この映画の原作が出た時、すぐに読んだのだが(芥川賞受賞作品だ!)あまり好きにはなれなかった。だからこれを蜷川幸雄が映画化すると聞いても、まるで食指をそそられなかった。大体、蜷川映画はつまらない。(『魔性の夏』は好きだったけど)彼は、芝居と映画とではまるで別人になる。演劇では出来ないことを映画に求めるのかもしれないが、普通の人なら、映画はスケールの大きなものを求めるものなのに、スケールの大きな演劇 . . . 本文を読む
19歳で作家デビューした雪村は、自分が、女であることに違和感を抱いている。性同一性障害ではない。女であることは受け入れるし、見た目は普通に女の子だ。でも、作家としての自分は男であることを望む。ただ、男のフリして書く、というのではない。男の部分をプロデユースする。自分の中に男がある、と思う。
普通に女性として生活してきた。特別違和感があったわけではない。自分が美人ではないことにコンプレックスを . . . 本文を読む
もうJAXAはいいよ、とさすがに食傷気味の僕です。3本も「はやぶさ」映画を見て、散々JAXAの施設見学をさせられたから、またこの映画でも出てきた瞬間、かんべんしてよ、と思った。宇宙もの、というところで気づけよ、と自分に突っ込みを入れたが、それにしても、後半、JAXAの施設から全然出ない展開には参った。 NASAのシーンもけっこうあるけど、どちらにしても同じようなものだ。
映画は宇宙飛行士を目 . . . 本文を読む
若手の劇団によるとても軽いお芝居。僕がそういうのではなく、彼らが自分たちで「軽演劇」と呼んでいるのだ。たわいない話を丁寧に見せるのは、姿勢として悪くはない。視点の定まった作品にはぶれがない。1時間でまとめる、というのも気持ちがいい。ダラダラ自己満足のような芝居を見せられるよりはやりたいことだけを的確に見せてやり逃げする方がいい。「圧倒的軽演劇! 驚きの軽さ! 有無を言わさぬくだらなさ!」これはチ . . . 本文を読む
こういう純粋ラブストーリーには、最近とんとお目にかからない。というか、ここまで何もない話で1本の映画を作るなんて普通ないからだ。どんな映画にも自分なりの使命感があり、何かを訴えかけるために作られる。だが、この作品にはそんなテーマのようなものが一切ない。「純粋」というのは褒め言葉ではなく、ただもう呆れているのだ。お話に奥行きがまるでない。それだけではない。2人がどうして恋に落ちたのかもわからない。 . . . 本文を読む
この3月、大阪アジアン映画祭のクロージングを飾った大作が、GWにひっそりと公開された。ピーター・チャンの新作である。香港と中国の合作として製作された超大作なのだが、日本ではこういうマイナー映画の扱いを受ける。これでも公開されるだけましな方だ。このクラスの大作映画ですら今の日本では劇場公開は難しい。本国で大ヒットしていても、である。本国でも台湾でも『アバター』並みにヒットした『孫文の義士団』があん . . . 本文を読む
この手の軽いアクション映画はハリウッドが得意とするジャンルであろう。『チャーリーズ・エンジェル』シリーズや『ターミネーター4』のマックGが、派手なアクションとバカバカしい笑いをまじえて男2人女1人のラブコメスタイルで贈る娯楽映画。クリス・パインとトム・ハーディは、闇商人の取引現場を抑える極秘任務(この冒頭のアクションはド派手)でターゲットを逃走させてしまい、謹慎処分になってしまう。暇を持て余した . . . 本文を読む
前作と同じようにタイトルは『僕等がいた』とだけ出る。後編という文字は一切出ない。そのこだわりは三木孝浩が、この作品を前後編とは、位置付けしていない、ということの証明となる。では2本で1本なのか、というと、それも違う。これは2つの『僕等がいた』という映画なのである。4時間の大作映画を2回に分けて公開する、という形を踏んではいるのだが、それは興行上の問題であって、作家である三木孝浩は、自分の美意識で . . . 本文を読む
大島真寿美の『かなしみの場所』『虹色天気雨』を読んだ。どちらもタイトルがとてもいいので読むことにした。というより先日、大島真寿美の新作『ピエタ』を読んで、今まで読んでいなかった彼女の旧作を遡ることにしたからだ。『虹色天気雨』はまるで柴崎友香の小説を読んでいるような気分。おしゃべりを中心にした日常生活のスケッチである。柴崎友香はいつもこんな感じでまるで話らしい話しもなくだらだら流れていくのだが、大 . . . 本文を読む
今年も唐十郎の新作が見られる。ただそれだけでうれしい。精華小学校から場所を大阪城公園、太陽の広場に移しても、当然のことだが、いつもながらの唐ワールドである。
2幕構成、途中に15分の休憩が入る。上演時間は休憩を入れても1時間40分ほどだ。この短さが今ではお約束になっている。最初の頃はこの尺になじめなかった。この長さでは、充分なお話なんか展開はできない。あまりに尺が短か過ぎるからだ。でも、今で . . . 本文を読む
これは傑作だ、と言ってもいい。ただ、あまりにきれいに納めてしまうところは、物足りない。鈴木友隆は、一見すると気を衒うように思わせといて、最終的には、正攻法で見せる。ちょっとストレート過ぎて、少し照れるけど、ちゃんとこれを真摯に受け止めよう。彼の素直な想いは甘さとは無縁だ。砂糖菓子のような芝居ではない。ハードですらある。でも、最終的にはハートウォーミングになる。負の連鎖を断ち切るために、その根源に . . . 本文を読む
この不思議なタイトルの理由はすぐに説明されるのだが、そんなことより、この単純なタイトルに秘められた想いの深さに心締めつけられる。癌で死んでいく父親の家族への想いが「星やどり」である。喫茶店の名前としてだけではなく、ここでみんなが一緒になって過ごす、そんな場所。父親は自分がいなくなって、それでも自分が作ったこの場所でみんなが寄り添い生きていくのを見守ることが出来たなら、と思う。
6つの短編集は . . . 本文を読む