深津篤史の初期作品である戯曲に橋本匡市が挑戦する。これは2020年2月に若手演出家コンクール決勝で上演された作品らしい。コロナ禍で無観客上演となった幻の作品。だから今回再演であるにも関わらず、観客は初めて劇場でこれを見ることになる。どうりでこんな作品を万博設計で見てないな、と思ったのは当然のことだった。僕が忘れていたわけではない。舞台美術は段差のある空間の和室。畳の部屋に置かれたちゃぶ台。それが段 . . . 本文を読む
今回の劇団未来は三島由紀夫の2本立て公演。しかも2本を2週間に渡って1日3回公演で、各9回上演。怒濤の18ステージである。僕は初日にまず男性キャストだけで贈るこちらから見ることに。しまよしみち、演出。彼が久々に役者としても出る。渡辺舞による舞台美術が素晴らしい。斜めになっている白い3つの壁の組み合わせが彼らの揺れる心を視覚化している。これはヒトラーがヒトラー(しまが演じる)になるまでの物語。彼はふ . . . 本文を読む
もう何度目になるのだろうか。数えきれないほど見てきた(気がする)『オー・マイ・リョーマ』である。だけどやはりまた見たい、と思う。毎回違うヴァージョンで、新しいキャストで作られるけど、絶対にリョーマは寺田夢酔が演じる。そこだけは変えられないし、そこを変えるなら見ない。それは渥美清が演じない寅さんのようなものだから。さて今回は布施PEベースでの上演。幾分狭い空間に20人に迫るキャストが走り回って大騒ぎ . . . 本文を読む
今年もウイングカップが開催される。コロナ禍も含め15年連続途切れることなく、続いている。ウイングフィールドも32年を数えて今絶賛、再演大博覧會も開催中である。とうとう完成した30周年記念誌(30周年の記念なのに32年目まで完成しなかった!)も刊行された。リニューアルされたウイングフィールドはこんな時代だからこそ、小劇場演劇にしか出来ない戦いに挑む。
ウイングカップでは毎回前夜祭が開催され、そこで . . . 本文を読む
初めてつかこうへいを見たのは今は無きSABホールの『広島に原爆を落とす日』だ。衝撃的な芝居で忘れられない。主人公、ディープ山崎を演じた風間杜夫が素晴らしかった。ラストのひとり芝居には震えた。ヒロインのかとうかずこはまだ若くて声がちゃんと客席まで届かない。だけど美しさだけで作品を大きくリードする。平田満が作品全体を支える。歴史的傑作。
あれから40年以上の日々が過ぎた。つかが亡くなってからも、もう . . . 本文を読む
ウイング再演大博覧會2024に参加したオリゴは『パイライフ』で挑む。これはもう20年も前の作品になる。まだ若かった頃の岩橋さんの作品である。それを今改めて再演する。硬くなることなく、いつもながらの飄々とした岩橋節が炸裂する。舞台はロンドン。とあるパブ。ここには日本人しか来ないから、日本語しかしない。だから、まるで日本。そこに集う人たちの群像劇。正体不明の怪しい人たちばかり。彼らが何者なのかはわから . . . 本文を読む
今回の大阪新撰組は深津篤史の戯曲に挑戦する。深津戯曲は手強い。表面的なストーリーを追っても意味はない。淡々とした会話劇だが、謎だらけ。掴みどころがない。演出は栖参蔵。敢えてメリハリをつけずフラットな芝居を作る。「演出補佐として野口知沙さんが入ってくれたから、よかった」と栖さんが言う。女性の視点から見るという発見が芝居に奥行きを与えた。1時間程の中編作品だけど豊かな膨らみを持つ佳作に仕上がっている。 . . . 本文を読む
なんと5年ぶりの大阪公演となる。(3年前には名古屋公演のライブ・ビューイングがここウイングフィールドであったけど、あれからでも久々)今回のジャブジャブの新作はなんと川上音二郎と貞奴の評伝劇。しかも劇中劇としてシェイクスピアの『オセロ』を翻案して川上が作った『正劇オセロ』をダイジェスト版として上演する。だから一粒で2度美味しい。それを全体の上演時間は1時間10分を切るというランタイムで見せ切る大河ド . . . 本文を読む
久しぶりに劇団ひまわりの芝居を見る。もちろん脚色、演出は大塚雅史。(台本はプロデューサーの砂岡誠)大塚先生の指導のもと、さまざまな世代の子どもたちが舞台上を元気いっぱい駆け抜けていく。ミュージカルとタイトルには冠される。だから全編歌と踊りが満載。まだ幼児から高校生(サポートの大人含む)まで総勢71名(ダブルキャストだからこのArt班は56名)に及ぶキャストが舞台上に立つ。壮観である。これだけのキャ . . . 本文を読む
「今年、カンガルー年にピッタリな社会派カンガルー喜劇」とボケをかます魔人ハンターミツルギ率いる超人予備校久々の新作。キャッチフレーズは「人生をやり直す」。仕事に疲れた人たちがカンポケ社を訪れる。ここはもう一度最初から人生をやり直してリフレッシュするための施設。そこにやって来た人びと。彼らのそれぞれのドラマが語られる。まず、母カンガルーのポケットの中に入って胎児からやり直し。そんなこと可能なのか、な . . . 本文を読む
今年で3年目になるという極東退屈道場、林慎一郎による中之島芸術センター主催ライブ・パフォーマンス。前2作は見逃したので今回初めて参加する。なんと2時間20分に及ぶ大作である。この企画の完結編であり、前作の流れを踏襲する。もちろん単体でも楽しめるようになっている。
最初の40分は、劇場内でのお芝居だが、そこからはホールを出て、センター内から夜の街をクルージング。1時間の後、再びホールに戻って来て、 . . . 本文を読む
なんだかこれは壮大なスケールのタイトルである。しかもどこか間抜けな。もちろんわざとそういうものを提示しているのは明らかだ。イトウワカナ率いるintro久しぶりの大阪公演となる。これは一応はコメディなのだが、それに、お話自体は単純なんだけどなんだか変な感じだ。ただ笑わせる、わけではない。そのなんとも不思議な感触がいい。芝居はタイトル同様、落ち着かない。しかも摑みどころがない。
そして、やがて話は意 . . . 本文を読む
久しぶりの旦煙草吸。毎回過激に刺激的な舞台を作っている葉兜ハルカが今回は何を見せてくれるのか、楽しみ。彼女たちの舞台を初めて見たのは2年前のウイングカップ参加作品だ。(『そっか』)見せ物小屋的なスタイルのアングラ芝居で懐かしい。今時こんな作品を作る人たちはいない。もちろん60年代の寺山修司を想起する。それを女の子たちが中心になってやるって凄いと思った。残念だったが、ウイングカップでは評価されなかっ . . . 本文を読む
諸事情から神原さんの前作を見逃しているので、今週はまず何よりも神原作品を優先して見に行くことにした。このところずっと彼女の作品を欠かさず見ている。彼女は毎年4本、コロナ禍も休まずせっせと作り続ける。毎回そのバイタリティーには圧倒される。だから僕もしっかり見ることにしている。(作り続けるのは、大変だけど見るだけなら簡単だし、ね)
今回はヒロインに小林桃子(演劇集団⭐︎邂逅)を迎えて、なんと人が死な . . . 本文を読む
虚空旅団の「ウイング再演大博覧會」参加作品がこの作品に決まった時、なんだかうれしかった。もう一度これを見たかったからだ。高橋作品の中でもこれは必見の一作である。初演を見て,これは高橋さんの最高傑作だと思った。もちろんその後も更なる傑作揃いだけど、彼女のキャリアのエポックであることは変わりない。そして再演するなら、絶対にこれ、って思った。久々に再見して、あまりに小さな話に驚く。確かに小さな話だったは . . . 本文を読む