コスプレ少女かと思ったのは原宿という土地柄のせいかもしれない。
盛大な水しぶきを上げて躍り出てきたのは『艦これ』に出てきそうな美少女だ。
背中には三本の煙突を背負い、両手と肩には大砲と魚雷発射管がついている。
殺気に満ちた瞳! 裂ぱくの気合! ただのコスプレ少女ではない!!
「ドガアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
気合を入れると、地上二十メートルほどのところで大砲を構えた。
「「させるかーーー!!」」
二人の魔法少女は橋の欄干を蹴って空中に飛翔し、コスプレ少女を挟んで対峙した。
ズガーーーン!
両手の大砲を発射するが、マヂカもブリンダも素早くかわして距離をとる。
「わたしは、バルチック艦隊二等巡洋艦イズムルート! 東郷提督に一矢報いんと百余年の時空を超えてきた。邪魔するものはぶっとばす!」
「霊魔の憑依体か、マヂカ、やるぞ!」
「おお!」
これは放ってはおけない! そう思うと、どこからかライオンオブジェが現れ、さらうようにして私を乗せると、ブーストをかけて空に舞い上がった!
数秒で千メートルの高度に達する。眼下には神宮の森が黒々と静もっている。
いつのまにか二人もそれぞれのオブジェに跨り、イズムルートを取り巻いている。
取り巻かれるのを嫌がって、イズムルートは上下左右に飛び回るが、二人は連携を保ちつつ方位の輪を縮めていく。
これまでの幼体と違って、実態と思えるほどに姿が明瞭だ。
イメージが浮かんだ。隙を突いたイズムルードが地上すれすれを飛んで二人の攻撃をかわす。二人は上空から攻撃することになって、下手をすると、地上の原宿の街を破壊しかねない!
思うと体が動いた。
三人が描く円弧の下に潜り込む! よし、これでブロックできた!
ズドドドーーン! ズガガガガーーーン! ズガガガガーーーン!
イズムルートの砲撃をかわしながら、突き出した両手からビーム攻撃を加える二人。
だが、微妙にタイミングが合わないようで、あちこちかすりながらも身をかわすイズムルート。
「呼吸を合わせて!」
檄を飛ばすが返事はない。イズムルートに追随するのに精いっぱいなのか?
セイ!
気合を入れると、同時にダッシュしてイズムルートに突撃! あわや激突というところで左右に散開! その衝撃でスピンするイズムルート。
ズゴーーーーン!!
散開の頂点で放ったビームが対極から直撃し、装備品をまき散らしてイズムルートは爆発してしまった。
破片が落ちる!
杞憂であった。破片は地上に到達する寸前に、次々と掻き消えて、地上は何事もなかったように週末の賑わいを見せる原宿の街だ。
連携がとれるのに時間がかかる。
この戦いで得た教訓だ。
「ちょっとちがうかも」
マヂカが腕を組む。
「でも、たしかに時間はかかってたぞ」
「いや、オブジェに乗っているとタイムラグができるような気がするのよ」
「昔は、オブジェなんか使わなかいで戦っていたしな」
「そうなの?」
「ああ、じっさいとどめのビームは、こうやったしな」
ブリンダがウルトラマンのようなポーズをとる。竹下通りを行く観光客たちが笑っている。ちょっと恥ずかしい。
「オブジェか、慣れの問題か、それぞれの技量か、やっぱ連携か……」
「ここは、やっぱりクレープを食べなおさなければ考えがまとまらんなあ……」
「そうよね……」
もう一度クレープを奢るハメになった。