すまでも無く、
政治家と行政を預かる公務員の関係が徹底されておらず、
民主主義の原則が守られているとは言えません。
公務員は選挙民に選出された訳では無いので、
公務員や官僚が政治的判断を下す事は、一種の違憲行為です。
公の選挙で有権者に選ばれた首長の指示を、
行政を担当する公務員がボイコットするのでは、
民主主義の原則は成り立ちません。
国政においてすら、「政治主導」が確立出来ない日本において、
古い地域社会が残る「地方政治」においては、なおさら「政治主導」は難しいでしょう。
■ 科挙や官吏という伝統 ■
「民主主義」や「法治」という概念は明治時代に西洋から導入されました。
現在の様な「国民主権」が確立するまでに、
多くの事件が起こり、多くの命が犠牲になるなど、
日本の民主主義とて、ポンと与えられただけの存在ではありません。
しかし一方で日本の民主主義は形骸化しています。
これは日本の行政システムが、
科挙や官吏といったアジア型の統治システムの伝統と無縁では無いからでしょう。
中国では皇帝の権力は絶大ですが、
広い国土を統治する為に、有能な才能を持った者を「科挙」という試験制度で集め、
在る程度の権限を持った「官吏」として行政に当たらせました。
日本の公務員にもこれと似た傾向が見受けられ、
優秀な人材は、国家公務員のキャリア職を目指す傾向があります。
地方においても公務員は一番の人気職種で、
優秀と言われる人材がこぞって公務員を目指します。
■ 利益誘導型の政治家 ■
一方、政治家は選挙によって選ばれますが、
古い社会基盤を背景に行われる選挙では、
「理念」や「政策」よりも、「利益誘導」が重視されます。
東大出のエリートと、地元の土建屋のドラ息子が選挙で戦うと、
土建屋のドラ息子が勝利するのが、日本の地方選挙に実態でしょう。
国政選挙においても、地方ではこの傾向が見られます。
■ 政治と行政のネジレ ■
学生時代には成績優秀だった「公務員」が、
小学校では劣等生だった「議員」の決めた政策に従う・・・。
これは一種のネジレ構造で、公務員達は議員達や首長を内心は見下しています。
さらにコネ社会が残る地方や関西では、
公務員は世襲化しており、一種の選民意識すら持っています。
かつての地方公務員は給与も低く、「公僕」的職業でしたが、
現在の地方公務員は民間よりも給与も高く、
地方の優秀な人材が、益々公務員に集中する傾向は顕著です。
■ 利益誘導か、官僚政治か? ■
利益誘導型の選挙で選ばれる議員や首長と、
学力優秀な公務員のどちらがマシかと聞かれると、
私はどちらかと言えば、公務員の方がマシだと考えます。
しかし一方で、役所は変化を嫌う組織という事も事実です。
滞りなく行政を執行する事を最優先する職場において、
さらに転職などの人材的流動性が欠ける組織において、
内部改革は事実上困難です。
従って、社会が大きく変革する時、
官僚制はその変革のスピードに追い付けません。
■ 優れた政治主導とは何か? ■
民主党は「政治主導」を旗印に政権を獲得しましたが、
「政治主導」は実現していません。
「小沢ー鳩山」時代に改革に芽を感じましたが、
現在は官僚主導型に逆戻りしています。
小沢一郎は「政治的ビジョン」を語る一方で、
その選挙スタイルは旧態然としたものなので、
結果的に「利益誘導」のばら撒き型政治となってしまいます。
小選挙区制は本来、2大政党制によって、
利益誘導から、政策中心に選挙の体質を変革するものと期待されましたが、
結局、有権者の政治観が利益誘導型を脱していないので、
結果的に、集票の為のばら撒き政治が温存されます。
■ 橋本氏の挑戦 ■
橋本氏の掲げる「大阪都」構想は、
地方分権のダイナミックな改革です。(内容は良く見えませんが)
当然、中央官庁からの支配意識が抜けない行政機関は抵抗を示します。
これは田中康夫元長野県知事のケースでも見られた現象です。
大阪人は横山ノックを知事に選ぶような選挙民ですから、
今回の選挙結果が、はたしてどれだけ大阪の民意を反映しているかは不明です。
受け狙いで、思わず流行に乗っただけの投票行動の様にも見えます。
だいたいにおいて、「大阪都構想」の意味を、
ほとんどの有権者は理解していないのではないでしょうか?
■ 都市国家としての生き残りを掛ける大阪 ■
日本は狭い国土に人口が密集し、東京以外にも大規模な地方都市が存在します。
しかし、中央集権の強い日本では、東京の一極集中が顕著です。
景気が縮小する中で、地方の中小都市から始まった衰退は、
大阪などの大規模な地方都市に波及しようとしています。
一方アジアに目を移せば、上海や香港やシンガポールなどの
魅力的な都市がどんどん出現しています。
TPPの時代にあった、ビジネスや産業の分野で国境が不明確とれば、
日本の諸都市は、アジアやその他の地域の諸都市との競争を迫られます。
その時、東京中心の中央集権体制では、
変化のスピードに乗り遅れ、
地方はさらなる衰退の危機にさらされます。
とかく「二重行政の弊害」の排除として語られる「都構想」ですが、
行政区分をシンプルにして政策実行をスピーディー化を促進したり、
市と県という垣根を取り払う事で、政策実行範囲を広域化する事で、
従来の細かな行政区分では出来なかったダイナミックな試みなども可能になります。
「大阪都」構想は、国の管理をある程度離れて、
「大阪」の判断で政策実行をするには有望な方法です。
問題は国税を都税に振り替えられるかどうかです。
財布を財務省に握られていたのでは、
「大阪都構想」は絵に描いた餅となります。
■ 道州制との違い ■
日本の地方分権の流れとしては、
本来は自民党や中央官庁が推進していた道州制が存在します。
道州制はアメリカの構造改革要望書に記載されています。
これは、アメリカにとって道州制が都合が良い事を暗示します。
アメリカの市場開放の要求は、中央省庁の巧妙な妨害工作で阻止されてきたので、
道州制によって地方の権限を拡大し、
騙し易い地方の行政単位から切り崩す作戦だったのでしょう。
あるいは「合州国」アメリカが併合するには、
日本は大きすぎるので、「州」に分割するのでは無いかと勘繰ってしまいます。
いずれにしても、橋本改革は、従来の地方分権とは異なる動きで、
今後のアジア情勢を踏まえても、注目に値すると私が思います。
・・・尤も、「東京者」に「大阪」の本質はなかなか理解出来ませんが・・・・。
・・・あ!私は千葉県人でした。
<追記>
世間では官僚制の弊害をメディアなどが書きたてていますが、
私は中央省庁の官僚機構は、アメリカの無理難題から日本を守ってきたと思います。
近年の首相は、アメリカから無理を押しつけられる毎に、
退陣して、その要求をかわし続けていますが、
そんな芸当が出来るのも影の内閣としての官僚制度が盤石なおかげです。
官僚は政治家と異なり顔の見えない存在です。
さらには、適当な年齢で退官して入れ替わります。
省庁間の移動などもありますし、
アメリカが官僚を掌握しようとしても、実態が掴めないでしょう。
年次改革要望書にしても、政策実行される段階では骨抜きになっています。
メディアもこの日本独特のシステム維持に一役買っています。
首相退陣の世論を造るのはメディアです。
アメリカの目がありますから、表面上は小沢一郎を叩いたりしていますが、
決定的に追い詰めるような事はしません。
適当に国民のガス抜きをしながらも、
国政の根幹を担う官僚制を温存しています。
但し、官僚制の限界は、ダイナミックな変革が出来ない事です。
尤も、あまり派手に立ち回ると戦前の日本の様に目を付けられますから、
目立たない様に。こっそりと実を取るのが、日本のお家芸なのでしょう。
20年も不景気が続きながらも、決定的な崩壊が起こらない事が、
逆に日本のな官僚機構の優秀性を証明しています。
一方、地方行政においては、議会と役所は癒着しており、
お互いに利権をむさぼっています。
「公務員改革」とは、夜中の2時3時までオフィスで働く中央省庁の職員から
都内の官舎を奪う事では無く、
大した仕事もせずに高級を食む、地方公務員の給与を2割から3割削減する事を目的とすべきです。