次々に不思議な才能が現れてくるから今の日本映画からは目が離せない。ただ、作品の数があまりにも多く、その結果カスも多くなるため選択については、かなり困難を窮めることになる。何がよくて何がつまらないかは、自分の判断に委ねるしかないが(映画評論家なんて、あまりあてにならないし、だいたい評論家であってもこれだけ続々と新作が公開されれば追いかけることは不可能だろう。)微妙な出来の映画も多く、かなり難しい。 . . . 本文を読む
五反田団の前田司郎が書いた『愛でもない青春でもない旅立たない『恋愛の解体と北区の滅亡』に続く第3作。
相変わらずの脱力感で、よくもこんなにユルユルした小説を、しれっと書けるものだ、と思う。初めて彼の芝居を見た時(『家が遠い』)一体全体このユルさはなんのつもりなのか、と思った。あの時の気分そのままの小説で、舞台以上に小説の方が衝撃的なのは、「へたうま」っぽかった舞台より明らかに作為的無意識が際 . . . 本文を読む
虚空旅団の高橋恵の書き下ろし戯曲を太陽族の岩崎正裕が演出したアイホール+岩崎正裕共同製作プロジェクト第2弾。普段の岩崎さんとは違う一面が展開するこの企画は、岩崎さんの思いもかけない冒険が展開され、とても興味深い。
それにしても、今回は意外すぎて驚かされる。全く岩崎さんらしさが感じられない作品に仕上がっていた。ストレートで、なんの捻りもない。いつになったら岩崎さんらしさが見えてくるんだろうと、 . . . 本文を読む
よしもとばななは、相変わらず語彙の少ない作家で、この『まぼろしハワイ』もまた、うれしいとか、かなしいとか、そんなことがそのままに書かれている。
父が死んで哀しいからと、ずっと泣いてばかりである。そんな娘オハナちゃんと義理の母(父の後妻ね)あざみさんの姿が描かれる。悲しいから、ハワイに行って、そこであざみさんの育ての親であるマサコさんや、あざみさんの初恋の人であるおじいさん(山本さん)と会う。 . . . 本文を読む
とても困難なことに挑戦している。それを外輪能隆さんは、とても飄々と自由自在にやり遂げてしまう。なぜ、オペラなのか、とずっと問いかけながらこの舞台を見続けていた。ラストまで見たなら、きっとその答えが見えてくるか、と思いながら。しかし、残念ながら明確な答えは見えてこなかった。
終演後、それがとても気になったから、雑談の途中でその件に触れてみた。すると外輪さんはニコニコしながら「いやぁ、オペラにし . . . 本文を読む
12歳の小学6年生の少年と70歳の靴職人の老人との友情を描いたこの小さな小説が、気付くと僕を夢中にさせている。母親を失くし、まだ幼い(6歳。小1だ。)弟と2人で暮らす彼は、自分の気持ちを抑えてひたすら耐えながら生きている。父親は消防士で、仕事が忙しく、家のことはみんなこの子に任せている。尊敬する父の期待に応えるために、この子は無理をしている。
こんな小さな子供が、こんなにもいい子でい続けるこ . . . 本文を読む
とても丁寧に作られてある。子供だましの動物映画かと思ったら、決してそんな映画ではなかった。きちんと震災と、ここで生きる人たちの姿も描いた上で、マリと子犬たちのお話にスライドしていくので、納得のいく映画にはなっている。
何よりもまず、主人公の2人の子どもたちの気持ちがよく描けている。当然父親(船越栄一郎)や、祖父(宇津井健だ!)との関係も図式的とはいえ、ただのパターンにはならずにしっかり描けて . . . 本文を読む
とても美しい芝居だった。昭和5年の幻を見事に見せてくれる。とても儚い一瞬間の輝きを、ほこり舞う地下の文芸部室の閉ざされた空間の中で描く。
金守珍が演出する唐十郎作品は、唐本人の演出するものとは微妙に違う肌触りがある。猥雑な唐の世界が、とても透明感のある静かな世界に変容していくのが不思議だ。描かれる世界は紛れもなくいつもの唐十郎のものなのに、それが金の手に掛かると、とてもしっとりしたものになる . . . 本文を読む
宮崎あおいと西島秀俊主演の『海でのおはなし』という小さな映画を見た。ずっとスピッツを垂れ流しにした酷い映画で、あまりのつまらなさに泣いた。昨年この二人が共演した『好きだ、』という映画があったが、あんなふうな映画ならいいなんて思いレンタルしたのに、損した。
お話の仕掛けが面白いと評判だった『ラッキーナンバー7』も見たが、この程度で大騒ぎするなんて、ほんとに面白い映画を知らない人が多いんだなぁ、 . . . 本文を読む
授業で漱石の『夢十夜』を高校1年生に読ませている。これって、もう少し大人対象だと思う。漱石の理屈を楽しめるくらいでなくては、このストーリーだけを追っても面白くないだろう。しかたなく、その理屈を説明したりするのだが、やっぱりやっていて僕が面白くない。分かってないな、というのが伝わってくるからだ。教科書は1、6夜が取り上げられている。このふたつより、やはり3,10夜だろう、と思いプリントにして配って . . . 本文を読む
『エクスクロス』で呆れたので、ちょっと真面目にホラー、と思ってレンタルしてきた。三池崇史も褒めてるし(出演までしてる)、タランティーノがプロデュースしてるから、一度見てみたいと思っていた。
噂に違わぬ凄まじさで、笑うやら、痛いやらで、なかなか楽しめた。しかし、もうこういう映画は底が尽きた感じがする。『ソウ』の時もこのくらいの仕掛けで大騒ぎするか、と思ったが、今回なんて、もうどんな手を使っても . . . 本文を読む
「足を切り落とされるぞ!」というコピーには笑える。そのまんまやんか。横には「コワッ!!」とも書かれている。こういう直接的な表現が若い客層にはアピールするというのなら、凄い時代がきたんだなぁ、と驚かざるえない。なんだか、味もそっけもない気がするが、しかたないことか。映画の中身もあまりのバカバカしさに驚くが、一緒に見た若い子は「おもしろかったすね」なんて帰りに言うので、それにはもっと驚いた。万が一こ . . . 本文を読む
まったく何てことない映画だ。こういうプログラム・ピクチャーの時代劇って、きっと映画の黄金期には毎月何本か量産されていたのだろう。僕でも子供の頃に東千代之介とか中村錦之助なんかが主演したやじきたものを何本も見ている。(もちろんTVで、だけど。たしか、昔火曜の夜、7時半から4チャンネルで東映の時代劇映画をやっていた。)
しかし、今ではこんなタイプの映画は一切作られない。時代劇はお金がかかるし、そ . . . 本文を読む