アタシは、多分8歳になっていると思う。
ここのうちに来たのは、一人でひょこひょこ歩けるようになったときで、車からぽいと降ろされたの。
寂しくて、にゃーにゃー鳴いたけど、お母さんも兄弟も誰もいなかった。
怖かったし、おなかも空いた。
人の声がする方へ歩いていく。
にゃーと鳴いたら、こっちを見てくれたけど、しらんぷりされた。
鳴きながらそばに近寄っていく。
困った顔をされた。
「捨てられたんだね、でも、もうねこは飼わないって決めたから、ごめんね。」
それから何日も、倉庫の隅や植木の下に寝るとこを見つけた。
家の人が捨てる残飯を食べて、おなか空いたのを我慢した。
ある日、こっちにおいでと呼ばれた。
なんだか美味しいにおいのする物がある。
「お食べよ。仕方ないね、ここにいていいよ。」
ヤッター!ご飯もらえた、撫でてもらえた!
家の人は、アタシにご飯をくれる。
寝るところは、自分の好きなところどこでもいい。
ただ、おうちに入っちゃだめなだけ。
ねこの毛は、あ・れ・る・ぎーによくないからって言っていた。
でもいいんだ、あたしには広~い庭と畑とたくさんの倉庫があるから、気分で寝場所を変えられる。
自由に友達に会える。
ふかふかの土のトイレだってある。
だから、毛並みはとってもツヤツヤ。
家の人がいつも褒めてくれる。
「ねこ、今日もいい毛艶だね。長生きするんだよ。」
アタシの名前?
「ねこ」だよ。
猫なのに「ねこ」っておかしいって?
家の人は、そのわけ話してくれたけど、それはひみつ。