大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベル せやさかい・130『英語でも日本語でもない……』

2020-03-12 17:14:55 | ノベル

せやさかい・130

『英語でも日本語でもない……』         

 

 

 う~~~~~~~~~~~ん 軒並み中止や。

 

 頼子さんのために堺の春を撮ろうと思たのに、ほとんどの行事が中止になってしもてる。

『仕方ないよ、選抜高校野球だって中止になったんでしょ……それに、あんたたちも休校中なんだし、あちこち出歩いて映像撮ってきてくれって言うのも、考えたら無理なお願いだったのよ』

 モニターの中で頼子さんは済まなさそうにしてる。

「こないだの動画、どうでしたか?」

『うん、よかったよ。大仙公園はわたしも知らなかった。地元民なのに知らないことって多いよね。でも、留美ちゃんはスゴイね、いろいろ知ってるんだよね』

「あ、そんな(^_^;)」

『能ある鷹はナントカだね』

「鷹だなんて……たまたまですぅ」

『あの、平和の塔だっけ、三角だったのは知ってたけど、摂津・河内・和泉を表してたって知らなかったわよ』

「いえ、記念碑とか銘板とか見るの好きなもんですから……」

 はにかみ屋の留美ちゃんは、赤い顔して俯いてしまう。

『わたしも宮殿から一歩も出してもらえなくて、もう引きこもりみたいよ。まあ、動ける範囲で面白いことあったら知らせっこしよっか』

「はい、なんかあったらお知らせします」

『うん、じゃ、今日はこんなとこで。バイバイ……アハハ、ダミアも手振ってくれるんだぁ、バイバイ、ダミア~』

 あたしも留美ちゃんと頬っぺたひっつけるようにして手を振って、嫌がるダミアにも前足を振らせる。

 ニャーー。

 モニターの頼子さんが消えると、サッサとダミアは部屋を出ていった。

 二人では、さすがに本堂裏の部室広すぎる。

 昨日は――あと一日――と伸ばしてきたお雛さんも片づけた。例の三人官女を揃えてあげようとねばったんだけど、お母さんに聞いても分からないし、家の前で出会ったのも幻だったのか、それっきり。

 それで、今日からは留美ちゃんと二人で、わたしの部屋でやっている。

 

 しかし、こうなると手持ち無沙汰や……。

 

 卒業式になったら、頼子さんに、あーもしよう、こうもしようと考えてたんやけど全部パー。

「あ、蛍の光……」

「え……ほんと」

 微かに『蛍の光』が聞こえてくる、どうやら廊下を挟んだ詩(ことは)ちゃんの部屋から。

『蛍の光』は、去年の夏エディンバラ城のミリタリータトゥーで、原曲の『Auld Lang Syne 「オールド・ラング・ザイン」』を聞いて大感激したんで、メロディーを聴くだけでワクワクしてくる。

「……日本語でも英語でもないよ」

「なんやろねえ?」

 思わず、詩ちゃんの部屋のドアに寄ってしまう。

『あ、入っといでよ』

 詩ちゃんの声がして、わたしらは「それでは……」とお邪魔する。

 詩ちゃんもパソコンを付けて動画を観ていて、モニターからは、よくある卒業式の動画が写ってて、今まさに『蛍の光』を斉唱してる。

 どこにでもある中学校の卒業式の様子みたい……『蛍の光』を歌ってるし……でも、その言葉は英語でも日本語でもなかった。

 

 

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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・67「思い出のサンフランシスコ・5」

2020-03-12 06:48:00 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
67『思い出のサンフランシスコ・5』   



 

 世界高校生徒会会議というものがある。

 読んで字のごとく、世界中の高校の生徒会の代表が集まって、あれこれ話し合う会議であり高校生の親睦の世界組織。
 三年に一回世界各都市で世界大会が開かれる。
 で、いろいろの事情や成り行きで、わが大阪府立空堀高校が選ばれ出不精の会長になり代わって、不肖瀬戸内美晴が今年度の開催地ニューヨークへ赴いた。
 それが、なんでサンフランシスコに居るかというと、トランプ大統領がらみで一時的に治安に不安がでてきた。
 でもって、中止になったんだけど、これじゃ申し訳ないというので、アメリカ各地の代表が希望する国の代表をそれぞれの街に招待したわけ。
 多分くじ引きだと思うんだけど、サンフランシスコ代表のミッキー・ドナルドの家にお世話になることになった。
 ほんとは、地元の高校生や生徒会のメンバーと交流の予定だったんだけど、アメリカの高校生の夏休みはメチャクチャ忙しい。
 なんたって夏が学年の変わり目で二か月の休み。二か月もの夏休み中に将来に向けてのスキルアップやボランティア活動やらの日程が目白押しなわけ。
「なんとか都合の付くメンバー集めるよ」
 ミッキーが胸を叩いてから四日がたった。で、その間、ミッキーがあれこれと観光案内をしてくれている。

 以上のことを一瞬の間に思いめぐらせた。

  「ゴールデンゲー...」の画像検索結果

 なんでかというと、ゴールデンゲートブリッジが見渡せる丘の上で、いきなりミッキーがキスしてきたから。

 でもって、アメリカ人のくせに、ミッキーは、とってもヘタクソ!
 なにかって? キスよキス!
 信じられる!?
 ミッキーの様子に「え?」と驚きの表情の口に、ミッキーの口が迫って来たのよ!
 ミッキーは20センチも背が高いので、まるで急降下爆撃みたいに迫ってくるわけよ。
 
 ガチって音がした!

 信じられる!? 
 歯と歯がぶつかって火花が出た!

 イッターーーーーー!!

 あたしは口を押えてしゃがみ込んだ。
 ミッキーに悪意が無いことは分かっていたし、歯をぶつけたあとは大きなドンガラでワタワタしている。
 とっさに考えた。
 逃げたり叫んだりしたら、ミッキーはきっと捕まってしまう。
 アメリカはバイオレンスとハラスメントにはめっちゃ厳しい。わたしが驚きのあまりパニクったりすると大ごとになる。
 だから、恋人同士のちょっとしたトラブル風にってか、ラブコメアニメのワンシーンみたいなリアクションをとったわけ。
 で、痛いし理不尽な状況で自分をなだめる為に、ここに至る流れを反芻しておったわけですよ。

 オ、オ、オ、ソーリーソーリー、ア、ア……イ、ベッグ ユア パードン!

 パニクったのはミッキーも、大きなドンガラでひたすらワタワタ。
 声を聞きつけたあちこちのアベックさんたちが不振の声を上げている。

 エーイ! もう一発ラブコメ的処理を!

 わたしは立ち上がるとミッキーの胸をポカポカしながら泣き笑いをしてやった。
 これが功を奏して、不審に思っていたオーディエンスのみなさんは安堵の様子。

 でも、オーディエンスの中にミッキーの叔母さんが居て、この様子を写メ付でお父さんに送ってしまった。

「ミッキー、テメーー正直に言わないとブチ殺すぞ!」

 家に帰ると、ミッキーパパが拳銃を構えていたのには寿命が縮んでしまったのだった……。

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ライトノベル・坂の上のアリスー17ー『き、気を付けなさいよね!』

2020-03-12 06:35:00 | 不思議の国のアリス

ライトノベル 坂の上のー17ー
『き、気を付けなさいよね!』   


 

 

 風呂からあがると、先に風呂を済ませた妹が、ソファーで微笑みながらオイデオイデをしている。

 シスコンものなら、兄妹愛フラグが立っていたりするものだが、綾香では、そうはいかない。
 姿かたちこそは天然美少女だが、中身はオッサンだ。
 ソファーの上で立膝の胡坐をかいて、一枚のタオルで鉢巻し、もう一枚のタオルはタンクトップの下へ潜らせて胸の谷間や腋の下を拭きまくっている。

「あんだよ……」
 冷蔵庫からカルピスウォーターを取り出しながら、返事だけする。
「あ、ちょ、それ!」
「わ、なんすんだよ!」
 綾香は、ソフアーからジャンプし、ぶつかるようにしてカルピスウォーターに口を付ける。
「これ、最後の一個!」
「てめー!」

 しばしカルピスウォーターの争奪戦。

 で、けっきょくは俺の負け。風呂上がりの綾香は、髪がしっとり濡れていて、シャンプーやらボディーソープ、それ以外にも甘い匂いがして、腹が立つ。ガキの頃はシッカロールの匂いしかしなかったのによ!
「で、俺様になんの用だ?」
 自分で沸かした麦茶をグラスに注ぎながら、気のない返事をする。
「あ、これ……すぴかからニイニに」

 テーブルに置かれたのは、白ロリのフィギュア。

「よくできてんなあ……ってか、すぴかそのものじゃねーか」
 それは、両手を広げフワリとスピンして、無表情のようだけど目には秘められた情熱が沸々と湧きだして……そうだ! こないだの投票場で「そなたを我が眷属にする」とのたもうた時のすぴかそのものじゃないか!?
「『我が眷属に渡しておいて』ってさ、聖天使ガブリエルの御尊像だって。ちなみにニイニそっくりのもあった……ウヒヒ、あれって、呪いをかけるためだね。裏切ったりしたら、すぴかは五寸釘打つね、あのフィギュアに……」

 そう言うと、綾香はグシャリとカルピスウォーターの空き缶を握りつぶした。

 テスト明けの短縮授業、梅雨もようやく開け、小高い丘の上に建てられた我が坂の上高校には爽やかな風が吹いている。
 激しい運動などしなければ、日陰では久々の爽やかさだ。

 が、その日陰にいても、俺の汗は停まらない。

「……だから、こんな成績じゃ推薦なんかとれないし、受けて通れる大学なんてないから!」
「は、はい……」

 俺は、日陰のベンチで、夕べ飲み損ねたカルピスウォーターをチビチビと飲んでいた。あー爽やか! そう感じて「プハー!」とやっていたら、渡り廊下を歩いていたエッチャン先生と目が合ってしまい、コンコンと説教されている最中だったのだ。
 まだ期末テストの成績は出ていないけれど、採点は終わっているようで、エッチャン先生は気になる生徒の分を把握して説教を垂れまくっているのだ。
「そもそも新垣君は……」
「は……?」
 怒られ慣れているので、次の言葉は予想がついた。俺が他の生徒よりも一つ歳をとっていることを言い出しかけたんだ。
「ム……とにかく気を付けて! もうじき夏休みだけど、気を抜かないようにね、いい!?」
「は、はい」
 エッチャンは盛大なため息をつくと、サッと身を翻して歩き出した。

「ウワ、キャー!!」

 力が入り過ぎたのか、エッチャン先生は重心を崩して倒れ掛かってきた。
 で、思わず、俺は後ろから受け止めてしまった。

 ん、柔らかい……。

 俺は、エッチャン先生の胸を掴んでしまっていた。
「す、すみませんでした!」
「き、気を付けなさいよね!」
 俺が悪いわけじゃないのだが、こういうところでは直ぐに謝ってしまう。

 ひとが困っていたり危うい状況に陥っていると、つい手を出してまう。世の中には放っておいた方が無事に済むことが(自分にも相手にも)けっこうあるんだが、損な性分だ、たいてい直後に謝る羽目になる。
 エッチャン先生は、体勢を立て直すと、再び歩き出したが、二三歩行ったところで足をぐねってしまった。
 今日の先生はご難続きだなあ……と思っていると、渡り廊下から視線を感じた。

 すぴかが聖天使ガブリエルの顔で「フフ……」とほくそ笑んでいたのだった。

 

 

♡登場人物♡

 新垣綾香      坂の上高校一年生 この春から兄の亮介と二人暮らし

 新垣亮介      坂の上高校二年生 この春から妹の綾香と二人暮らし

 夢里すぴか     坂の上高校一年生 綾香の友だち トマトジュースまみれで呼吸停止

 桜井 薫      坂の上高校の生活指導部長 ムクツケキおっさん

 唐沢悦子      エッチャン先生 亮介の担任 なにかと的外れで口やかましいセンセ 

 高階真治      亮介の親友

 北村一子      亮介の幼なじみ 


 

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ライトノベル・ここは世田谷豪徳寺・38(惣一編)《佐倉一尉の憂鬱》

2020-03-12 06:17:43 | 小説3

ライトノベル ここは世田谷豪徳寺・38(惣一編)
《佐倉一尉の憂鬱》   



 

「あかぎ」と「かが」が並んだ姿は壮観だ。

 二隻は、同型艦だが、スペックに開きがある。「あかぎ」は建造中に将来の垂直離着戦闘攻撃機機の搭載を想定し、甲板を張り直すなど大幅な改変が行われて工期が伸び、皮肉にも二番艦の「かが」の進水が先になり、やっと艤装段階で追いつき、公試が同時になった。
 設計変更をやった分「あかぎ」には不具合が多く、昨年末には公試を中止し、横須賀に戻り改修工事をやるハメになった。
 まあ、そのおかげで、年末年始の休暇がとれ、代々木公園で防大同期の明菜に会うことが出来た。

 今年は、どうやら波乱の年になりそうだ。

 今日は「あかぎ」と「かが」が並んで一般公開をやっている。
 近年は、自衛隊に対する国民の理解も深まり、我が国最新最大の護衛艦二隻が並んでの公開で、朝から横須賀の埠頭はごったがえしている。広報部からの連絡では、三万の見学者が来るらしい。「あかぎ」も「かが」も空母型護衛艦なので、見学者の興味は飛行甲板と格納庫及び搭載機オスプレイに集中し、砲雷科は、ややヒマである。

 しかし、個人的には憂鬱なことがある……妹が二人揃ってやってくるのだ。

 さつきは陸さんと事故を起こし、A新聞を筆頭に単純な交通事故をややこしくされ、その決着を「あかぎ」の見学で大団円にもっていこうという親父らしい、オレにとってははた迷惑なアイデア。
 さらに頭が痛いのは、さくらが付いてくることだ。
 さくらは、ついこないだまで、普通の女子高生だったが、オレにはよく分からない事情で女優兼モデルの駆けだしになってしまった。ひたすらトバッチリが来ないことを祈るばかり。

「班長、妹さんが来られるそうですね」

 地獄耳の杉野一曹が聞きつけていた。
「自分は公務なんで、あくまで、一般観覧者として……」
「状況は把握してます。臨機応変、お任せください!」
 この年上の部下は扱いにくい……。

 左舷ハープーンの横で突っ立て居る。一応説明のパネルなど用意してあるが、飛んでこそのミサイルである。キャニスター(発射装置)そのものは見ても面白くないので、たいがいの人が通り過ぎていく。
「あ、Harpoon block IIだ。これGPSが付いた最新型ですね」
 さつきのオトモダチが興味を示した。陸自のレオタードだ。
「失礼ね、レオタールさんよ」
 さつきが突っこんでくる。
「いや、どうもフランス語は苦手で……さつきもメール送るんならカタカナにしてくれよ」
「あのメールは、お父さんが……」
「いや、ボクが横文字にしてもらったんです。レオタードの方がインパクトありますから」
 アッケラカンと笑う顔は、どう見ても渋谷あたりのニイチャンだ。制服でも着てりゃそれらしく見えるんだろうが、入隊してようやく一年ぐらい。私服だと完全に元の人格に戻ってしまっている。ルーキーの良さだろう。
 しかし早く消えてもらいたい。明らかにマスコミと分かるオッサン・ニイチャン・ネエチャンが集まりはじめた。
「班長、艦長からです」
 杉野一曹がインカムを寄こした。
「……はい、了解しました。え……良い部下?」

 潮焼けした「良い部下たる杉野一曹」に持ち場を任せると、オレは海自的微笑をたたえながら二人を案内した。飛行甲板はエレベーターの試乗を待つ人たちが列をなしている。
 三基のエレベーターがフル稼働しているので、待つと言っても五分かそこらだが、今のオレは無限の長さに感じる。

「あ、お兄ちゃん! お姉ちゃん!」

 なんと、さくらが芸能記者を引き連れて現れた。「え、さくらさんのご兄姉ですか!?」女性レポーターが叫ぶと、みなの目線が一斉に集まった。海自スマイルが最大戦速になった。
「へえ、広いエレベーターですね!」
 レオタードが、注目を引く。一士のペーペーながら、自分に与えられた任務は良く分かっているようだ。それをごく自然にやれるのは、若さか、個性か……。
「これなら、うちの90式でも載せられそうですね」
「ああ、楽勝楽勝。ただし、おたくのヘリはダメね」
「え、ずっと軽いのに」
「ロ-ターがたためないからね。海自の男気はねローターといっしょ。普段はたたんでおくの」
 そう言って、明菜の前でローターを広げられない自分を思ったが、そんなことが顔に出るようじゃ、海自のオフィサーは務まらない。
「お兄ちゃん、なんかコンサートやってるよ!」
 さくらが喜んだ。海自の音楽隊が、うちと「かが」に別れて格納庫でミニコンサートをやっている。

「あ、いま売り出し中の佐倉さくらさんがいらっしゃいました。さくらさん一曲どうですか?」

 MCの女性隊員が、目ざとく水を向けた。冷や汗が流れた。さくらのオンチは生まれつきだ。
「はい、恋するフォーチュンクッキーやりま~す!」
 ご陽気に手を上げた。海自スマイルがひきつってきた。

 ところが……。

 歌い出すと、けっこういけてる。やはりハシクレとは言え芸能人。どこかでボイトレでもやってるのだろうか。今や国民的盆踊りになったフォーチュンクッキーをツーコーラスも踊らされた。

「踊る海上自衛隊」で、動画サイトに投稿されたのにはまいった。

 みなさん。けして検索してクリックなどなさいませんよう!
 

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