冴え渡る夜空に、下弦の月が懸かっている。
冬こそ、下弦の月がふさわしい季節だ。
月を愛でるのは、日本の風流な習慣。
少し前、生活の足しに、ある下請け工場で働いていた。
忍耐強い女性ばかりの職場だった。
仕事が終わる日暮れが早い冬には、月が空に浮かんでいる。
>綺麗な月が出ているよ
声をかけても、月なんかがあるのか?と、反応が希薄だった。
あるときは、雲がダイナミックな夕焼けの黄色からオレンジ・茜色・紫・紺へとニュアンスに富む色彩の変化が美しいと言ってみても、言葉はただ消えていった。
追い立てられるような環境で、寡黙に作業をこなす毎日が、彼女たちをすり減らしてしまったのか?
工場にいるときの彼女たちは、マシンのように無表情だった。
家に帰れば、心の装備を解いて、彼女たちの顔に表情が戻るだろうが・・・
空は、どんな人の上にも等しく広がっている。
太陽も雲も月も星も、空にさまざまな表情を付けてくれる。
だが、人は、見上げれば目に映る空があること、それを楽しむことを忘れてしまう。
下弦の月を見て、月の美しさを忘れていた彼女たちのことを思い出した。
取るに足らないことかもしれないけれど、月を愛でられる気持ちのありようは、大切な気がするから。
冬こそ、下弦の月がふさわしい季節だ。
月を愛でるのは、日本の風流な習慣。
少し前、生活の足しに、ある下請け工場で働いていた。
忍耐強い女性ばかりの職場だった。
仕事が終わる日暮れが早い冬には、月が空に浮かんでいる。
>綺麗な月が出ているよ
声をかけても、月なんかがあるのか?と、反応が希薄だった。
あるときは、雲がダイナミックな夕焼けの黄色からオレンジ・茜色・紫・紺へとニュアンスに富む色彩の変化が美しいと言ってみても、言葉はただ消えていった。
追い立てられるような環境で、寡黙に作業をこなす毎日が、彼女たちをすり減らしてしまったのか?
工場にいるときの彼女たちは、マシンのように無表情だった。
家に帰れば、心の装備を解いて、彼女たちの顔に表情が戻るだろうが・・・
空は、どんな人の上にも等しく広がっている。
太陽も雲も月も星も、空にさまざまな表情を付けてくれる。
だが、人は、見上げれば目に映る空があること、それを楽しむことを忘れてしまう。
下弦の月を見て、月の美しさを忘れていた彼女たちのことを思い出した。
取るに足らないことかもしれないけれど、月を愛でられる気持ちのありようは、大切な気がするから。