■ 国際競争力の為に賃金を切り下げたかったケインズ ■
ケインズのファンは、ケインズが公共事業を増発して、国民の生活を救ったと考えています。しかし、ケインズの目的のもう一つの側面は、意外に見落とされがちです。
第一次世界大戦後、ヨーロッパの国々は金兌換性に復帰して、自国通貨の切り上げを実施します。しかし、通貨高は輸出競争力を奪う為、ケインズは通貨の切り上げには反対だったと言われています。ケインズは炭鉱労働者建の賃金は高すぎて競争力が阻害されていると考えたのです。
ケインズは賃金の上方硬直性を利用して、組合が強くで賃金を下げられない炭鉱労働者の賃金を、インフレを使って事実上下げたのでは無かったか・・・。
それによってイギリスの石炭の国債競争力を回復しようとした。要は公共事業もポンド増刷の口実みたいな所があって、結果的にポンドの切さげを模索していたのではないか?
この点においてケインズは資本家に味方しているとも言えます。
■ 通貨切り下げ戦争がもたらす歪 ■
リーマンショック前までのイギリス経済の好調も、ソロスのポンド売り浴びせによる為替調整の効果とも言えます。
そういった意味ではリーマンショック後に通貨の切り下げ競争をやっている訳ですが、各国中央銀行が等しく通貨の大量発行をしているので、相対的に為替相場はそれ程大きく動きませんでした。
その歪は途上国や新興国に影響を与え、大きな資産市場を持たないこれらの国では、増えた通貨が資産市場に吸収される事無く、実体経済でインフレを引き起こしています。物価高騰が庶民の生活を圧迫して、アラブの春が引き起こされた。
グローバル化の時代には、一番弱い所に歪が溜まり易く、先進国の緩和政策は、これらの国々で暴動の原因を作り出した。
■ 先進国のエゴが途上国の政情不安を作り出す ■
「独裁政権が倒されたのだから良いだろう」というのは先進国からの偏った見方で、カダフィーもアサドも国民に愛されていました。彼らが排除されて残ったのは荒廃した国土と、先進国からの防壁を失った各種利権です。
エジプトは結局軍のクーデターで民主化は後退しました。結局国民が対立しただけで、ムバラク時代に戻ってしまいました。
私達は他人事の様にエジプトの事件を眺めていますが、原因がどこにあるかと自省する必要がありそうです。
尤も、中東の政治的枠組みを崩壊させる事に、先進諸国の目的があるとすれば、私達も又、誰かの手の上で踊らされているに過ぎないのかも知れません。