ウイング再演大博覧会の2作品目となる作品である。今回が3度目の公演となる。ゲオルク・ビュヒナーの原作を態変世界にアレンジして再構成した不条理劇。12のシーンから構成された物語。もちろんいつものように台詞はない。描かれる内容も象徴的な次元に止まる。ここから明確なストーリーを摘み取ることに意味はない。ただこの残酷なドラマのカケラを感じるだけでいい。娼婦マリーとヴォイツェクのドラマをストーリーではなく、 . . . 本文を読む
監督・脚本は『PARKS パークス』や『ジオラマボーイ・パノラマガール』の瀬田なつき。彼女の映画で今までで一番長く、なんと2時間20分の大作だ。これは彼女が一番作りたかったものなのかもしれない。実に力のこもった作品に仕上がっていた。先に140分の大作だと書いたが、お話自体はとてもささやかで小さな話だ。登場人物も少ない。交通事故で両親を目の前で同時に失った15歳の少女、朝(早瀬憩)と彼女を勢いで引き . . . 本文を読む
読んでいて何度も泣きそうになった。こんなささやかなこの人生を僕たちは生きている。そのことを益田ミリは教えてくれる。
今回は2020年から2023年が背景になる。コロナ禍である。だから彼女は常にマスクをして外出している。世界はそれまでとは変わったけど、彼女も僕らも変わらない。以前の日常は失われて不安な毎日だったけど、いつもの日常を生きていく。
そんな日々のスケッチであ . . . 本文を読む
関根光才監督の新作映画だから、見た。ドキュメンタリー映画『太陽の塔』劇映画デビュー作『生きてるだけで、愛』。どちらも素晴らしい映画だった。後者の主人公を演じた趣里が素晴らしかった。身を斬るようにして役に向き合う姿勢は主人公の生き方と重なり合った。それは今回の主人公を演じた杏に言える。関根監督は静かに彼女たちを追い詰めていく。気がつくとどうしようもない絶壁に立つ。
そんな映画だから見る . . . 本文を読む
最初はこんな無茶苦茶な設定で話を作って大丈夫か、とドキドキしながら読み始めた。あり得ない。だけどだんだんこの状況がなんだか素敵だと思う。従来の価値観に縛られていただけかも、と思う。そんなあり得ないことから始まる。
伊麻と絹香。当たり前だったことに異議を唱える。ふたりの、そしてふたつの家庭を交互に描いていく。やがてふたつは重なり合い、新しい次元に突入していく。
3人の恋人を持ち、彼ら . . . 本文を読む
『天の台所』に続くシリーズ第二弾となる。がみババと台所のお話。最近「食」を題材にした小説が異常に多い。というか自分がそんな本ばかりを手にしているだけなのかもしれないが、そんな気がする。一般書はもちろんのこと、児童書でもそうだ。これもまたそんな1冊。料理する上でのさまざまな蘊蓄がさりげなく織り込まれていて勉強にもなる。
さて、今回の主人公は女の子、要。中学1年生。今は夏休み。退屈。マンションの隣に . . . 本文を読む
ジェイソン・ステイサム主演のモンスターパニック映画第2作。こういうバカ映画をたまに見るのも楽しい。何も考えなくていい。とことんバカに徹して欲しかった。2時間を楽しませてくれるジェットコースタームービーを期待したが、2時間もあるジェットコースターはしんどいだけ、かも。映画は頑張っているけど、前作を下回る出来。なかなか『インディ・ジョーンズ』は作れません。あまりに無内容で映画自体が空っぽ。これは酷い。 . . . 本文を読む
デビューから50年を経て、2024年で70歳を迎えたジャッキー・チェンの主演作。なんと引退したスタントマンを演じる。アクション一筋で半世紀。何度も引退を覚悟したけど、辞められなかった。演技派を目指すも叶わないし、似合わない。ジャッキーはいくつになろうとも永遠にアクションスターなのだ。自身が役には投影されている。始まりは『ドランクモンキー酔拳』。45年前になる。東映が二本立てのおまけ映画として香港か . . . 本文を読む
とうとう完結編。「インク3部作」のたどりついたところ。冒険は続くけど、なんだかここに至って、旅は停滞したまま。六番目のブルーの謎の解明はなされるみたいだけど、そこにはあまり意味はない。14歳のオリオはジャン叔父さんとインクを探して旅をしていた。亡くなった師匠ベルダさんの幻のインク。吉田篤弘ワールドを彷徨い歩いて辿り着く果て。読み始めは少し戸惑いがあった。前回からもう1年以上経っていて、細かい話は忘 . . . 本文を読む
新人監督の作品で、小松菜奈と松田龍平が主演。ふたりとも久しぶりの主演作になる。彼らが選んだ作品だからと楽しみにして見に行ったのだけど、残念な映画だった。あまりに素朴でストレートな語り口に戸惑いを隠せない。どこに作者の意図があるのかもわからない。若い作家の独りよがりの観念世界と切り捨てていいものかに躊躇う。美しい映像と棒読みのセリフ。ここには感情はない。富名哲也監督・脚本、編集による自主映画にこれだ . . . 本文を読む
ふたりの作家による往復書簡である。昔からこういうパターンの本はたくさんあったけど、今回のこの本のような徹底したケースは初めてではないか。ふたりはこれまで気にはなっていたがお互い面識もなく、だけどお互いをリスペクトしていた。そして、初めましてから始まる。
手紙というスタイルで、話合う内容はかなり突っ込んだことを歯に衣着せぬ真摯なことばで語り合う。子どもたちのことや生き方について。アメリ . . . 本文を読む
『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(あまり趣味は良くないホラー)のジョナサン・グレイザー監督作品。昨年のカンヌでのグランプリに引き続き、第96回アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞して鳴り物入りで日本公開される。期待した以上の映画だった。こんなにも大胆な映画だとは思いもしなかった。禁欲的で、抑えた描写が延々と続く。それが無理矢理ではなく、自然体。彼ら家族にとってはこれが当たり前の日常なのだ。幸せな . . . 本文を読む
まさか今頃太宰を読むなんて思いもしなかった。授業で『富嶽百景』とか『待つ』なんかをよくやるからその時はテキストを読むけど、自分の読書で読むなんて高校時代以来ではないか。しかも『津軽』はたぶん読んでいない。だから今回が初読であろう。たまたま図書館の新刊の棚で見かけたから手にとってしまった。この本は133刷である。2024年3月発行。文庫の初刊は1951年8月らしい。凄いロングセラーだ。
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新人作家のデビュー作。30代後半の決して若くない作家が書いた作品である。よくあるお仕事小説とは一線を画す。家事代行サービスという仕事。一流商社で億という金を動かす仕事をしていた彼女が体を壊して退職して、リハビリを兼ねて軽い気持ちでやり始めた。だが、舐めてかかっていた仕事が、実はかなり大変さを伴うことを知る。
ある家族との関わりを通して見えてきたもの。妻を亡くして残された5人もの子ども . . . 本文を読む
ゴミの清掃員をしている綺麗好き男子とゴミ屋敷状態なのにさらに部屋にゴミを溜め込むゴミアーチストの女子。隣り合わせの部屋で住むふたりのドラマ、(という表面的なお話をきちんと裏切る)と,書いたが、そんな簡単な話ではない。真反対のふたりのラブストーリーという安易な設定に見せかけて実はかなり病んだふたりの話でもある。ゴミと潔癖症を通した虐待を描く。
ふたりの置かれた家庭環境がエゲツない。さら . . . 本文を読む