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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

<再録シリーズ>中東革命の行く末・・・超人ロック・[ロンウォールの嵐」「冬の惑星」

2011-11-27 12:51:00 | マンガ

 
昨日、「中東の春」が内戦に発展しつつある事を書きました。

かつては「エリア88」の様に、
「死の商人が戦争の裏で暗躍する」などという
社会派のマンガがありました。

今度実写化される「ワイルドセブン」など、
きちんと社会の裏側の悪を描きながらも、
なんとも言えない、暴力の魅力に溢れた作品でした。

それがオーム事件の頃からか、
マンガの悪は精神を病んだ狂信者や、カルト教団に変化しました。

私はこれなどは巧妙な「陰謀論潰し」ではないかと思っています。
「死の商人」や「陰謀」は普通に存在しているのに、
そしてかつては、その存在を誰もが知っていたのに、
現在ではサブカルチャーから、すっぽりと欠落しています。

ブームと言えばそれまでなのかも知れませんが、
かつては普通に存在していたものが消えている事実に
ある種の恐怖を覚えるのは、私だけでしょうか?

さて、中東の現在の情勢を見るにつけ、
「超人ロック」の初期の作品を思い出さずにはいられません。
「正義」とはいつか変質し、そして「権力」は腐敗します。

今年の2月に書いた記事ですが、
「中東の春」のその後の展開と合わせてみると、面白いかと思います。


<2011・02・22より 再録>





■ 独裁者の戦い ■

カダフィー、アサド、カストロ、フセイン、アフマディネジャド(ついでにチャベス)と聞いて、眉根を寄せるのは常識人の反応です。欧米のマスコミに洗脳された私達には、彼らこそが「独裁者」だと思い込まされています。

カダフィー大佐はかつて国連総会で国連憲章を投げ捨てるパフォーマンスで、現状の世界秩序を批判しました。彼は15分の予定時間を大幅に上回る長い演説を行いヒンシュクを買いました。

ベネゼエラのチャベス大統領はブッシュの後に演壇に上り、「昨日悪魔がここに来た。(十字を切って天を仰ぐ) まだ硫黄の匂いが残っている。昨日、私が悪魔と呼ぶところの合州国大統領は、この演壇からまるで自分が全世界の所有者であるかのような演説をした。我々は精神科医を呼んで、昨日の合州国大統領の声明を診断してもらうべきだ・・・」と演説しました。

世界の鼻つまみ者の様な彼らの演説は、欧米のメディアでは冷笑され、カダフィーの演説の中継は中断されました。しかし、国連総会の会場では途上国の代表達が、カダフィーやチャベスの演説に拍手喝采を送っていたと言います。

私達はアメリカを中心とした偏った世界から、別の世界を見ているに過ぎません。

「中東の民主化」の流れの中で排斥されつつある「独裁者」達は、かつては大国から自国の利権を守る為に戦った英雄達なのです。

しかし残念ながら権力は腐敗します。崇高な志を抱いていたかつての指導者達も、日々先進国に政権を脅かされるうちに、政権維持が目的化して、国民を弾圧していきます。軍の力を背景にした権力の硬直化が、彼らを「独裁者」に変貌させていきました。

■ 「超人ロック」に学ぶ「民主革命」の行方 ■

「民主革命」の本質に迫る最高のテキストがあります。
聖悠紀の「超人ロック」の初期作品、「ロンウォールの嵐」と「冬の惑星」です。
(又マンガで申し訳ありません)

「超人ロック」については以前、このブログでも取り上げました。
http://green.ap.teacup.com/pekepon/77.html
「超人ロック・・・帝国の盛衰」
「成長の限界と破壊による再生」という、歴史の大原則について書いたものです。
(ずいぶん前のブログに、先日コメントを頂き、大変嬉しく思っております。)


超人ロックは超能力による再生能力を持ち、ほぼ永遠に生き続けます。
そんな彼が再生のトラブルで以前の記憶を失います。
普通の青年リヴィングストンとして成長したロックは、ロンウォールの独立運動に巻き込まれていきます。

人口爆発から宇宙移民を推進する地球政府は、殖民惑星のロンウォールに多くの移民を移住させます。しかし、開発が進んでいないロンウォールの食料生産は移民を受け入れる余裕はありません。

反対勢力は次第に勢力を増し、とうとう政権を揺るがす状況になります。地球政府は特殊部隊を派遣して反乱を鎮圧しようと試みますが、記憶を取り戻したロックの活躍によって、特殊部隊は壊滅、さらには地球軍の艦隊もロックによって撹乱され、ロンウォールは独立を果たします。

■ 権力抗争で自壊する革命 ■

しかし、指導者ジュリアスを欠いた革命軍は直ぐに内部分裂します。互いに疑心暗鬼に陥る中、地球政府と取引をしたクラウスが政権を握ります。彼は仲間たちを次々に暗殺、投獄して政権基盤を盤石化していきます。

クラウスはその見返りに、移民を受け入れますが、冷凍冬眠で運ばれて来た移民達は冷凍倉庫の故障で蘇生する事なく死んでいきます。

地球政府は移民を送り出せればそれで良く、ロンウォール政府は移民を受け入れれば良いのです。彼らの冷酷な妥協によって多くの命が失われていきます。

革命成立後、身を潜めていたロックは、事ここに至って再び立ち上がります。かつての仲間を脱獄させ、そしてクラウスに正義を問い詰めます・・・。

■ 独裁と傀儡 ■

マンガの話とは言え、「革命とその行く末」を見事に看破しています。

一時の勢いで革命が成立しても、烏合の衆からなる革命政府には政権担当能力が無く、旧勢力やそれを操る大きな存在に付け入られ、次第にコントロールされてしまいます。

それを防ぐ為に、「独裁制」に移行するケースが多く見られます。
しかし「独裁者」と言えども、政権に固執すればムバラクの様に大国の傀儡と化していきます。

一方、大国と対決姿勢を取るカダフィーやチャベスの様な独裁者も多くいますが、それとて地域の力の均衡の駒(緊張の創造)として利用されてしまいます。

今般の中東情勢を見ても、大国(あるいは影の勢)が、地域のパワーバランスを大きく変えようとする時に、「独裁者」達はいとも簡単に使い捨てられます。

中東の「民主化革命」は便利に利用された独裁者達の大掃除に他なりません。

■ 「超人ロック」は実在しない ■

実際の世界には「超人ロック」はいません。
いえ、「超人」と言われるロックですら、歴史や世界を支配する力に翻弄され続けます。

身近な人とて守れないのです・・・。



長々と書いてきましたが、実は上のコマを載せたかっただけです。
ロックが思いを寄せたエレーヌを失ったシーンです。

このシーンから、「超人ロック」は私には生涯忘れられない作品になりました。


燃え上がる中東・・・中東の春」などと書いたマスコミよ、あなた達は何を見ているのか!!

2011-11-26 07:30:00 | 時事/金融危機
 



■ 「中東の春」はロスチャのイメージ戦略 ■

チェニジアを発端とする一連の中東の市民蜂起を、
世界のメディアは「プラハの春」になぞらえて「中東の春」と書きたてました。

「プラハの春」はソ連軍の戦車によって無残にも蹂躙されましたが、
「中東の春」は、穏やかな季節を過ぎて「烈夏の季節」に突入しつつあります。

私は兼ねてより、部族社会と宗教対立の残る中東諸国で
独裁的政権が倒れた後に訪れるのは、際限の無い内乱状態だと書いてきました。
「中東の春」などは、政権崩壊を仕掛たロスチャのイメージ戦略だと。

■ 暴力の連鎖が止まらない ■

ムバラク政権が倒れたエジプトでは、
イスラム系とキリスト教徒の一派であるコプト教の対立が激化し、
さらには、比較的良好だった軍部に対して人々の反感が高まっています。

これはムバラクの独裁によって抑えられていた民衆の不満が
ムバラク政権という分かり易い標的を失った結果、
エジプトの社会の根底に横たわる宗教対立や、
エジプトの真の政治的支配者である軍部に対する不満が噴出した結果です。

カダフィーが虐殺されたリビアでは、内戦で国内に大量の武器が出回っています。
これから部族間の対立が激化するでしょう。

シリアでは一般国民の死亡ばかりがニュースで報道されていますが、
実情は、政府軍と反政府軍に分かれた内線状態になっています。
シリアはイスラエルに隣接する為、
アサド政権が崩壊すると中東情勢は一気に不安定化します。


■ 中東の暴動は裏から操られている ■

これら中東の暴動は、表面的にはそれぞれに国民がバラバラに蜂起した様に見えます。
しかし、そこには一貫した方向性が見られます。

それは、アメリカの影響を中東から排除する事です。
第二次世界大戦後、中東の石油を支配したアメリカの政策は巧妙で、
イスラエルと、サウジアラビアなどのアラブ穏健派と、
リビアやシリアなどのアラブ恐慌派を対立させて、
「三すくみ」のパワーバランスによって不安定の上の安定を作ってきました。

原油価格を操作する時は、これらのバランスを少し崩して
中東戦争を誘発したり、パレスチナを上手くけしかけて、
イスラエルとの間に限定的な紛争を演出してきました。

「中東の春」は、先ずエジプトというイスラエルに隣接する
アラブ穏健派の大国からアメリカの影響は排除しました。

次にリビアというアラブ強硬派を崩しに掛ります。
リビアのカダフィーは反米のポーズを取っていましたが、
裏ではCIAやイギリス情報部のMI6と密接な関係を保っており、
さらには、カダフィー自体が血筋的にはユダヤ人(祖母がユダヤ人)で在る事から、
実はイスラエルとも裏で繋がっていました。
カダフィーの危機に際して、アフリカから傭兵を手配したのはイスラエルの会社です。

リビアが崩壊した後に中東に残されたアラブ強硬派はシリアです。
シリアはアサド大統領の息子が世襲によって政権を引き継いでいます。
前アサド大統領は、カダフィーと並ぶ反米姿勢を示していましたが、
イラク戦争を期に、アメリカの前に屈しています。
それでにどうにか、政権を息子に譲り渡したのですが、
軍事独裁に対する国民の不満が噴出し、
今や政府軍と反政府軍に分かれて内線状態に陥っています。

シリアはゴラン高原をイスラエルに占領されていますが、
アサド政権が盤石だった時代は、ゴラン高原の治安は維持され、
イスラエルとの国境は安定していました。
現在はパレスチナ人がゴラン高原のイスラエル国境を越境するなど、
イスラエルとの間の安定性が不確かなものとなています。

■ サウジアラビアで暴動が始まった ■

中東の民主化運動?の総仕上げは、サウジアラビアです。
アメリカの傀儡である現王家は、
戒律の厳しいイスラム教のワーハーブ派です。
一方、油断地帯が集中する東部の住人はシーア派です。

サウジ王家は、国王が長期入院中で、
先日、国王の弟の皇太子が病死しました。
サウジ王家は世代交代の不安定な時期を迎えています。

サウジアラビア周辺ではイエメンでサーレハ大統領が政権を手放しています。
サーレハ大統領はカダフィーやフセインらと共にイスラム社会主義を推進した人物です。
尤も、イスラム社会主義は世俗的なイスラム主義に変質してしまいましたが・・・。

さらにサウジの隣に浮かぶ島国のバーレーンでもシーア派の住民が蜂起しています。
サウジアラビアは軍隊を派遣してこの運動を弾圧しますが、
拘束した一般人を拷問した事明らかになるなど、
さらに暴動が広がる気配が濃厚です。

サウジアラビアは国内のシーア派住民に、
これら周辺国の影響が及ぶ事を恐れていますが、
今週になってサウジアラビア東部の町で、
シーア派住民と警官隊の衝突が発生しています。

サウジアラビアは中東最大の産油国です。
アメリカの傀儡政権であるサウジ王室は、
シーア派住民の蜂起に怯え、
女性蔑視の政策を緩和したり、
国民の不満を抑える事に必死です。

しかし、サウジの内乱も「仕掛けられる」のですから
防ぐ手立てはありません。

■ 中東から撤退するアメリカ ■

先のヒラリー論文にもある様に、
アメリカは中東における影響力を維持出来なくなっています。
今年の12月をもって、イラク駐留も終了します。

サウジアラビアには米軍基地がありますが、
イスラム教の聖地であるサウジの地にある米軍基地に対する
イスラム教徒達の反感は、日本人が想像する以上のものです。
アメリカの中東における影響力が後退する中で、
中東の米軍基地はだんだんと維持不可能となってゆくでしょう。

■ イランに圧力を掛けるフランスの不思議 ■

フランスのサルコジ大統領は、ロスチャイルドの使いパシリです。
リーマンショック後の彼の活躍には眼を見張るものがあります。

フランスの中に引き籠っていたシラク政権とは180度異なり、
ドイツのメルケルの尻を蹴飛ばし、イギリスのキャメロンに喧嘩を売り、
中国を誘ってIMFのSDRを確立しようとしています。

そのフランスが、イランからの原油の禁輸処置を取る様です。
従来、イランとフランスの関係は良好でした。
イラン革命の父、ホメイニ氏の亡命先もフランスでした。

アメリカの影響力が後退した中東で、
フランスは積極的な外交を展開するかに思えましたが、
イランとの関係を悪化させる、原油取引の中止は意外な展開です。

近年、イランとの関係が良好なのは、中国とロシアです。
すこし深読みすると、ヨーロッパと中露で
中東の石油利権の住み分けをするのかも知れません。

イランとイランの勢力下にはいるイラクの石油は中露。
リビアとトルコはヨーロッパ。

スーダンのPKOにNATOが積極的なので、
アフリカの利権はヨーロッパが掌握するのでしょう。

問題はアメリカが撤退した後にサウジアラビアなど
アラビア半島の利権が中露なのか、ヨーロッパなのかですが、
シーア派という流れから行くと、中露なのかなとも思います。

■ 日本の石油はどうするのか? ■

日本は現在、原油の中東依存度が高い状態です。
アメリカが太平洋国家に変貌する中で、
世界のGDPの1/2を占めるこの地域を支える石油はどうするのでしょう?

太平洋地域の大きな油田は、インドネシアとブルネイにありますが、
これだけでは足りないでしょう。

アメリカも産油国ですが、陸上の有望な油田は開発され尽くしているので、
もっぱらメキシコ湾の海底油田の開発に期待が掛ります。
(一説には、北西部に巨大油田が隠されているとの噂も)

アメリカがミャンマーにご執心なのは、
ミャンマーに有望な海底油田があるからだとも言われています。
中国もミャンマーの油田に注目しています。

東シナ海や南シナ海にも油田がありそうですが、
ここら辺は、中国との揉め事の原因になりそうです。

■ ハイパーインフレはやはり原油価格で操作される ■

現在世界中で通貨の信任が揺らいでいます。
もし、通貨価値が暴落する事があるならば、
原油価格は高騰します。

原油はあらゆる物の原料やエネルギーですから、
原油価格の高騰によりインフレは加速します。

各国はどうにかして原油を手に入れようと必死になるでしょう。
この時、ドルが原油の決済通貨として機能していれば、
ドルの需要が大発生して、ドルとアメリカは一気に復活します。

一方、ヨーロッパや中露がドル不足に喘ぐ事になります。

中東の政治地図の塗り替えは、実は石油決済通貨の多様化に連動していそうです。
ユーロ、元、ルーブル、ドルでそれぞれ決済が行われるようになり、
石油に裏打ちされた通貨が通貨危機で生き延びて、
SDRに組み込まれるのかも知れません。

■ 急激な円安とインフレに注意 ■

現状、日本は円高に喘いでいます。
しかし、一度、原油価格が高騰し始めたら、
円高こそが、日本の生命線になります。

財政危機によって日本国債が暴落したら、
円も同時に暴落します。

急激な円安によって輸入価格と原油価格は高騰します。
石油ショック後に欧米を襲ったスタグフレーションの巨大な波が日本を襲います。

■ エネルギーコストが高騰する ■

さてこの様な状況過で、原発を止め続ける事は出来るでしょうか?
国民は欲のままに動く存在です。

月々の電気代が2倍、3倍になってゆく状況では、
「原発も止む無し」という現実的な判断をするでしょう。

しかし、震度6で確実に原発が壊れる我が国では、
いずれ第二、第三の福島原発事故が発生し、
その度に、国土のいくらかが居住不能となり、
農地のいくらかが、耕作不能となります。

低線量率放射線の安全性(危険性)の問題を、
正面から論議し、その危険性をどこまで許容するか
国民的コンセンサスを現在確立しておかなければ、
日本は原発によって滅ぶ(危険性が存在しなくても)かも知れません。

日本のマスコミは中東情勢や石油情勢を1970年代に比べ、軽視しています。
いつでも世界は石油情勢によって動いている事を、
国民の目から隠しています。

「中東の春」などという世迷言を書き続けるメディアなど、消えて無くなってしまえ!!

<再録シリーズ>遅れてきた名作・・・エウレカセブン」

2011-11-25 18:04:00 | アニメ
 

世界の破局が近づいている今だからこそ、
それを載り越える愛と勇気が欲しい。

エウレカセブンはロボットアニメが衰退の一途を辿った時代の、
遅れて現れた名作です。
全50話を見終わった時の感動たるや・・・。

2年程前の記事ですが、閉塞した世界だからこそ、
今改めてエウレカセブンの意味を問いたい!

「エウレカセブン・・・豊穣な世界」 2009.01.20 から再録




■パチンコ屋さんの看板の「エウレカセブン」って何■

「エウレカセブン」というアニメをご存知でしょうか?
最近、パチンコ屋の店先に看板が立っているアレです。
ロボットの前で、少年少女が爽やかに笑っているアレです。

パチンコを打たない身としては、パチンコとロボットアニメがどう結びつくか、
皆目見当もつきませんが、エバンゲリオン、アクエリオンと来て、
次はどうやらエウレカセブンのようです。

パチンコ台になるくらいだから、それなりの作品かと思い、
早速ネットで見てみました・・・、って、これ50話もあるじゃない・・。


■空から少女とロボットが落ちてきた■

良い子のアニメの鉄則はボーイ・ミーツ・ガール。
突然出合ったあの子にハートを鷲掴みにされて、
カッコイイ所見せたさに、がむしゃらに頑張る健全な男子の話が基本。

ラピタだって、ジータが可愛いからパズーはあんなに頑張っちゃう。
エヴァのシンジだって、かなりネジ曲がっているけど基本は同じ。

エウレカセブンも基本はしっかりボーイ・ミーツ・ガール。
ただ、空から落ちてきた彼女が、ちょっと変な子だっただけ。
なんせ、人間の形をして人間の心を持ち合わせていない・・・。
そう、この星を覆う謎の知性体コーラリアンが人と接触する為に作り出した
人型コーラリアンだったのだから。
彼女の名前はエウレカ。彼女に夢中になったのはレントン・サーストン。

舞台は人類が移住した惑星。
砂の様なスカブ・コーラルに覆われ、度重なる地殻変動が人類を襲う星。
人々はトラパーというエネルギーの流れに乗って飛行機を飛ばし、
又、トラパーの波に乗って空中をサーフィンの様に滑空(リフ)する。
トラパーからエネルギーを取り出して機械を動かしたりも出来る。

そんな世界のプロのリフライダー集団が月光ステイト。
月光ステイトはレントンの憧れ。
そして、何故かエウレカも月光ステイトのメンバー。
気がつけば、エウレカを守りたい一心にレントンも月光ステートのメンバーに。

ここまでは、少年向けロボットアニメの大道です。
大空を翔るリフボード、
軽やかにトラパーの波に乗って滑空するロボット(VFO)。

■エウレカセブンは変なアニメだ■

しかし、視聴者は直ぐに気づくでしょう。
「エウレカセブン」は変なアニメだと・・・・。

何故なら、キャラクターのデザインがバラバラなんです。
今風のキャラクターもいれば、お前手塚アニメか?ってのもいるし、
サイボーグ004もいれば、ちょっと間違えば超人ロックもいる。
極め付けは、往年の東映ロボットアニメのキャラ風から、
イデオン時代の湖川友謙キャラ風までが、ワラワラ出てくる。

イデオン風のエッジの効いた科学者ミーシャの旦那が、
細野不二彦風の巨大頭だったりするから、これはもう呆然となってしまいます。
さらに、各キャラクターの動きや背景も、その時代のアニメ風だったりします。

これが邪魔をして話に集中出来ないオトモダチも多いのではないのでしょうか?


■これは罠です■

これは罠です。
何をハメル為かというと、オタクを振るい落とす為の。
この程度の陽動で、「キャラの絵がバラバラじゃん」とか、
「作画崩壊してるよね」なんていうオタクは、
この素晴らしい作品を見る資格が無いのです。

かつて、富野監督はイデオンをあえて格好悪くデザインしました。
ガンダムが人気の時に、作品の内容よりプラモデルに人気が集中した経験があるからです。
エウレカセブンはキャラクターもむちゃくちゃですが、
肝心のロボットもかなりのものがあります。
何故か車になっちゃいます。
さらに、他のメカの方が圧倒的に格好良いのです。

さらに、主人公エウレカは姿はどんどんと崩れていってしまいます。
それは、お岩さん顔負けなくらいに。

でも、ここで声を大にして言いたい。
素晴らしい作品にとって、キャラクターなんて、瑣末な事に過ぎないと。
作者はあえて、オタクが寄り付くのを嫌って、
こんな、オタクトラップを仕掛けたのでしょう。

■SFとして、ビルディングストーリーとして圧倒的な力■

エウレカセブンはタイトルにあるように、交響曲のようにその音色を変えて行きます。

少年の無垢な憧れが奏でるファンファーレに始まり、
二人の気持ちのすれ違いが、通奏低音のように広がって行く。
挫折から立ち直った二人が、主題を高らかに歌い上げたと思えば、
世界の真理が音の波のように遅い掛かって来る。
不安と絶望による何度かの変調を繰り返しながら、
最後天上に響く歌声となって昇華する世界・・。

初めは少年の日常の視線で始まる物語は、
少年が世界を知る事で、重みを増していきます。
人を殺す事を知り、それでもエウレカ守る事を決意し、世界を守る事を決意する。

今まで、日常として見えていた大地は、
スカブ・コーラリアンという知性体であった。
今まで、憧れの女の子だったエウレカは、
スカブ・コーラリアンが人類と接触を図る為に送り出した人型コーラリアンだった。
憧れの対象であった月光ステイトは、
軍と敵対する、テロリストだった。
そして、この星はコーラリアンによって蹂躙された地球であった・・。
コーラリアンの目覚めが、情報力学の限界を突破して物理宇宙の崩壊を呼ぶものだった。

レントンは一つ、一つを学び、一つひとつ自分の道を選択していきます。

そう、エウレカセブンとは重厚なSF的背景の上に、
クールなサーフカルチャを纏いながら繰り広げられる
少年の真っ直ぐな成長の物語なのです。

■タルコフスキーと手塚治虫を繋げる荒業■

SF的視点に立てば、エウレカセブンは「惑星ソラリス」です。
あるいは、ロボットを過去の遺構から発掘するんのは、「ストーカ」かもしれません。
いずれにしても、ロシアの映像詩人、アンドレー・タルコフスキーの影響が、
あるいは原作のスワニフラフ・レムやストゥルガスキー兄弟の影がよぎります。
私達の若い時代は、タルコフスキーは「神」でしたから・・・。
ソラリスの海が、スカブ・コーラル。
ソラリスの海が生む実体幻影がエウレカ・・・。

これだけを、今風のキレイ絵で、スタイリッシュに展開する方法は容易に想像できます。
しかし、エウレカで取られた手法は、過去のアニメのリミックスでした。
キャラクターのリミックス、シーンのリミックス、設定のリミックス。
これを、表面上だけ見れは「パクリ」といいます。

しかし、「リミックス」はアートであり手法です。
過去の表現の強靭なイメージを作品に外挿する手法です。
30分を費やして、手塚治虫の世界の豊穣さを表現するよりも、
手塚的キャラクターと演出を外挿する方が一瞬で済みます。
このスピード感と密度感を勝ち得た物が現代の表現者です。

エウレカセブンはリミックスによってタルコフスキーの世界と手塚治虫の世界を
繋ぎあわせるという荒業をやってのけます。

それは、映画やSF小説という土壌と、日本アニメという肥沃な土壌から
栄養を吸い上げて、作品を作る事に他なえいません。

■アニメという大地に咲く花■

最近はアニメの技術も進んで、美しいアニメや
スタイリッシュな映像はいくらでも見る事が出来ます。
しかし、どれも、模倣と再生産、消費のサイクルから出るものではありません。

エバンゲリオンは、そんな時代に咲く仇花のような作品でしたが、
我が子に見せられるような物ではありません。

いくら、時代が複雑になったからといって、
子供は真っ直ぐに夢に突き進んでいって欲しいと思います。
今、そういう分かり易いアニメに出会う事が無くなりました。

息子の受験が終わったら、エウレカセブンを見せてあげようと思います。
日本のアニメの土壌の豊かさを味わう作品として。
(息子にはダサいと一蹴されそうですが。)


<追記>

劇場版がDVDで出ていますが、内容はTV版とは全くの別物です。
ご注意あれ。



オマケに「エウレカセブン」のもうひと組みのカップル、
アネモネとドミニクのシーンを見事に編集した動画を見つけました。
エウレカとレントンの物語は、救われない物語でもあるのですが、
この二人の存在が、そんな気持ちを緩和してくれます。

http://www.youtube.com/watch?feature=fvwp&NR=1&v=CXyB98UDmpk

ヒラリー論文に見るアメリカの本気

2011-11-25 11:01:00 | 時事/金融危機
 


■ 米国大使館のサイトより全文引用 ■

「米国の太平洋の世紀」 - クリントン国務長官のフォーリン・ポリシー誌への寄稿
*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

ヒラリー・クリントン国務長官のフォーリン・ポリシー誌(2011年11月号)への寄稿

政治の将来を決めるのはアフガニスタンでもイラクでもなくアジアであり、米国はその活動の中心にいる。

 イラク戦争が終わりに近づき、米軍がアフガニスタンからの撤退を始めている今、米国は重要な局面を迎えている。この10年間、米国はこの2つの戦域に膨大な資源を割り当ててきた。今後10年間は、米国の指導力の維持、国益の確保、米国の価値観の推進のため最も有利な立場に立てるように、時間とエネルギーの投資先を賢明かつ体系的に判断する必要がある。従って今後10年間の米国の国政における最も重要な目的のひとつは、外交、経済、戦略などの面でアジア太平洋地域への投資の大幅な増加を確実にすることである。

 アジア太平洋地域は国際政治の主要な推進力になった。インド亜大陸から南北アメリカ大陸の西岸まで広がるこの地域には、海運と戦略により結び付きを強めている太平洋とインド洋がある。この地域には世界の人口のほぼ半数が集まっており、世界経済の主な原動力となっている国の多くや、世界有数の温室効果ガス排出国もある。またこの地域には米国の主要同盟国や、中国、インド、インドネシアのような重要な新興国も存在する。

 アジア太平洋地域が安定と繁栄の促進に向け、より成熟した安全保障と経済の枠組みを構築しようとしている今、この地域への米国の深い関与が不可欠である。米国の関与はこうした枠組みの構築を助け、今世紀も持続する米国の指導力にとっても有益であろう。それはちょうど第2次世界大戦後、さまざまな機関や関係を網羅する永続的な大西洋横断ネットワークの構築への米国の関与が何倍もの良い結果をもたらし、それが現在も続いているのと同様である。米国が太平洋国家として同様の投資をする時が来ている。これはバラク・オバマ大統領が政権発足当初に定めた戦略的方針であり、すでに成果を挙げている。

 イラクとアフガニスタンがまだ移行期にあり、米国内では深刻な経済的課題に直面している今、米国の政界には米軍の再配置ではなく帰還を求める者もいる。彼らは国内の差し迫った課題を優先させ、国外への関与の縮小を求めている。そうした衝動は理解できるが見当違いである。もはや米国には世界に関与する余裕がないと言う人は、事実を全く逆にとらえている。米国は世界に関与しないわけにはいかないのである。米国企業のための新規市場の開拓から、核拡散の抑制、通商と航行のためのシーレーンの確保まで、米国の国外での取り組みが国内の繁栄と安全の鍵を握っている。米国は60年以上にわたり、この「帰還」議論が人を引きつける力と、こうした主張に内在するゼロサム論理に抵抗してきた。こうした抵抗を再び繰り返さなければならない。

 国外では人々が米国の意図、すなわち関与と主導を続ける米国の意欲について疑問を抱いている。アジアの人々は米国が本当にアジアにとどまり続けるのか、他の地域での出来事により再び注意をそらされる可能性はないのか、米国は経済・戦略面で信頼できる約束をし、その約束を守れるのか、そしてそうした約束を裏打ちする行動が取れるのか疑問に思っている。そうした疑問に対してはこう答えよう。「米国には約束を実行する能力と意志がある」

 アジアの成長と活力の利用は米国の経済・戦略的利益にとって重要であり、オバマ大統領の主な優先事項のひとつである。アジアにおける開かれた市場は投資、貿易、さらには最先端技術へのアクセスという点でかつてない機会を米国に提供する。米国内の景気回復は輸出と、アジアの拡大する巨大な消費者基盤を米国企業が活用できるかどうかにかかっている。戦略面では南シナ海の航行の自由の防衛、北朝鮮による核拡散活動への対抗、地域の主要な国々の軍事活動の透明性の確保など、手段を問わずアジア太平洋地域全体の平和と安全を維持することが、世界の前進のためにますます重要となっている。

 アジアが米国の将来にとって極めて重要であるのと同様に、米国の関与もアジアの将来にとって不可欠である。この地域は今、おそらく近代史上最も強く米国の指導力と関与を望んでいる。この地域に同盟国との強力なネットワークを備え、領土についての野心を持たず、共通の利益を提供してきた長い実績を持つ唯一の大国が米国である。われわれは同盟国と共にアジアのシーレーンを巡回し、安定を維持して、何十年にもわたり地域の安全を保障してきた。それがひいては経済成長の環境整備に役立ってきた。米国は経済生産性、社会的エンパワーメント、人と人とのつながりを促進し、アジア太平洋全域の非常に多くの人々の世界経済への統合に貢献している。米国は主要な貿易・投資パートナーであり、太平洋の両側で労働者や企業に恩恵をもたらすイノベーションを生み出し、毎年アジアから35万人の留学生を受け入れ、開かれた市場を支持し、普遍的な人権を擁護している。

 太平洋地域での掛け替えのない米国の役割を全面的に受け入れる、米国政府全体の多面的で持続的な取り組みをオバマ大統領は主導してきた。これまでこうした取り組みは目立たないことが多かった。その特質ゆえに(長期的な投資は目前の危機ほど関心を引かない)、また世界の他の地域でトップニュースになるような出来事が起きているがゆえに、その多くはメディアで大きく報じられることがなかった。

 私は慣習を破り、国務長官として就任後初の公式外国訪問でアジアを訪れた。それ以来7回の訪問で、私はこの地域の急速な変化を直接目にする機会に恵まれ、米国の将来がアジア太平洋地域の将来といかに密接に絡み合っているかを端的に示してきた。この地域への戦略的方向転換は、米国の国際的指導力の確保と維持に向けた全世界での取り組みに論理的に合致する。こうした転換を成功させるには、米国の国益に対するアジア太平洋地域の重要性について超党派の合意を維持し、推進する必要がある。何十年にもわたり党派を問わず歴代の大統領や国務長官が実践してきた関与という根強い伝統を、われわれはさらに推し進めようとしている。戦略的方向転換の成功には、米国の選択が世界に及ぼす影響を考慮した、一貫性のある地域戦略を賢明な形で実施する必要もある。

 それはどのような地域戦略だろうか。まず私が「前方展開」外交と呼ぶ活動を維持する必要がある。前方展開外交とは政府高官、開発専門家、複数の省庁で構成されるチーム、常勤職員など、米国のあらゆる「外交資産」をアジア太平洋地域のあらゆる国や地域へ今後も送り続けることである。米国の戦略はアジア各地で起きている急速かつ劇的な変化を把握し、これに対応し続けなければならない。これを踏まえ、われわれの仕事は6つの主な行動方針に沿って進められる。すなわち2国間安全保障同盟の強化、中国など新興国との実務関係の深化、地域の多国間機関への関与、貿易と投資の拡大、広範囲に及ぶ軍の駐留の実現、民主主義と人権の推進である。

 米国はその地理的な特質により、大西洋国家であると同時に太平洋国家でもある。われわれはヨーロッパとのパートナーシップとそれがもたらすあらゆる成果を誇りとしている。米国の現在の課題は、大西洋を越えて築いてきたネットワークと同様に、さまざまなパートナーシップや機関で構成される、米国の国益や価値観に合った持続的なネットワークを太平洋を越えて築くことである。これは全ての地域における米国の取り組みの試金石となる。

 米国が日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイのそれぞれと結んだ条約に基づく同盟は、米国のアジア太平洋地域への戦略的方向転換の支点である。これらの同盟は半世紀以上にわたり地域の平和と安全保障を担い、この地域の目覚ましい経済発展を促す環境をつくってきた。これらの同盟は安全保障上の課題が変化する時代に、米国が地域に及ぼす影響力を利用する一方で、この地域での米国の指導力を強化している。

 これらの同盟は大きな成果を挙げているが、単にこれを維持するだけでは足りず、変化する世界に合わせて更新していく必要がある。その際、オバマ政権は3つの主な原則に従っている。第1に、米国はそれぞれの同盟の中核的な目標について政治的合意を維持する。第2に、新しい課題への取り組みを成功させ、新たな機会をとらえられるよう、わが国が結んでいる同盟が機敏に状況に順応できるようにする。第3に、同盟の防衛能力と通信インフラが作戦面でも物質面でも、あらゆる国家や非国家主体による挑発を抑止する能力を備えていることを保証する。

 オバマ政権がこれらの原則をどのように実践しているかは、この地域の平和と安定の基盤である日本との同盟を見れば明らかだ。日米両国は航行の自由から開かれた市場や公正な競争まで、明確な規則を持つ安定した地域の秩序という理想を共有している。また日本での米軍駐留の継続を確実にする一方で、地域の安全保障上の問題を抑止し迅速に対応するための合同の情報・監視・偵察活動や、サイバー攻撃の脅威に対処するための情報交換を拡大する新しい取り決めに同意している。この取り決めには日本政府からの50億ドル以上の資金拠出も含まれる。企業によるアクセスや人と人とのつながりを強化するオープンスカイ協定を締結し、アジア太平洋地域についての戦略対話を開始し、アフガニスタンでは2大援助国として協力している。

 同様に韓国との同盟も強化と作戦面での統合が進んでおり、北朝鮮の挑発行為に対する抑止と対応に向け共同能力の開発を続ける。米韓は戦時作戦統制権の円滑な移行を確実にする計画について合意しており、米韓自由貿易協定の成立を見込んでいる。G20および核安全保障サミットでの協力や、ハイチとアフガニスタンでの共同活動を通じ、米韓同盟は世界規模になっている。

 米国はオーストラリアとの同盟も、太平洋地域のパートナーシップからインド太平洋地域のパートナーシップへ、さらには世界規模のパートナーシップへと拡大している。サイバーセキュリティーからアフガニスタン、「アラブの目覚め」、アジア太平洋地域の地域的枠組みの強化に至るまで、オーストラリアの助言と関与が不可欠であった。東南アジアでは米国はフィリピンおよびタイとの同盟を再確認・強化しており、例えばフィリピンに寄港する船舶の数を増やしたり、ミンダナオでの統合特殊作戦任務部隊によるフィリピンのテロ対策部隊の訓練を確実に成功させようと努力している。アジアにおける米国の最も古い条約相手国であるタイでは、地域の人道および災害救援活動の拠点構築に努めている。

 米国は新たな必要性に応じて既存の同盟を更新すると同時に、共通の問題の解決に向け新たなパートナーシップも構築中である。中国、インド、インドネシア、シンガポール、ニュージーランド、マレーシア、モンゴル、ベトナム、ブルネイ、そして太平洋諸島の国々への米国の働きかけはいずれも、この地域における米国の戦略と関与に関し、より包括的な手法を取れるようにするためのより広範な取り組みの一環である。米国はこうした新たなパートナー諸国に、われわれと共に規則に基づく地域および国際秩序を構築し、これに参加するよう求めている。

 これらの新たなパートナーの中でも最も際立つ存在のひとつは、言うまでもなく中国である。これまでの多くの国々と同様、中国も米国が構築に貢献し維持に努めている開かれた、規則に基づく制度の一員として繁栄してきた。対中関係は現在、米国がこれまでに対処しなければならなかった2国間関係の中で最も困難で重要なもののひとつである。この関係は慎重に、落ち着いて、しかも精力的に取り組む必要がある。これは現実に基づき結果を重視した中国への対処法であり、わが国の原則と国益に即している。

 周知の通り、太平洋の両側には今も恐怖心と誤解が残っている。米国には中国の進歩を米国への脅威と見る人がいる。中国には米国が中国の成長を抑圧しようとしていると懸念する人がいる。われわれはこうした見方をいずれも否定する。実際には、繁栄する米国は中国の利益になり、繁栄する中国は米国の利益になる。米国も中国も、対立より協力からはるかに多くを得られる。しかし願望だけでは関係を構築できない。前向きな言葉を効果的な協力へとより堅実に転換できるか、そして極めて重要なこととして、それぞれの国際的な責任と義務を果たせるかどうかは、米中両国次第である。こうした要因により、今後米中関係がその可能性を実現できるかどうかが決まる。また両国は意見の相違についても正直でなければならない。われわれは協力して取り組むべき緊急の仕事を進めるに当たり、意見の相違に毅然(きぜん)と断固たる態度で対処する。非現実的な期待は避けなければならない。

 過去2年半の私の最優先事項は、共通の利害のある分野を見極め拡大すること、中国と協力して相互の信頼を築くこと、そして世界的な問題解決に積極的に取り組むよう中国を促すことであった。そのためティモシー・ガイトナー財務長官と私は、戦略経済対話を開始した。これは米中の政府間協議の中でも最も集約的かつ包括的であり、両国の多くの政府機関が集まり、安全保障からエネルギー、人権まで、米中の最も喫緊の課題を話し合う。

 われわれは米中の軍隊間の透明性の向上と判断ミスや間違いのリスクの軽減に努めている。米国と国際社会は中国による軍の近代化および拡張の取り組みに注目し、中国の意図を明らかにしようとしてきた。透明性を高めるような継続的・実質的な軍隊間の関与は、双方にとって有益である。従ってわれわれは中国政府が時には不本意な気持ちを抑え、米国と共に永続的な軍隊間の対話を構築していくことを期待する。軍民の指導者たちが海上の安全保障やサイバーセキュリティーなどの慎重を要する問題を話し合う戦略安全保障対話の強化に向け、両国が協力する必要もある。

 米中が共に信頼を築いていく中、米国は中国と協力し、地域および世界における極めて重要な安全保障上の問題に取り組む決意である。そのため私は頻繁に、しばしば非公式の場で、中国側の戴秉国国務委員および楊潔篪外相と会い、北朝鮮、アフガニスタン、パキスタン、イラン、そして南シナ海の情勢などの重要課題について率直な話し合いをしてきた。

 経済面では米国と中国は、将来的に強固で持続的かつバランスの取れた世界的経済成長を確保するため協力する必要がある。世界金融危機の後、米国と中国は瀬戸際にあった世界経済を救うため、G20を通じて効果的に活動した。両国はその時の協力関係を基盤として前進しなければならない。米国企業は成長する中国市場への公平な輸出機会を求めている。これは米国内で雇用を生み出す重要な要因になるとともに、中国に投資された500億ドルの米国資本が世界的な競争力を支える新しい市場と投資機会の強固な基盤を作る保証にもなりうる。一方中国企業は、米国からのハイテク製品の輸入や対米投資を増やし、市場経済が享受するのと同じアクセス条件の付与を望んでいる。米中両国はこうした目標に向かって協力できるが、中国は今もなお改革に向け重要な措置を取る必要がある。特にわれわれは、米国をはじめとする外国企業とその革新的技術に対する不公正な差別の撤廃、国内企業優遇策の廃止、外国の知的財産権に損害を与えたり盗用したりする措置の廃止に向け中国と協力している。さらにドルや中国の他の主な貿易相手国の通貨に対し、中国が自国通貨の切り上げを加速する措置を取ることを期待している。こうした改革は、米中両国のためになる(事実、国内主導型の経済成長を目指す中国の5カ年計画の目標を支援する)だけでなく、世界経済の均衡、予測可能性、より広範囲に及ぶ繁栄に貢献できる。

 言うまでもなく、米国は公式に、また非公式な形で、人権に関する深刻な懸念を極めて明確に表明してきた。公益活動をする弁護士、作家、芸術家といった人たちが拘留されたり行方不明になったりしたという報告があれば、米国は公式にも非公式にも人権に関する懸念をはっきりと主張する。われわれは中国の政府関係者に対し、中国が国際法を深く尊重し、より開かれた政治体制を採用すれば、はるかに大きな安定と成長の基盤を得られるとともに、パートナー諸国の信頼を高められると主張する。そうしなければ、中国は自らの発展に不要な制約を加えていることになる。

 究極的には、進化する米中関係の指針となる手引書はない。しかし、われわれにとって失敗するにはリスクが高すぎる。われわれは前進するに当たり、安全保障同盟、経済ネットワーク、そして社会的つながりという、より広範な地域の枠組みの中に引き続き対中関係を組み込んでいく。

 今後われわれが緊密に協力していく主な新興国の中にインドとインドネシアがある。この2カ国はアジアでも有数の活力ある重要な民主主義国であり、オバマ政権はこの両国との間に、より広く、深く、意義深い関係を求めてきた。インド洋からマラッカ海峡経由で太平洋に至る海には、世界で最も活発な貿易およびエネルギー輸送の航路がある。インドとインドネシアの人口を合わせると、すでに世界人口の4分の1近くを占める。この2カ国は世界経済の主要な推進力、米国の重要なパートナーであり、地域の平和と安全への貢献にますます中心的な役割を果たしている。この2カ国の重要性は今後さらに増す可能性が高い。

 オバマ大統領は昨年インド議会で演説し、米印関係は共通の価値観と利害を基盤とする、21世紀を特徴付ける協力関係のひとつであると述べた。まだ乗り越えるべき障害や答えを出すべき問題が双方にあるが、米国は戦略上インドの将来に賭けている。インドが国際舞台でより大きな役割を果たすことが平和と安全保障の強化につながり、インドの市場を世界に開放することが地域と世界の繁栄拡大への道を開き、インドの科学技術の発展が世界中で生活の改善と人間の知識の進歩を実現し、インドの活気ある多元的な民主主義がインド国民に多大な成果と改善をもたらし、他の国々にも同様の開放と寛容の道を進むよう促すことになる。そこでオバマ政権は米印2国間のパートナーシップを拡大し、インド、日本との新たな3カ国対話などを通じインドの「ルック・イースト」活動を積極的に支援し、インドを要とする、経済的統合と政治的安定が進んだ南・中央アジアという新たな構想を描いている。

 われわれはインドネシアとも新しいパートナーシップを構築中である。同国は民主主義国家としては世界で3番目、イスラム国家としては最も人口が多く、G20参加国でもある。米国はインドネシア特殊部隊との合同訓練を再開し、医療、教育交流、科学技術、防衛の各分野で多くの協定を締結している。今年はインドネシア政府の招きによるオバマ大統領の東アジアサミット出席で、米国が初めて同サミットに参加する。しかし前途にはまだ長い道のりがある。米国とインドネシアは官僚主義の障害、今も残る歴史的な不信感、相互の考え方や利害についての理解の相違を乗り越えるために協力しなければならない。

 米国はこれらの2国間関係を強化しながらも、多国間の協力の重要性を強調してきた。アジアが今直面しているような国境を越えた複雑な課題に取り組むには、協調した行動を取ることができる諸機関が必要と考えるからである。アジアにより堅固で統一の取れた枠組みができれば、知的財産権の保護から航行の自由の確保まで、効果的な国際秩序の基盤となる規則と責任のシステムを強化できる。多国間の場では、責任ある行動を取れば正当性を認められ、尊敬を得られるとともに、協力して平和と安定と繁栄を損なう者の責任を問うことができる。

 従って米国は、地域機関との協力は2国間関係に代わるものではなく、補完するものであるという点を念頭に置いて、東南アジア諸国連合(ASEAN)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などこの地域の多国間機関への全面的な関与を始めている。こうした機関の行動計画の設定に米国が積極的な役割を果たすことをこの地域は望み、またこれらの機関が効果的に機能し迅速な対応を取れば、米国の利益にもなる。

 オバマ大統領が11月に初めて東アジアサミットに出席するのはそのためである。その下地を作るために、米国はジャカルタにASEAN代表部を新設し、東南アジア友好協力条約の締約国となった。より結果を重視する行動計画の策定に力を入れる米国の姿勢は、南シナ海での紛争への対処に貢献してきた。2010年にハノイで開かれたASEAN地域フォーラムで、米国は南シナ海への自由なアクセスと航行の自由を保護し、南シナ海における領海権の主張を規定する主要国際規則を支持する地域全体の取り組みの具体化を支援した。全世界の商船トン数の半分がこの海域を通過することを考えると、これは重要な取り組みであった。この1年間に米国は、航行の安定と自由に関する米国の極めて重要な利益を守るという点で大きく前進するとともに、南シナ海で権利を主張する多くの当事者間で多国間外交を維持するための道を開いて、確立した原則と国際法にのっとる平和的な紛争解決を実現しようと努力してきた。

 またAPECを太平洋全域の経済統合と貿易上のつながりの推進を重視する、各国首脳が参加する重要な機関として強化する努力をしてきた。昨年APECはアジア太平洋自由貿易圏という大胆な提案をした。今年11月には、オバマ大統領が議長を務め、ハワイで首脳会議が開催される。われわれはアジア太平洋地域の筆頭地域経済機関としてのAPECの地位を固めるため尽力しており、開かれた貿易と投資の促進、能力開発および規制制度の強化に向け、先進国・地域と新興国・地域を団結させるような形で経済面の行動計画を設定する。APECとその活動は米国の輸出の拡大、および国内における質の高い雇用の創出と維持に貢献すると同時に、地域全体の成長を促進する。またAPECは、経済成長を促す女性の潜在的な力を発揮させる幅広い行動計画を推進するための主要な手段を提供する。これに関し、米国はパートナー諸国と協力し「参加の時代」の到来を加速させる意欲的な措置を取る決意である。参加の時代とは性別その他の特性に関係なく、すべての個人が世界市場の価値ある一員として貢献する時代である。

 これらのより広範な多国間機関への関与に加え、米国は多くの「少数国間(ミニラテラル)」会合の設立・発足を目指し多大な努力をしてきた。これは少数の当事国が具体的な課題に取り組む集まりである。その例としてカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムでの教育・医療・環境プログラムの支援のために発足させたメコン河下流域開発や、気候変動から魚の乱獲や航行の自由までさまざまな課題に取り組む加盟国・地域を米国が支援している太平洋諸島フォーラムなどが挙げられる。また米国はモンゴル、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国といった多様な国々と新たに3カ国で連携する機会も追求し始めている。さらにアジア太平洋地域の3大国である中国、インド、米国の連携と関与の強化も目指している。

 われわれはこのようなさまざまな方法で、即応性に優れ、柔軟で効果的な地域的枠組みを構築し参加するとともに、その枠組みが世界の安定と通商を保護するだけでなくわれわれの価値観を推進する、より広範囲に及ぶ世界的な枠組みとも確実につながるよう努めている。

 APECの経済面での活動に重点を置くことは、経済政策を重視し米国の外交政策のひとつの柱に据える米国のより広範な取り組みと一致する。経済の進展が強力な外交関係に依存し、外交の進展が強力な経済関係に依存する傾向がますます強まっている。当然のことながら、米国の繁栄の促進に重点を置くことは、アジア太平洋地域における貿易と経済の開放をより重視することを意味する。この地域はすでに世界の生産の半分以上、世界の貿易の半分近くを占めている。2015年までに輸出を倍増するというオバマ大統領の目標を達成すべく努力する中、米国はアジアでの事業をさらに拡大する機会を求めている。昨年の環太平洋地域への米国の輸出総額は3200億ドルで、米国の85万の雇用を支えた。従ってこの戦略の転換には米国にとって多くの恩恵がある。

 私がアジア各国の外務大臣たちと話す際、必ず取り上げられる話題がある。それは米国がこの地域の繁栄する貿易および金融取引に深く関与する、創造性に富んだパートナーであることを彼らが今も望んでいるということである。また米国各地の財界指導者たちと話をした時に聞かされるのは、米国によるアジアの活力ある市場への輸出と投資の機会の拡大がいかに重要かということだ。

 3月にワシントンで開催されたAPEC関連会合でも、そして7月には香港でも、私は健全な経済競争に見られる4つの特徴を挙げた。開放性、自由、透明性、そして公正である。米国はアジア太平洋地域への関与を通じ、これらの原則の具体化に貢献するとともに、その重要性を世界に示している。

 米国は新たな市場を開放しながら公正競争の基準を引き上げる、新しい最先端の貿易協定を追求している。例えば米韓自由貿易協定は、5年以内に米国から輸出される消費財および生産財の95%について関税を撤廃し、推定7万の米国の雇用を支える。関税引き下げだけでも米国製品の輸出額を100億ドル以上増やし、韓国経済を6%成長させる可能性がある。また米国の自動車メーカーとその従業員に公平な競争条件を提供する。従って米国の機械メーカーにとっても、韓国の化学製品の輸出企業にとっても、この協定は新たな顧客開拓の障壁を低減する効果を持つ。

 またわれわれは、先進国、途上国を問わず太平洋全域の国・地域の経済を集めてひとつの貿易圏をつくる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)でも前進している。われわれの目標は、より大きな成長だけでなく、より質の高い成長の実現である。貿易協定には労働者、環境、知的財産権、イノベーションを保護する強力な規定が必要と考える。また情報技術の自由な流れとグリーン技術の普及に加え、規制制度の一貫性とサプライチェーンの効率性を促進すべきである。最終的には、われわれが前進したかどうかは人々の生活の質によって測られる。つまり男性も女性も尊厳を持って働き、相応の賃金を得て、健康な家庭を築き、子どもたちを教育し、自らと次世代の生活を向上させる機会をとらえられるかどうかである。質の高いTPPが今後の協定の基準となり、より広範な地域の交流、そして最終的にはアジア太平洋自由貿易圏の基盤としての役割を果たすようになることを願っている。

 貿易関係で均衡を達成するには双方の深い関与が必要である。均衡とはそういう性質のものであり、一方的に押し付けられない。従ってわれわれはAPEC、G 20、2国間関係を通じ、より開放された市場、輸出に対する規制の削減、透明性の向上、公正さを実現する総合的な取り組みを推進している。知的財産権から「自主創新」まで、あらゆることについて予測可能な規則にのっとり、公正な競争条件で事業活動をしていると米国の企業と労働者が確信を持てなければならない。

 過去10年間のアジアの目覚ましい経済成長、そして将来も継続して成長する可能性は、日本と韓国に駐留する5万人以上の米軍兵士をはじめとする米軍が長年にわたり保証してきた安全保障と安定に依存している。領土や領海権をめぐる紛争から航行の自由に対する新たな脅威、自然災害による影響の増大まで、今日の急速に変化するアジア地域の課題に対処するには、より地理的に分散し、作戦面で弾力性があり、政治的に持続可能な米国の軍事態勢が必要である。

 米国は北東アジアにおける従来の同盟諸国との基地に関する取り決めを近代化しようとしており、固い決意でこれに臨んでいる。一方で東南アジアからインド洋での駐留態勢も強化しつつある。例えばシンガポールに沿岸戦闘艦を配備する予定であり、その他にも米国とシンガポールの軍隊が合同で訓練・作戦を実施する方法を検討している。またオーストラリアとは今年、合同訓練・演習の機会を増やすため同国に駐留する米軍の規模の拡大を検討することで合意した。さらに東南アジアおよびインド洋への軍事アクセスを拡大し、同盟国やパートナー諸国との交流を深める手段も検討している。

 インド洋と太平洋の結び付きの強まりを軍事上の概念にどう転換するかは、われわれがこの地域の新たな課題に対応するために答えを出さなければならない問題である。こうした状況の中では、軍の駐留を地域全体により広く配置すれば大きな効果がある。米国は人道的任務への支援がしやすくなる。また同じくらい重要なことに、より多くの同盟国やパートナー諸国と協力することで、地域の平和と安定を損なう脅威や活動に対する防衛を強化できる。

 しかし米国の軍事力あるいは経済規模以上に、国家としての米国の最も有効な資産はわれわれの価値観の力、中でも民主主義と人権への確固たる支持である。これはわれわれの中に最も深く刻まれた国民性であり、アジア太平洋地域への戦略的方向転換も含め、米国の外交政策の中核となっている。

 こうした問題で意見を異にするパートナー諸国との関与を深める中で、米国は統治の改善、人権の保護、政治の自由の推進をもたらす改革を支持するよう、こうした国々に引き続き求めていく。例えばベトナムに対しては、われわれが望む戦略的パートナーシップの構築には、ベトナムが人権保護と政治的自由を推進する措置を取る必要があると明確に伝えている。またビルマに対しては、人権侵害の責任を追及する決意である。首都ネピドー(の政府)の動きや、増加するアウン・サン・スー・チー氏と政府指導層との接触を注意深く見守っている。米国はビルマ政府に対し、政治囚の釈放、政治的自由と人権の推進、過去の政策からの脱却を強く訴えてきた。北朝鮮に関しては、平壌政権は自国民の権利を無視し続けており、われわれは北朝鮮政権がこの地域や世界に及ぼす脅威を強く非難し続ける。

 米国は自国の制度を他国に強制できないし、またそれを望んでもいないが、ある一定の価値観は普遍であり、アジアを含む世界中のあらゆる国の人々がこの価値観を尊び、安定した平和で繁栄する国家にはこの価値観が本来備わっていると信じている。これまでも世界中の人々がそうしてきたように、最終的には自らの権利と目標を追求するかどうかはアジアの人々が決めることである。

 この10年間、米国の外交政策は冷戦後の平和の配当への対応から、イラクとアフガニスタンへの難しい関与へと移行してきた。これらの戦争が終わりに近付く中、われわれは世界の新たな現実への対応に向け政策を転換する努力を加速する必要がある。

 こうした新たな現実が新たな形で革新し、競争し、主導することを米国に求めているとわれわれは認識している。米国は世界の出来事から手を引くのではなく、前に出て新たな指導力を発揮する必要がある。資源の乏しい時には、利益を最大化できるところに資源を賢く投資する必要があることに疑いはない。だからこそアジア太平洋は、21世紀に米国に絶好の機会する地域となる。

 もちろん他の地域も非常に重要であることに変わりはない。米国の従来の同盟国の大半を擁するヨーロッパは今も頼りになるパートナーであり、喫緊の国際的課題のほとんどについて米国と連携しており、われわれは同盟の機構の更新に向け投資している。中東および北アフリカの人々は新たな進路を定めつつある。彼らが歩む道はすでに世界的に大きな影響を及ぼしており、この地域が変革する中、米国は積極的かつ持続的なパートナーシップを約束している。アフリカは今後、経済・政治的に発展するための大きな、まだ手つかずの可能性を持っている。また西半球の近隣諸国は、米国にとって最大の輸出相手国であるだけでなく、国際的な政治・経済問題でもその役割を拡大している。これらの地域はいずれも、米国の関与と指導力を求めている。

 米国は指導力を発揮する用意がある。世界中に米国が力を持ち続けられるか疑いを持つ人々がいることはよく承知している。そのような意見は以前にも聞いたことがある。ベトナム戦争が終わった時、米国が後退期にあるという見方を世界中の評論家が盛んに言い立てた。そしてそのテーマは数十年ごとに繰り返されている。しかし米国は、挫折を経験しても、必ず改革と革新により乗り越えてきた。さらに強くなってよみがえる米国の力は、近代史上、他に類を見ない。それは自由な民主主義と自由企業という米国の規範から生まれるものであり、その規範は今も変わらず、人類が知る中で最も力強い、繁栄と進歩を生み出す源泉である。私がどこへ行っても聞かされるのは、世界は今も米国の指導力を求めているということである。米軍の強さと米国経済の規模は世界でも群を抜いている。米国の労働者は世界で最も生産性が高い。米国の大学は世界中で高い名声を得ている。従って20世紀と同様、21世紀も米国に国際的指導力を確保し維持する力があることは疑うべくもない。

 今後60年間のアジア太平洋地域への関与に向けて準備を進めるに際し、米国は過去60年間にわたりわが国の関与を方向付けてきた超党派の伝統を忘れていない。われわれは国外での米国の指導力の確保と維持のために国内で取るべき措置、すなわち貯蓄の増加、金融制度の改革、借入れへの依存の低減、党派間の対立の克服といった措置に重点を置いている。

 このような政策の転換は容易ではないが、われわれは過去2年半にわたりその準備を整えてきた。現代の最も重要な外交への取り組みのひとつとして、これを最後までやり遂げる覚悟である。


<再掲載>食料輸出大国アメリカの戦略・・・TPPとは何か?

2011-11-23 03:25:00 | 分類なし
 

今年1月に書いた記事ですが、早すぎた感があるので、リサイクルします。

<再掲載 ・食料輸出大国アメリカの戦略・・・TPPとは何か? 2011.01.17> 




■ アグリビジネス ■

カーギル、モンサント、デュポンと聞いてピンと来る方は、国際情勢に興味をお持ちの方でしょう。この3社はアメリカの食料戦略に深く関わっています。

アメリカでは農業関連産業の事をアグリビジネスと呼びます。食物売買や加工はもちろんの事、種苗、農薬、肥料、備蓄など多くの産業を含んでいます。

■ 農業輸出大国 ■



上の表はアメリカの輸出の内訳です。

① 食品の輸出            8.9%
② 自動車の輸出           7.7%
③ コンピューター・周辺機器・半導体合計  7.1%
④ 航空機              3.3%

武器輸出がどこに含まれるのか不明ですが、アメリカの輸出において食品が占める割合が大きい事が良く分かります・

■ 戦略的食料輸出・・・兵器としての食料 ■  

キシンジャーはかつてこう語っています。

「石油をコントロールせよ。そうすれば諸国の政治経済を自在にコントロールできる。食料をコントロールせよ。そうすれば人口をコントロールできる」

アメリカの食料戦略が明確になったのは1954年に制定されたPL480「平和の為の食料」からです。


PL480法案(正式名称:農業貿易促進援助法)

1.アメリカ農産物をドルではなく、その国の通貨で購入でき、
 しかも代金は後払い(長期借款)でよい。

2.その国の政府がアメリカから代金後払いで受け入れた農産物を
 その国で民間に売却した代金(見返り資金)の一部は、
 事前にアメリカの協議のうえ経済復興に使える。

3.見返り資金の一部は、アメリカがその国での現地調達などの
 目的のほか、アメリカ農産物の宣伝、市場開拓費として
 自由に使える。

4.アメリカ農産物の貧困層への援助、災害救済援助及び
 学校給食への無償贈与も可能である。

というのがPL480の概略です。途上国は自国通貨で食料を調達でき、さらには後払いで良い事から、アメリカからの食料輸入に飛びつきます。

一方、アメリカは3、と4の項目で学校給食への無償供与などを行い、その国の伝統的な食事を変革していきます。

■ 食料と言う戦略物資 ■

アメリカからの食料支援や輸入によって途上国では自国の農業が衰退していきます。一方で途上国では自給型農業から輸出型農業へのシフトが起こり、外貨が獲得できるコーヒーなどへの転作進んでいきます。

さらに、肉食文化が浸透する事で、飼料穀物の輸入が増えていきます。

一方、アメリカでは穀物の国家備蓄を止め、カーギルなどの巨大穀物会社の在庫が備蓄を担うようになります。彼らは穀物の供給料を自在にコントロールする事で、穀物価格を支配していきます。

カーギルは自前の人工衛星で各国の穀倉地帯の出来高を調べるなど、農業をビジネス化してゆきます。

■ 種子を支配する ■



上のグラフは世界の種苗メーカーのシェアを示しています。

断トツでトップのモンサントは元々は化学メーカーです。ベトナムで使用された枯葉剤のメーカーと言えば分かり易いかもしれません。

モンサントは自社の除草剤の販売を促進する為に、除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆を開発し、大成功を収めます。さらに種々の遺伝子組み換え作物を開発して、かつての化学メーカーから、一大アグリビジネスの会社へと変身します。

遺伝子組み換え作物の安全性には、いろいろな疑問点があり、ヨーロッパや日本では遺伝子組み換え作物に対する不安が強いのも事実です。

■ 日本の玉ネギの90%が遺伝子組み換え ■

私達は豆腐を買うにも「国産大豆、遺伝子組み換えで無い」という文字を確かめて買います。

しかし、私達が日頃食べている玉ネギの90%が遺伝子組み換え品種である事をご存知でしょうか。

■ 日本の種苗メーカーを支配するアメリカ ■

農家に種や苗を販売する会社を種苗会社と言います。

園芸が好きな方は「サカタのタネ」や「タイキ種苗」などは草花の種の会社としてご存知でしょう。ところが、これらの日本の種苗メーカーのほぼ全社にアメリカの種苗メーカーの資本が入っています。

私達の知らない所で、日本の農業は着々とアメリカの戦略の支配下に置かれているのです。

■ F1シード ■

「F1シード」という言葉をご存知でしょうか?

植物を交配して出来た第一世代を「F1」と言います。世代を重ねる毎に「F2、F3・・」となっていきます。

品種改良には2通りの方法があります。

① 突然変異によって発生する優れた特質を有する品種を固定化する方法
② 優れた特質を持つ親品種同士を交配して種子を取る方法

F1種子は②の方法に当たり、日本では江戸時代から用いられてきた手法です。優れた特性を持つ親品種2種を同じ畑に植え、自家受粉しない為に手作業で片方の雄しべを全て取り去ります。そうして交配して出来た種子(F1)は両方の親から優れた特質を引き継いでいます。こういった手作業の交配は、他の花粉で受粉しないように、離島などで行われています。

こうして作られたF1が実を結んでF2の種子が取れても、F2はF1の特質を全て持ってはいません。優れたものと劣ったものが現れてしまします。ですからF1シードは毎年メーカーから買う必要があります。

■ 遺伝子組み換え ■

一方、遺伝子組み換え作物は②の突然変異を固定化する方法によった生み出されます。

極小の金で出来た弾丸の中に、目的の遺伝子の断片をつめ、作物の遺伝子に打ち込んで遺伝子を組みかえる方法と、作物の遺伝子の目的の場所に、目的遺伝子を組み込む方法があるようです。

組み込まれる遺伝子は、バクテリアの遺伝子など、本来植物が有していた遺伝子で無い事も多く、そういった意味では不自然な遺伝子を持った作物が誕生します。

組み込まれた遺伝子が特定の除草剤の毒性を分解する遺伝子であれば、特定の除草剤に耐性を持つ作物が誕生します。

除草剤や農薬メーカーであったモンサントは自社の除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え作物を開発し、農薬と種苗の両方で大きな利益を上げます。

■ 遺伝子組み換えの安全性 ■

「遺伝子組み換え作物が危険である」という発想は、この技術の「不自然さ」に由来する点も多くあります。

しかし、イギリスで遺伝子組み換えジャガイモの安全性を検証したローワット研究所のアーパット・プースタイ博士とそのグループは、遺伝子組み換えジャガイモを与えたラットで癌が発生する結果を得ます。彼はTVで遺伝子組み換え作物の安全性をインタビューされ、「選択できるものならば、我々が遺伝子組み換えポテトについて行っている研究結果に匹敵するような化学的証拠を目にするまでは、私は食べようとは思わない」とコメントしてしまいます。

それ以降、彼は研究所の職を追われ、彼のチームも解散してしまします。研究所に圧力を掛けたのは当時のブッシュ大統領から圧力を受けたブレア首相でした。

遺伝子組み換え作物の安全性を疑う根拠は、非常に「気分」的なものがありますが、遺伝子組み換え作物お安全性に疑問を呈する実験結果が抹殺されている可能性も否定出来ません。

■ 種子という兵器 ■

アグリビジネスは種子を戦略物資と考えています。

F1シードはその国に昔から伝わる在来品種を駆逐しています。
在来品種は繰り返し種が取れる事から、自給方農業には欠かせません。
反面、F1シードは毎年種を購入する必要があります。

遺伝子組み換え作物は、農薬や除草剤とセットになる事で、二重に農業を支配します。

■ 在来品種の保護 ■

有事が発生し、種子やセットとなる薬剤の供給をアメリカがストップすれば、その国の農業は大きなダメージを受けます。

アメリカの食料戦略に対して、各国とも無防備ではありません。


インドは組織的に在来小麦や在来作物の種子を保存・保護する動きに出ています。
日本でも在来野菜が見直される動きが現れました。

■ TPPという罠 ■

アメリカの戦略の根幹は「石油と食料」です。

TPPはそのうちの食料戦略に深く関わっています。

工業製品の輸出を確保する為に農業を犠牲にすると、後々大きなしっぺ返しを受けます。

アメリカが崩壊すれば、アメリカへの工業製品の輸出は激減します。
その時、TPPによって、日本の国内農業がダメージを受けていれば、日本は海外から食料を高いコストで調達する必要に迫られます。

農業は長い時間をかけて、土から育てる産業です。
一度衰退してしまえば、生産が回復するまでには時間が掛かります。

■ 小沢一郎の警告 ■

小沢一郎がフジテレビに出演して、「TPPというアメリカの戦略に振り回されるな」と警告したそうです。(私は見ておりませんが・・)

自民党は良くも悪くも、農家を保護してきました。

小沢無き民主党は、国内の農家の改革もしないまま、TPPに突き進んでいます。
TPPに対しては多くの国民が、内容を良く知らないまま「自由貿易」に賛成しています。

マスコミは伝えるべき事を伝えず、またしても「TPP賛成」というコンセンサスを作っています。

皆さんはTPPに賛成されますか?

PS

この記事にコメントを頂きました。ありがとうございます。
そのコメントでTPPの問題点を明確に説明しているYoutubeをご紹介いただきました。
大変分かり易いので、URLを貼り付けさせていただきます。

http://www.youtube.com/watch?v=nRmNJpUj5sI

具体的な数字を挙げられると、唖然としてしまう内容ですね。
菅内閣でいきなり降って沸いたTPP参加問題ですが、菅内閣の性格が良く現れているようです。