大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・136『千曳の大岩!』

2020-03-11 13:19:26 | 小説

魔法少女マヂカ・136

『千曳の大岩!』語り手:マヂカ    

 

 

 ズンズタッタ ズンズンタ! ドコドコドコドン! ズンチャカズンチャ! カカズズンチャ!

 

 ウズメが一旋すると、古代から現代に至るまでのリズムが一斉に鼓動し始めた!

 ビバップ! ヒップホップ! ブレイキン! ロック! サンバ! ルンバ! ポッピン! カワチオンド!

 これだけのリズムが刻まれれば、何のことか分からない騒音になりそうなものだが、全てのリズムが明瞭に聞こえ、体ばかりでなく魂までもが揺さぶられる。

 唐突に始まったのに、ウズメが最初の旋回を終える前に、わたしもブリンダも追随して旋回してリズムを刻み始めた!

 ドコドコドコドン! ズンチャカズンチャ! カカズズンチャ! ズンズタッタ ズンズンタ!

 二旋目に入ると、ウズメの衣はサヤサヤと解れ始め、三旋目には、身にまとっているものは全て解れ果て、数枚の衣の解れが気短な惑星のように、流星のようにウズメを中心にまとわりつくだけだ。

「すごい、単に裸になるんじゃなくて、僅かな断片だけはまとわりついて、すごいエロチシズムだ!!」

「何を感心しているんだ、オ、オレたちも、ほとんど同じなんだぞ!」

 ブリンダに言われて気づく、ウズメほどではないが、魔法少女のコスは、あらゆる縫い目がほつれてしまって、ウズメとわたしたちを取り巻いて土星の衛星のように取り巻いて、かつ、うねりだした。

「ちょ、ちょっと、胸が丸出しぃぃ!」

「あきまへん、もっと自由になりなはれぇ、もっと跳びなはれぇ(^^♪」

「し、しかし(;'∀')」

「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! どすえ! このウズメのようにいいいいいいいいい!!」

 ウズメの姿は古事記にある通り、胸乳(むなぢ)も陰(ほと)も露わに舞い狂い、いっしょに踊っている、わたしでさえ見とれてしまう。

「もっとぉ! もっとぉぉ! もっとぉぉぉぉぉ! 跳びなはれぇ! 爆ぜなはれぇ!」

「し、しかしぃ……」

 八百年を超えて魔法少女をやっているが、やはり女だ、ウズメのようにはいかない(^_^;)

「も~まどろっこしいぃ」

 ウズメが流し目をくれて意識が飛んでしまった! 

 

「いまどす!」

 

 かすかに残った聴覚がウズメの声を捉える。

 千曳の大岩が小さく開き、開いたスリットの中に、熱に浮かされたような瞳が幾百と煌めくのが見えた。

 黄泉醜女(よもつしこめ)たちが、我々三人の舞踏に感応し、鼓動を同期させてしまって、戒めを解き始めたのだ。ブリンダもわたしも舞踏のリズムを刻んだままスリットに突入、たちまちのうちに岩戸の内に、文字通り踊りこんだ!

 醜女たちは、熱と勢いに飲み込まれ、ウズメとわたしたちは水中に投ぜられた灼熱の鉄球!

 見る間に周囲の醜女どもを粉砕、蒸発させてしまった。

 しかし、醜女たちの数は天文学的なもので、うかうかしていると、呑み込まれそうな圧だ!

「十銭玉!」

 ウズメの声に、わたしもブリンダも、慌てて十銭玉を装着した。

 

 

 

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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・66「夏休み編 思い出のサンフランシスコ・4」

2020-03-11 07:08:15 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
66『思い出のサンフランシスコ・4』  



 

 あべのハルカスどころか通天閣の展望台からでも全域が見渡せるほどに狭い大阪。

 なのに、何年も会わない人間もいる。


 同じ中学出て、引っ越しもしないで同じ校区に居るのに卒業このかた会ってないなんてザラよね。
 同窓会とか無かったら、ほんと死ぬまで会わないのが大方よ。

 それが、サンフランシスコでふと入った中華飯店。

 その背中隣の賑やかなテーブルにいたのが、我が天敵の演劇部四人組なんて信じられる!?

 生徒会副会長の瀬戸内美晴ーーーーーーー!?

 そう叫んだ松井須磨の怖気だけは共感できた。
「あ、あたしたちね、オルブライト奨学金! 懸賞が当たっちゃって! で、で、アメリカ旅行! 否! 研修旅行中!」
「なんです!」
「せやねん!」
「Yes it is!」

 バラバラだけど、言ってる中身はいっしょ。
 テーブルの下の手でエンガチョやってんだもん!

 わたしもエンガチョしたいけど、相方のアメリカ人は意味わかってないからエンガチョ切ってくれる者もいない。

「日本人でも、あんなにアグレッシブな会話するんだね」
 ハンドルを握りながら相方のアメリカ人。
「アメリカ人も約一名いたけどね」
「あ、あのブロンド?」
「シカゴの高校生、交換留学でうちの学校に来てるの」
「物腰は日本人だったね、ハーフか日本生まれかと思ったよ。ミハルのオオサカって、なんだかラテン系だね」
 こつはミッキー・ドナルドって、ネズミなんだかアヒルだか分かんない名前の十八歳。
 地元の高校で生徒会長をやっている。
 こいつとどういう因縁かは、今んとこ勘弁願いたい。

「え、家に帰る道じゃないでしょ!?」

 ボンヤリしてて気づくのが遅れた。わたしの宿は二つ手前の道を曲がっていなければならない。

「今夜は霧が出ないんだ」
「あ、ああ」
 危うく納得。
 サンフランシスコに来てからずっと霧にたたられ、サイトシーングが出来ていない。
 特にゴールデンゲートブリッジを見てみたかった。
 スコーンと晴れ渡った青空の下か、夕なずむシスコの街を背景に。
 それをミッキーは覚えていたのだ。

「ここは、百年前に砦が築かれてたとこで、GB(ゴールデンゲイトブリッジ)一押しのビュースポットなんだ」

 着いたところは丘の上で、見下ろすGBは絶景。背景になっている街が神戸や横浜の夜景みたいで、それよりもスケールが大きくって、わたしの憂さを晴らしてくれる。
「アメージング……」
 そう呟きながら涙がこぼれてしまったのは、やっぱ気が弱っていたせいかもしれない。
 だれかの胸に顔をうずめたくなった……しっかりしろ瀬戸内美晴!

 自分を叱った、その刹那。

 え!?

 ブチュ!

 ミッキーの顔が迫ってきて、初めてのキスを奪われてしまった!

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坂の上のアリスー16ー『聖地巡礼・4』

2020-03-11 06:55:53 | 不思議の国のアリス

坂の上のー16ー
『聖地巡礼・4』   


 

 

 聖地アキバで、すぴかは水を得た魚だった。

 エヴェレスト登山のようなリュックに満タンのグッズを詰め込み、両手にゲームキャラの紙袋をぶら下げながらも、歩調はハツラツとし、パッツンの前髪から覗く眼(まなこ)はウインブルドンの決勝戦に挑むテニスプレイヤーのよう。
 自分で言うのもなんだけど、あたしは、見かけの美少女ぶりからは「なんで?」と思われるくらいの体力と気力がある。

 その、あたしがアゴが出た。

 ラジオ会館を出てヤマダ電機、ボークス秋葉原、北に折れて中央通、メイド喫茶を二軒横目に殺し、三軒目で「お帰りなさいませ聖天使様」の声に惹かれてメイドドア(メイドさんが開閉してくれる)を潜ると「ガブリエル様!」「聖天使様!」の声にたじろぎながら(すぴかは堂々と)奥の席に向かう。
 オフ会らしき五人組がいっせいに起立して、あたしたちを迎えてくれる。
「さすが我が使徒たち、企まずとも、宴の用意に怠りは無いようね」
 すぴかには磁力があるのか、十分もしないうちに、さらに六人の使徒と言う名のオタクが集まり拡大オフ会というか最後の晩餐。
 聖天使はまるで主なるキリスト。あたし一人ユダのような居心地の悪さ。

「では、最後の試練に立ち向かうわよ!」

 十一人の使徒たちとの宴の後、さらに中央通りを北に進む。
 途中コンビニに寄って、リュックの中身と紙袋を一つに梱包して宅配便で送る。
 神田明神通りを跨いで、とらのあな。同人誌とアニメのコンプリートボックスをゲット。
 
 ここまで来ると、すぴかの頭の上に有るはずもないエンジェルリングが見えてくる。学校でのすぴかを知らなければ、あたしもすぴか教の信徒になってしまいそう。

 信徒になってしまえば、これほどには疲れないんだろう。
 ロリータ服を着て、天使の羽まで付けているけど、あたしはすぴかの親友兼外護者の意識が強いので、そういうシュチエーションには入りきれない。

「これから先はアキバの神聖かつ深遠なる奥つ城。固有名詞をもって詳述してはいけない」

 聖天使ガブリエルのご託宣なので、AKBシアターの前で中央通を跨いだとしか記せない。

 百人以上の列が二本できていた。

「メイパラ(メイドパラダイス)ご購入のお客様は右側。リリフ(リリシャスフラワーズ)ご購入のお客様は左側の列にお並びください」
 赤い法被の店員さんがハンドマイクを空に向けながら案内している。
「しまったわ、メイパラの発売日も今日だったのね!」
 しまったと言いながら、すぴかの目は爛々とその輝きを増しているのよね。
 いよいよ聖地巡礼のメインエベント、エロゲの初回限定版ゲットのミッションになった。
 むろん18禁なんだけど、よっぽど幼いか学校の制服のままでなければ排除はされることはない。ましてあたしたちはカンペキな聖天使と暗黒天使のコス、アキバの正装、いや聖装。なにも恐れることは無い。
「商品は十分ございますが、一度にお求めいただけますのはメイパラ、リリフいずれか一点になりますのでご了承願います!」
「う~ん……」
 すぴかは唸りながら列の後方を見渡した。
「並び直したんじゃ、どっちかを買えなくなってしまうわね……綾香、わたしメイパラの方に並ぶから、リリフの方をお願い!」
「あ、うん、分かったわ」
 あたしたちは、二つの列に別れた。もともと並んでいたのがメイパラの列だったので、あたしが並んだリリフの方は三十人ほど列が長くなっていた。

「ヤバいんじゃないかなあ……」

 そう思ったのは、売り出し開始の鐘が鳴って五分ほどした時。
 二つの初回限定版エロゲは、それぞれ専用の二つのテーブルに山積みされていたが、リリフの方が数が少ない。
「えーーーーと……」
 思わず口に出して、列の人数とリリフの数を読んでしまう。
「え……」
 驚いた。リリフの数が何度数えても、あたしの前で切れてしまう。
 ぶっちゃけて言うと、すぴかはエロゲイノチの邪気眼女だ。買ったエロゲはすぐできるように、彼女のリュックにはノーパソが入っているくらい。買い落してしまうと、その落ち込みのほどは計り知れないものがある。そんなことになったら、昨晩から準備してきた聖地巡礼が無駄になる。
 あと三人……テーブルのリリスは三つ。つまり、あたしの前のグルグル眼鏡の女の子で売り切れてしまう。

 オーマイゴッド!

 心で叫ぶと奇跡が起きた。
 なんと、三人前の甘ロリが買うと二人前の甘ロリがいっしょに出て行った。
 なんで? 
 理由は直ぐに分かった。なんと二人前の甘ロリは等身大のドールで甘ロリが背負っていたものだったのよ!

「すぴかあ! ゲットしたわよーーーー!!」

 思わず買ったばかりのリリフを高く掲げて叫んでしまった。たまたまハンドマイク持った店員さんの横だったので、叫び声は50メートル四方に響き渡った。

 なぜか、世間の注目を浴びてしまった。なんで?

 三十秒たって分かった。リリフのパッケージには『今世紀最高の百合ゲーム!』とプリントされていた。

 

♡登場人物♡

 新垣綾香      坂の上高校一年生 この春から兄の亮介と二人暮らし

 新垣亮介      坂の上高校二年生 この春から妹の綾香と二人暮らし

 夢里すぴか     坂の上高校一年生 綾香の友だち トマトジュースまみれで呼吸停止

 桜井 薫      坂の上高校の生活指導部長 ムクツケキおっさん

 唐沢悦子      エッチャン先生 亮介の担任 なにかと的外れで口やかましいセンセ 

 高階真治      亮介の親友

 北村一子      亮介の幼なじみ 

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ここは世田谷豪徳寺・37(さつき編)《かわいそうなタクミ》

2020-03-11 06:40:52 | 小説3

ここは世田谷豪徳寺・37(さつき編)
《かわいそうなタクミ》   



 

 陸自 女子大生を跳ねる!

 A新聞が三面記事のトップにした。

 うそ!?

 パソコンの動画サイトを検索すると新聞と同じ写真が、何種類も動画になって出ていた。

 隊長の河内一尉と、当事者のタクミ一等陸士が大勢の記者の前で謝罪会見をおこなっていた。
「幸い被害者の女子大生の方は、軽い打撲で今朝退院されましたが、事故であったことには間違いありません。法律遵守の自衛隊には、あってはならない事故でありました。被害者の女性の方はもちろんのこと、警察を始め関係の方々にご迷惑をおかけしたことを心からお詫び致します」
 河内一尉とタクミ一等陸士が同時に起立し、深く頭を下げた。カメラのフラッシュが一斉に光った。

 あとA新聞とM新聞が執拗に質問というよりは、非難をくり返した。Y新聞とS新聞はメモを取るだけだった。あまりのしつこさにS新聞の記者が声を上げた。
「要は、歩行者の女性が不注意。赤信号で道路を横断し、車と接触転倒され軽傷。事故後の救護や警察への連絡や対応も法規通り処理された。昨日百余件有った東京の交通事故の一つだったというわけ。自動車が不利なのは分かってるけど、終わった問題なんでしょ」
「それじゃ、自衛隊には問題無いって言うようなもんじゃないか!」
「無いとは言ってない。前方不注意はあるだろうけど、ただの交通事故。で、軽傷、事故後の対応にも問題なし。他になんかあるのか!」
「ただの? 自衛隊が起こした事故なんだぞ!」
「おたくの新聞社が、同じ事故おこしたら、こんな記者会見やんのかよ!」
「あ、Sご自慢の問題のすり替え」
「なんだと、そっちこそすり替えのねつ造の常習じゃねえか!」

 この記者たちの口げんかの間も、河内一尉とタクミ一士は頭の下げっぱなしだった。あたしは見ていられなくなって×印をクリックした。すると、下からお母さんの声がした。

「さつき、自衛隊の方が、こられてるよ!」

 玄関に出ると、今まで動画で見ていた河内一尉とタクミ一士が玄関に立っていた。

「すみません。あたしが悪いのに、大変な目に遭わせてしまって」
「いいえ、こちらこそ、記者会見などに追われてしまい、最初にお伺いしなければならないところ、遅くなって申し訳ありませんでした」
「本当に申し訳ありませんでした」
 出したお茶にも手を付けずに二人は、記者会見同様、ただ頭を下げるばかりだった。

「どうぞ、頭をお上げになってください」

「お父さん」
「あなた」
 仕事中のお父さんが、リビングに入ってきた。
「職場に、A新聞が来ましてね、お二人が来られることを匂わせましたんで。時間休をとってきました」
「それは、わざわざ申し訳ありません。お父様には、この後お伺いするつもりでした」
「河内さん、職場なんかに来られたらAやM新聞の餌食ですよ。うちは静謐第一の図書館ですから、その前で騒いで、区民の非難やら迷惑顔がとりたいんでしょう」
「ご配慮、痛み入ります」
「うちも、長男が海自におります、自衛隊のお立場は分かっているつもりです。レオタードさん、あなたが娘の不注意あと、きちんとして下さったのは、これからもよく聞いております」
「お父さん、レオタールさんよ!」
「あ、これは失礼。A新聞の記者がそう言っていたものですから」
「いや、いいんです。基地内でも、レオタードで通っていますから」

 上げたタクミ君の笑顔は意外なほど子どもっぽかった。

「そうだ、いいアイデアがある!」
 お父さんが膝を叩いた。
「今度セガレの船が、横須賀に戻ってくるんです。一般公開がありますから、娘といっしょに行かれませんか。互いにゴタゴタがないことのいい宣伝になります。そうだ、さくらにも声を掛けよう。あいつがいっしょなら宣伝効果が倍になる」
「え……佐倉さくらさんて『限界のゼロ』に出てらっしゃる、さくらさんですか!?」
 タクミ君の目が、さらに子どもっぽく輝いた。

 最後のところで、おもしろくなくなった。プンプン!

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