魔法少女マヂカ・136
ズンズタッタ ズンズンタ! ドコドコドコドン! ズンチャカズンチャ! カカズズンチャ!
ウズメが一旋すると、古代から現代に至るまでのリズムが一斉に鼓動し始めた!
ビバップ! ヒップホップ! ブレイキン! ロック! サンバ! ルンバ! ポッピン! カワチオンド!
これだけのリズムが刻まれれば、何のことか分からない騒音になりそうなものだが、全てのリズムが明瞭に聞こえ、体ばかりでなく魂までもが揺さぶられる。
唐突に始まったのに、ウズメが最初の旋回を終える前に、わたしもブリンダも追随して旋回してリズムを刻み始めた!
ドコドコドコドン! ズンチャカズンチャ! カカズズンチャ! ズンズタッタ ズンズンタ!
二旋目に入ると、ウズメの衣はサヤサヤと解れ始め、三旋目には、身にまとっているものは全て解れ果て、数枚の衣の解れが気短な惑星のように、流星のようにウズメを中心にまとわりつくだけだ。
「すごい、単に裸になるんじゃなくて、僅かな断片だけはまとわりついて、すごいエロチシズムだ!!」
「何を感心しているんだ、オ、オレたちも、ほとんど同じなんだぞ!」
ブリンダに言われて気づく、ウズメほどではないが、魔法少女のコスは、あらゆる縫い目がほつれてしまって、ウズメとわたしたちを取り巻いて土星の衛星のように取り巻いて、かつ、うねりだした。
「ちょ、ちょっと、胸が丸出しぃぃ!」
「あきまへん、もっと自由になりなはれぇ、もっと跳びなはれぇ(^^♪」
「し、しかし(;'∀')」
「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! どすえ! このウズメのようにいいいいいいいいい!!」
ウズメの姿は古事記にある通り、胸乳(むなぢ)も陰(ほと)も露わに舞い狂い、いっしょに踊っている、わたしでさえ見とれてしまう。
「もっとぉ! もっとぉぉ! もっとぉぉぉぉぉ! 跳びなはれぇ! 爆ぜなはれぇ!」
「し、しかしぃ……」
八百年を超えて魔法少女をやっているが、やはり女だ、ウズメのようにはいかない(^_^;)
「も~まどろっこしいぃ」
ウズメが流し目をくれて意識が飛んでしまった!
「いまどす!」
かすかに残った聴覚がウズメの声を捉える。
千曳の大岩が小さく開き、開いたスリットの中に、熱に浮かされたような瞳が幾百と煌めくのが見えた。
黄泉醜女(よもつしこめ)たちが、我々三人の舞踏に感応し、鼓動を同期させてしまって、戒めを解き始めたのだ。ブリンダもわたしも舞踏のリズムを刻んだままスリットに突入、たちまちのうちに岩戸の内に、文字通り踊りこんだ!
醜女たちは、熱と勢いに飲み込まれ、ウズメとわたしたちは水中に投ぜられた灼熱の鉄球!
見る間に周囲の醜女どもを粉砕、蒸発させてしまった。
しかし、醜女たちの数は天文学的なもので、うかうかしていると、呑み込まれそうな圧だ!
「十銭玉!」
ウズメの声に、わたしもブリンダも、慌てて十銭玉を装着した。