大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・051『どうするブリンダ!?』

2019-07-29 14:43:44 | 小説

 魔法少女マヂカ・051  

 
『どうするブリンダ!?』語り手:マヂカ  

 

 

 大塚台公園秘密基地完成祝賀会は大盛況だった!

 

 主役はわたしとブリンダだ。

 なんといっても、先頭に立って、直接敵と戦うのは魔法少女なんだ。高機動車たる北斗は主力兵器である魔法少女のトランスポーターに過ぎないし、北斗のクルーたる調理研の三人も機能的には北斗運行のための制御システムに過ぎない。司令の来栖一佐と隊長の安倍先生も例外ではない、上位の制御システムのコアに過ぎない。

 だから、目いっぱい楽しんでくれ!

 口の周りをビールの泡だらけにしながら司令がサムズアップ! テーブルのみんなも盛大な拍手! スタッフのテディーベアたちも縫いぐるみとは思えない器用さでバックミュージックを奏でる。基地のクルーロボットならヒューマノイドがいいと思うんだけど「これには意味がある」と、司令が真顔で言う。

「それでは、これからの健闘を祈って、マヂカとブリンダに歌ってもらおう!」

 有無を言わさずマイクを握らされ、ピンクレディー、ザ・ピーナッツ、海原千里真理、こまどり姉妹、などなどの曲を歌わされる。

 なんで主役が熱唱させられるんだ!?

 司令に抗議の視線を送ると『二人の連携に敬意を払い、磨きをかけ、基地のクルーみんなで連携、共感の素晴らしさを感得するためだ!』というテンションの高い思念が飛び込んでくる。

 し、しかし、なんか違うと思うぞ!(;´Д`)? そーだそーだ!

『じゃ、これでどーだ!』

 再び司令がサムズアップ!

 すると、調理研の三人と、ケルベロス、ガーゴイルの使い魔コンビ、須藤公園の河童、江ノ島の八音さんまで加わってAKBとか乃木坂のノリになってきた。

「次はゲームだ!」

 ホイッスルが鳴ると、瞬間でドッジボールに切り替わり、汗まみれになったところで、各科対抗ツイスターゲーム。手足の短いテディーたちは早々と脱落する。調理研の三人はクルーとしてのスキルはインストールされているが、魔法少女に匹敵するほどの体力はなく、汗みずくになった末にリタイア、これもブリンダとの最終決戦に持ち込まれる。

 ラディカルビンゴ、ロシアンヌーレット(当たると、盛大に水が落ちてくる)、反重力バレーボールなどなど……。

 どれをやっても、魔法少女の性で最後までがんばってしまう。

 くそ、ついさっきまでアレキサンドル三世と死闘を繰り広げていたんだぞ……(;^_^A

 心では文句たらたらなんだけど、弱みを見せるわけにもいかず(とくにブリンダ! ブリンダも同じだろうけど)、がんばってしまう。

 笑顔が引きつり、やせ我慢に膝が笑いだした頃に締めのスピーチが行われた。

 演壇に立ったのは『主賓』の紅白リボンを付けた緋縅の大鎧を身にまとった神田明神だ。

「平和主義をモットーにする神田明神でありまするがあ……今般の東アジアの状況を鑑みるにい……で、ありまするからにして……特務師団並びに魔法少女に寄せらるる期待は、本朝開闢以来の熱気をもってえ……」

 長いスピーチだったが、どうやら、霊魔相手の戦いは、おまえたち魔法少女に丸投げするからガンバレ!

 そういう内容で、祝賀会に出席した全員の拍手をもって歓迎されてしまった。

 ど、どうする、ブリンダ!?

 なんか言え!

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高校ライトノベル・連載戯曲『月にほえる千年少女かぐや(改訂版)・11』

2019-07-29 06:41:57 | 戯曲

月にほえる千年少女かぐや(改訂版)・10

大橋むつお

 


時   ある日ある時
所   あるところ
人物  赤ずきん マッチ売りの少女 かぐや姫

 

マッチ: うん、行こ行こ(^▽^)/。夕焼けもきれえだし(窓から夕陽がさしこんでいる)あ、大きな鳥……
赤ずきん: 白鳥……鶴だな……(鶴の鳴き声)
かぐや: 鶴の恩返しの鶴さんです。
マッチ: ツルノオンガエシ?
赤ずきん: 何にも知らないんだな。助けられたお礼に、鶴が男の女房になって、自分の羽根で、ビンテージもんの布を織ってやる。織ってるところを見ちゃいけないっていうのを、男はスケベー根性おさえきれずにのぞいて、悲しんだ鶴が家を出てっちゃう……
マッチ: ああ、思い出したあ。
かぐや: お家をとびだしてから、ああして飛び続けていらしゃるの……
赤ずきん: 降りてこないの?
かぐや: ええ、対人恐怖症でしょうね……
マッチ: ……かわいそう……
赤ずきん: 疲れて落ちてしまうでしょうに……
かぐや: 銀河鉄道さんがね……
マッチ: 銀河鉄道?
赤ずきん: 宮沢賢治の?
かぐや: カムパネルラとジョバンニがいっしょに乗って走ってもらっているの。落ちたときにクッションになってもらえるように……

轟音をたてて銀河鉄道が通過する。それぞれの姿勢で見送る三人。

 

マッチ: ほんとだ……銀河鉄道さ~ん、ごくろうさま!
赤ずきん: あ、カムパネルラとジョバンニが手をふった!

 

     三人手をふる。

 

かぐや: さ、まいりましょうか。
赤ずきん: ようし、ゴーアヘッド!

マッチ: え、なにそれ?

赤ずきん: なにって「さあ、いくぞ!」って意味だ、軍隊じゃ「前進!」って号令に使うんだ。

マッチ: レッツゴーじゃないの?

赤ずきん: レッツゴーって、ダセーなあ、おまえ昭和かよ。

マッチ: そんな、掛け声一つで差別しないでよお!

赤ずきん: て、言い出したのはおまえだろが!
かぐや: ……あら……ドアが開かない。
マッチ: 押すんじゃないの?
かぐや: ホホ、そうだったかしら……押しても開かない。
赤ずきん: ちょっと(かわる)ほんとだ開かない。
マッチ: なんだか暗くなってきたよ。窓の外まっくら。
かぐや: え……?
赤ずきん: くそ、ほんとに開かないよ。どうなってんだ!? くそ! くそ!!

 

     ドア、急に開く。そのいきおいで、赤ずきん、外へとびだしてしまう。

 

 

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・40〈有馬離婚旅行随伴記・5〉

2019-07-29 06:35:16 | 小説・2

高安女子高生物語・40
〈有馬離婚旅行随伴記・5〉   


 明菜のお父さんが逮捕されてしもた!

 逮捕理由は、杉下さんいう効果係の人といっしょになって、拳銃殺人のドッキリをやったときの血染めのジャケット。
 ジャケットに付いてた作り物の血に、なんと大量の被害者の血が混じって付いてた。

 話は、ちょっとヤヤコシイ。

 ドッキリを面白がった番頭さんが、そのジャケットを借りて、休憩時間中の仲居さんらを脅かしてた。
 で、最初、警察は番頭さんを疑うた。しかし、番頭さんにはアリバイがある。お客さんを客室へ案内して仕事中やった。
 お父さんは、この旅館には泊まり慣れてて、番頭さんとも仲ええし、旅館の中の構造にも詳しい。
 殺人事件のあった時間帯は、旅館の美術品が収められてる部屋で、一人で、いろいろ美術品を鑑賞してたらしい。事件に気づいて部屋の鍵を返しにロビーへ行ったけど、警察は、これを怪しいと睨んだ。
 美術品の倉庫に入るふりして、番頭さんに貸したジャケットを着て被害者のヤッチャンを殺し、殺した直後ジャケットを番頭さんのロッカーにしもた。そう睨んでる。

 ただ一つ誤算があって、第一発見者が明菜で、明菜が犯人にされてしまい。お父さんは必死で正当防衛やと……叫びすぎた。で、警察は逆に怪しいと睨んだ。調べてみると、アリバイがない。その時間、美術倉庫の鍵は借りてたけど、入ってるとこを見た人がおらへん。ほんで、お父さんが触った言う美術品からは、お父さんの指紋が一切出てけえへん。

「美術品触るときは、手袋するのが常識じゃないですか!?」

 なんでも鑑定団みたいなことを言うたけど、警察は信じひん。お父さんは、ドッキリ殺人のあと、一回この美術倉庫に来てる。せやから、ドアなんかに指紋が付いてても、一回目か二回目か分からへん。お父さんは一回目で、ええ茶碗見つけたんで、もっかい見にいった……これは、いかにも言い訳めいて聞こえる。

「うちの主人は、そんなことをする人間じゃありません。わたし、美術倉庫の方に行く主人を見かけています」
 身内の証言は証拠能力がない。例え離婚寸前でも夫婦であることに違いはない。

 まずいことに、お父さんの会社は資金繰りが悪く、ある会社から融資をしてもらっていたが、その資金の出所が、殺された経済ヤクザのオッチャンの組織。
「そんなことは知らなかった」
「知らんで通ったら警察いらんのんじゃ!」
 と言われ、ニッチモサッチモいかなくなった。

「明菜、あんたの疑いは晴れたけど。今度はも一つえらいことになってしもたな」
「ええねん、これで」
「なんでやのん、お父さん捕まってしもたんやで?」
「今度はドッキリとちゃう」
「あんた、まさかお父さんが……」
「あほらし。お父さんは、そんなことでけへんよ。なあ、お母さん」
「そうや、せやけど、警察は身内の証言は信用しないし……」
「お父さんの疑いが晴れたら、全部うまいこといく、家族に戻れる。あたしは、そない思てんねん」

 親友明菜は、しぶとい子や。うちは、そない感じた。

 そのためにも真犯人見つからんとなあ……。

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高校ライトノベル・里奈の物語・39『あけましておめでとうございます』

2019-07-29 06:28:40 | 小説3

里奈の物語・39
『あけましておめでとうございます』



「あけましておめでとうございます」

 去年は言えなかったけど、今年はすんなり言えた。

 朝起きて、伯父さんとおばさんに。猫たちの世話に公園に行って猫田さんたちにも、むろん猫たちにも。

 去年は誰にも言わなかった「あけましておめでとうございます」。「あけましておめでとうございます」というのは、一年で一番晴れがましい挨拶。言ったとたんに人間関係が始まる。
 あたしの周囲の人間は、あたしが抱えている問題とか悩みとかを解決する力も意志も無い。
 そんな人たちと、なし崩しに、何にもなかったみたいに人間関係を再開するなんてあり得ない。

「はい、年賀状です」

 公園から戻ると、ちょうど郵便屋さんが周ってきたところで、お店の前で年賀状の束を渡された。
「伯父さん、年賀状来たわよ!」
 後ろ手でお店の戸を閉めながら、思いのほか大きな声が出るのでうろたえる。
「今からお雑煮やから、リビングに持ってきて」
 ジャンパーを脱ぎ、洗面所で手を洗ってからリビングへ。
「……すいません、こんな正月らしくないかっこうで」
 起き抜けのときと違って、伯父さんもおばさんも、元日らしいフォーマルなナリをしている。
「いや、これから骨董仲間の年始があるから。ほんのさっきまで、いつもの格好や。元旦早々浮世の付き合いや」
「あ、そうなんだ」
 お母さんが、お正月用の服を送ってきてくれていたけど、猫たちの世話があるのをいいことに、あたしはいつものサロペット。

 お豆腐ほどの年賀状の束は横に置いて、お屠蘇から始まる元旦の朝餉になる。

 お節が終わって、伯父さんが年賀状を仕分ける。お店、伯父さん、おばさん、妙子ちゃんの四つの山ができる。
 人の年賀状は楽しい。謹厳実直なものから可愛いものまで。中には「見たる!」「聞いたる!」「言うたる!」の三猿を大阪風に逆転したのもあり笑ってしまう。妙子ちゃんに来たのは、キラキラお目目の萌え系をアレンジしたものが多いので「妙ちゃんも、まだまだ子どもを引きずってるんだ」と楽しくなる。

「あら、里奈ちゃんにも来てるわ」

 おばさんが二枚の年賀状を、あたしの前に置いた。
「お母さんと先生……」
 二人とも申し合わせたように「明けましておめでとう」の年賀状。
「よかったら、これで返事書きよし」
 おばさんが、サラの年賀状を置いてくれる。
「あたし、年賀状は出さないから……」
 年賀状を繰る伯父さんの手が止まった。
「年賀状出せへんのはええけど、来たもんには返事書いたほうがええで」
「でも……」
「おためごかしに感じるんやろけど、何分の一かは気持ちが籠ってる。里奈ちゃんも、何分の一、何十分の一の気持ちで返したらええのとちゃうか? コメントなんかいらん、宛名だけ書いてさ」
「…………」
「ま、里奈ちゃんも、思いがけずに年賀状もろうてびっくりポンやわな。松の内に考えたらええから、で、もし使えへんかったら返して。この年賀状の番号は当たりそうな気いするから」
「あ、せやせや。うちのオバハン、去年も書き残した年賀状で三等賞当てよったさかいな」
「そ、そうなんだ」

 それから半日たった。

「ごめん、おばさん。あの年賀状当たっていても、賞品は他の人にいくかも……」
「え……ああ、ええんとちゃう。賞品が無駄になれへんかったら」
「うん、番号は控えてあるから」
「当たったら、また知らせたげたらええやんか」
「お母ちゃん、肩揉んでんか」

 おばさんは、伯父さんの肩を揉みながらリビングに入って行く。
 そんな二人に、あたしはお茶を入れることにしたんだよ……。 

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高校ライトノベル・須之内写真館・12【優しい水・1】

2019-07-29 06:20:39 | 小説4

須之内写真館・12
【優しい水・1】        


 国家秘密保護法案が衆議院を通過した。

 写真という表現芸術を生業としている直子には、少し気がかりだった。
 直子は、年間に数十万枚という写真を撮り、その二割方が世間の目に触れる。毒のないところでは、学校の集合写真や、証明写真。でも、中には何気なく撮った写真が雑誌に紹介され、その写真達の背景にはいろんなモノが写りこんでいることがある。
 ビルの谷間から空を撮った写真の中に、偶然オスプレイが写りこんでいたこともある。働く女性をテーマに撮った中に、警視庁の司令所で働く女性警官を撮ったこともあるが、ディスプレーを見せた段階で、背後のモニターの一部にボカシを入れるように言われたこともある。
 ただでも、こんな調子なのに国家秘密法案なんかできたら、それこそ直子の写真はクレームがいっぱいつくだろう。下手をすれば、理由も分からず警察に御用かもしれない――そんな心配が頭をよぎった。

「大丈夫じゃないか……」

 読んでいる新聞を後ろから覗き見しながら祖父ちゃんが言った。
「なんで?」
「ここ」
 祖父ちゃんは、小さな囲み記事を指した。

――三原久一、三年ぶりに総理と会見――

 三原久一とは、先日直子が、伝説の『命引き延ばしのライカ』で写真を撮った、元政治記者の評論家で、総理の父親ともケンカしまくっていたという硬骨漢である。
「二本や三本釘を刺しているさ」
 祖父ちゃんは、そういいながら、例のライカを金庫の中にしまった。

 そこに電話がかかってきた。ガールズバー『ボヘミアン』のオーナーである松岡秀和である。

「すみません。割り込みでお願いして」
 松岡は、8人の女の子を連れて恐縮しきりであった。
「いいえ、一組、時間の変更があったので、ちょうど収まりましたから」

 松岡は、店のエントランスに飾る女の子の集合写真と、一人ずつのポートレートを撮りにきたのである。
松岡は持ってきたAKBのしっとりした卒業ソングのCDをかけ、女の子全員にまんべんなく声を掛けながら雰囲気を作っていく。手間の掛からないお客である。
「いや、気を悪くしないでくださいね、ちゃんと店のコンセプトが出るような写真にしたいものですから」
「いえいえ、なかなかいい表情引き出してますよ」
 お世辞じゃなく、直子は、そう言いながらシャッターを切った。

 松岡は、媚びるような笑顔は一人もさせなかった。

 適度に自信をもった笑顔にさせている。これは、ここだけのムードでは作れない。松岡自身が普段、女の子達を、どう扱っているかよく現れていた。
 撮り終わったあと、松岡と直子も加わって10人で賑やかに写真を選んだ。
「サキ、どの写真も目がヘタレてる」
 サキという、どうみても日本人の女の子が困った顔をしている。
「そこが、サキらしいんだよ。一見ヘタレていそうで、きちんと自分の世界がある。見る人が見れば分かるよ」
「そっかなあ……」
「そうだよ。苦労人のあたしも思うんだ。自信もっていいよ」
 杏奈まで、生意気に応援する。話の感じから新人と直子は見た。
「ちょっと、ユニークな子なんですよ、サキは」
「また、例のお水半分テストやったんですか」
「もちろん。で、答がふるっていたんですよ」
「え、まだ半分と、もう半分しか以外に答があるんですか?」

 すると、女の子がみんな笑い出した。

「サキはね『優しい水ですね』って言ったんですよ!」
「優しい水……?」
 直子は、不可解を絵にしたような顔になった。すかさず杏奈がシャメった。

 チョコ味のカレーを口にしたような自分の顔に、直子は吹き出してしまった……。

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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・80』

2019-07-29 06:12:42 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

はるか 真田山学院高校演劇部物語・80
『第八章 はるかの決意3』 


「ゲ、なに、これ!」

 停学課題の袋を開けてタマゲタ。反省文の原稿用紙二十枚、これはチョロい。
 あと国、数、英、そして、社会(細川先生の教科) 量がハンパじゃなかった。まるで、夏休みの宿題並だ。社会なんか、教科書百ペ-ジを写せ……。
 自分の停学二週間論が通らなかった細川先生の意趣返し……怒っても仕方がない。
 昼ご飯も晩ご飯も抜いてとりかかった。

 お母さんがパートから帰ってきても、わたしはまだ続けていた。
「はるか、食事もしてないの……」
「うん、でも、がんばらなきゃ、三日で終わらない……」
 お母さんが、鍋焼きうどんを作ってくれた。

 夜中の十二時をまわったころ、さすがに居眠りをしてしまった。
 カーペットの上で、腹這いになってやっていたのが良くなかったのかもしれない。

 カリカリ鉛筆を滑らせる音で目が覚めた。

 ボンヤリ目のピントが合ってくる……机に向かって、課題をやっている人の姿が見えた。
 軍足の靴下にモンペ……セーラー服にお下げ、襟に太い白線と細い白線が二本。チラッと見えるリボンは赤だ。

 ……マサカドクン?

――あら、起こしてしまったわね。
「あなた、普通にしゃべれんの?」
――やっとね。
「マサカドクンて、女の子だったの?」
――まあね、こうやって姿を取り戻すのに、十二年もかかってしまったけどね。
「十二年……」
――そうよ、あなたと将門さんのところで出会って十二年。
「わたしの課題やってくれてるの?」
――やりたくても、こういうのできなかったから、楽しいの。さあ、はるかちゃんは寝て。わたし夜の間しか手伝えないから。

 そこで記憶が途絶えた。

「はるか風邪ひくわよ」お母さんが半天をはおって起きてきた。
「え……え、わたし……」
「めずらしく、机に向かってやってたのね」
「わたし……」
 課題は三分の一近くできていた。そして、そこに書かれている字は、紛れもなくわたしの字だった。
「タキさんがね、停学中のプレイスポットての教えてくれたわよ」
 眠そうに目をこすりながらメモをくれた。学校の先生に見つかりそうにない映画館やゲーセン。ごていねいに各館共通の割引チケットがついていた。
 わたしは課題の山を写メに撮り、「ご厚意には感謝しますが、こういう状況ですので」とメッセをつけて送信した。
「シャレのわからん学校やのう」
 と、折り返しの返事。タキさんも宵っぱりだ。
「やったね、こういう停学は、勲章ものだよ」
 と、真由さんからもメールがきていた。タキさんが伝えたんだろう。
 タキさんてば、停学をなんだと思ってるんだろう。オッサンたちの時代とは違うんだよ。
 しかし、ありがたい激励であることは確かだった。
 由香をはじめ、他の面々からも。
 停学中の生徒とは連絡禁止なんだけど、さすがにそこまでイイ子ちゃんをやろうとは思わない、みんなもわたしも。
 目覚ましがわりに、みんなに返事を打っておいた。
「稽古は大丈夫! 山中が代役に入ってくれている。早よ戻らんと役取られるで」
 タロくん先輩のメールは心強かった。稽古のことが一番気になってたから。
 そして、またひとしきり課題の山に取り組んだ。
 朝、目が覚めると、課題は半分近くできていた。

 わたしが自分でやったのか、あれからマサカドクンがやったのか……。

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