せやさかい・130
う~~~~~~~~~~~ん 軒並み中止や。
頼子さんのために堺の春を撮ろうと思たのに、ほとんどの行事が中止になってしもてる。
『仕方ないよ、選抜高校野球だって中止になったんでしょ……それに、あんたたちも休校中なんだし、あちこち出歩いて映像撮ってきてくれって言うのも、考えたら無理なお願いだったのよ』
モニターの中で頼子さんは済まなさそうにしてる。
「こないだの動画、どうでしたか?」
『うん、よかったよ。大仙公園はわたしも知らなかった。地元民なのに知らないことって多いよね。でも、留美ちゃんはスゴイね、いろいろ知ってるんだよね』
「あ、そんな(^_^;)」
『能ある鷹はナントカだね』
「鷹だなんて……たまたまですぅ」
『あの、平和の塔だっけ、三角だったのは知ってたけど、摂津・河内・和泉を表してたって知らなかったわよ』
「いえ、記念碑とか銘板とか見るの好きなもんですから……」
はにかみ屋の留美ちゃんは、赤い顔して俯いてしまう。
『わたしも宮殿から一歩も出してもらえなくて、もう引きこもりみたいよ。まあ、動ける範囲で面白いことあったら知らせっこしよっか』
「はい、なんかあったらお知らせします」
『うん、じゃ、今日はこんなとこで。バイバイ……アハハ、ダミアも手振ってくれるんだぁ、バイバイ、ダミア~』
あたしも留美ちゃんと頬っぺたひっつけるようにして手を振って、嫌がるダミアにも前足を振らせる。
ニャーー。
モニターの頼子さんが消えると、サッサとダミアは部屋を出ていった。
二人では、さすがに本堂裏の部室広すぎる。
昨日は――あと一日――と伸ばしてきたお雛さんも片づけた。例の三人官女を揃えてあげようとねばったんだけど、お母さんに聞いても分からないし、家の前で出会ったのも幻だったのか、それっきり。
それで、今日からは留美ちゃんと二人で、わたしの部屋でやっている。
しかし、こうなると手持ち無沙汰や……。
卒業式になったら、頼子さんに、あーもしよう、こうもしようと考えてたんやけど全部パー。
「あ、蛍の光……」
「え……ほんと」
微かに『蛍の光』が聞こえてくる、どうやら廊下を挟んだ詩(ことは)ちゃんの部屋から。
『蛍の光』は、去年の夏エディンバラ城のミリタリータトゥーで、原曲の『Auld Lang Syne 「オールド・ラング・ザイン」』を聞いて大感激したんで、メロディーを聴くだけでワクワクしてくる。
「……日本語でも英語でもないよ」
「なんやろねえ?」
思わず、詩ちゃんの部屋のドアに寄ってしまう。
『あ、入っといでよ』
詩ちゃんの声がして、わたしらは「それでは……」とお邪魔する。
詩ちゃんもパソコンを付けて動画を観ていて、モニターからは、よくある卒業式の動画が写ってて、今まさに『蛍の光』を斉唱してる。
どこにでもある中学校の卒業式の様子みたい……『蛍の光』を歌ってるし……でも、その言葉は英語でも日本語でもなかった。