「これは、最初から負けいくさだな」と思いつつも、それでも壮大な負けっぷりを見せてくれるものと期待して、劇場に行く。森田芳光監督作品である。単純な負け方はしないはずだ。
30年ほど前にこの映画のオリジナルを見ている。黒沢映画のリバイバルブームのさなか、続々と見続けた。楽しかった。あの頃は若かったし、黒沢明の魅力に夢中になった。滅茶苦茶面白いと思った。しかし、先に『用心棒』や『七人の侍』を既に見 . . . 本文を読む
「野村くんが、凄いんですよ。彼を見てやってください!」とISTの佐藤香聲さんから言われた。そんなにも凄い奴って、いったいどう凄いんだか、ドキドキしながら見た。ほんま、凄いわ!突き抜けてしまっている。普通じゃない。異常だ。これだけテンションが高くて狂気を孕んだ男を舞台で見たのは久しぶりのことだ。(ババロワの高瀬くんを初めて見たときに匹敵する。)
彼が出てきた瞬間、空間が歪む。居てはならないもの . . . 本文を読む
門田剛さんが亡くなってちょうど2年になる。ようやく、Blue,Blueが再開した。それが、何より嬉しい。門田さんが居なくなっても今までどおりに活動を続ける。そんなことが可能なのか。試行錯誤の末での今回の公演ではないか、と思う。彼が亡くなる直前に二度に亘って上演されたこの作品を、敢えて再開作品に持ってきたのは、彼への追悼公演を意識してのことではない。そこは誤解のないようにしたいのだろう、当日パンフ . . . 本文を読む
『恋するからだ』に続いてこの小説を読んだ。同じように親の影響で上手く生きれない女の子が主人公だったので、偶然なのか、それともこういうのが、最近のはやりなのか?まぁ、それはともかく、どちらもとても読みやすいが、小説としてはこちらのほうが断然読んでいてしっくりくる。
12歳の女の子、朔が主人公。父親と二人暮らし。母は舞踏家の父に愛想を尽かし出て行った。大人に混じって小さな頃から父と一緒にダンスや . . . 本文を読む
小手鞠るいの小説は、僕はこれで3作目。ちょっと軽すぎて読んだ後に何も残らない。口当たりは悪くないが、もう少し心にずしりと残るものが欲しい。今回はいつも以上にさらりと見せることを目指したのだろう。こういうライト・ノベルは免疫がないから、拒否反応を起こしそうなのだが、最後まで読めた。
ハワイで暮らす日系の女の子アユの恋愛が描かれるのだが、何にも囚われず、自由奔放に生きている、はずが、本当は誰かに . . . 本文を読む
コリーヌ・セロー監督によるハート・ウォーミング。仲の悪い3人の兄妹たちが、母の遺した遺産を受け取るため遺言にある3ヶ月にも及ぶ巡礼の旅に出る。
この徒歩での旅を通して、周囲の人たちとの関係の中で、いがみ合っていた3人が心を開いていくという、まぁ、よくあるお話だ。しかし、フランスからスペインへの自然と、田舎の風景が素晴らしく、お話よりも、美しい風景を見ているだけで心がなごむ。スローライフのよさを . . . 本文を読む
とてもきれいな映像で、東京の町並みが描かれていく。どこにでもあるような風景をきちんと撮り、その美しさを際立たせようとする姿勢がいい。林立するマンション、商店街にある小物屋の店先、街角、公園、河川敷、走る電車。なんでもない風景を一番きれいにみえるように撮っている。僕らが普段目にしているなんでもない風景。そのあたりまえの世界は、実はこんなにも美しい、と思わせてくれる。この小さな映画の素敵なところは、 . . . 本文を読む
かすかな叫び声が聞こえる。女の子たちの小さな悲鳴がこの7つの短編集の中には封じ込められてある。
そんな弱い心では生きていられないはず。もっと強くならなければ駄目だ、と思う。だけれども、このまだ若くて、無知で、傷つきやすい子どもたちは、こんなくらいの恋で、か細いその身を、すり減らしてしまう。20歳前後の建前では大人になったばかりの女の子たち。
大学生や、OLになったばかりの新米。人生もこれ . . . 本文を読む
ジャッキー・チェンが、久々に香港に戻って自由に撮った最新作。(自由の国、アメリカでは自由な映画は撮らせてもらえない!)
ハリウッドの仕事が多くなり、あまり彼らしくない映画が増えてきて、ファンよりも自分自身が参っているのかもしれない、と心配になる昨今だが、やはり野に置けジャッキー・チェン。ホーム・グランドで、いい加減な台本のもと、自由気ままに映画を作っている彼の姿を見ていると、こちらまで幸せな気 . . . 本文を読む
先日『300』で、酷い目にあったので、もうこの手のCG映画はいいよ、と思ったが、ロバート・ゼメギスが、何がしたかったのかが気になって、ついつい見てしまった。
『ポーラ・エクスプレス』に続く彼の新作。ゼメギスはもう普通の映画を撮る気はないのだろうか。まぁ、そんなことはないだろうが、デジタルの進歩を最大限に利用した誰も見た事がない世界を表現したいという欲求を、満たすために彼なりの挑戦を続けている . . . 本文を読む
こんなオーソドックスなホラー映画が、なぜ今、劇場公開されたのだろうか。不思議でしょうがない。しかも、ホクテンザ系ではなく、ピカデリーでしっかり上映されたのである。もしかしたら、これは思いがけないくらいに凄い作品なのかも、なんて期待してしまったくらいだ。去年の『ホステル』ですら、ホクテンザである。ここには思いがけない何かがある、と勘ぐってもしかたあるまい。
きっと何か凄いことが仕掛けられてある . . . 本文を読む
このお正月一番の期待の超大作だったのだが、正直言ってがっかりした。予告編が圧倒的に面白く、驚異のビジュアルで表現された人が誰もいなくなり、廃墟と化したニューヨークで、たったひとり暮らすウィル・スミスと犬の姿は衝撃的で、ぺんぺん草の生えたマンハッタンを彷徨う(というか、そこで暮らしているから、日常生活のスケッチなのだが)彼の姿を描く導入部は、予想通りの素晴らしさで、いったいこれからどんな映画が始ま . . . 本文を読む
6年の歳月を経ての再演である。まだ、若手劇団の頃の満月動物園が、当時の全力を示した作品をほぼ、そのまま、再び同じ応典院で見せる。作、演出の戒田さんは「河上(由佳)で、これをもう一度やってみたかったんです」と言っていたが、初心に戻り、今の立ち位置を確かめるために、これは避けて通れないものだと思ったのだろう。
開場、同時開演のアングラスタイル全開の芝居だ。ロビーでいきなり芝居は始まる。劇場の外か . . . 本文を読む
大きな樹のうろで眠る少年。彼のところにやって来た女。道に迷い、山の中を彷徨った末にここに辿り着いた。偶然出遭ったふたり。
さっき「少年」と書いたが、それは嘘だ。ただ、震えて眠る彼女(吉岡亜紀子)が、僕には少年に見えたから。誰も彼女を守ってくれる者はいない。ただひとり、ここで死んでゆくのを静かに待ち続けている彼女の怯える姿を見た時、この芝居の方向性がしっかり見えてきたような気がした。
実は . . . 本文を読む
今年一番の「とんでも映画」ではないか。これだけの大作なのに、ここまでつまらない映画になってしまったことは、犯罪的であろう。DVDで見てよかった。もし、間違えて劇場なんかで見てしまったら、途中から怒りでブルブル震えてしまったのではないか。それくらいに、まるで中身のない大バカ映画だった。
アンデァ・ラウの『墨攻』でも見て、少しは映画とは、どうあるべきかを見習ってもらいたいものだ。ビジュアル重視の . . . 本文を読む